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ダイルクロコダイル氏と謎のピータージェームスE #3 【お茶に招待されたダイルクロコダイル氏】

ダイルクロコダイル氏のお気に入りの一つがダクイーズ。 もう何十年も続いているポーランド料理のレストランです。 改装して、モダンシックに変わりましたが、美味しい料理と
家族的な気持ちの良いもてなしは、いつ行っても変わらず、
ダイル氏がドアを開けると今日も、きちんとスーツを着込んでいる
年老いたオーナーが暖かく迎えてくれます。
さて、今日は、どうしようかと、思いながらメニューを のぞくのですが、やっぱりロールキャベツと赤ワインで決まりです。
ダイルクロコダイル氏は、料理が来る前に、買って来たポストカードを
取り出して、遠く離れて暮らす甥っ子に宛てて、書き出しました。


可愛いターへ、
元気にしているかな?ロンドンはだんだん寒くなってきた。
クリスマスも近づいて来て、街はにぎやかだ。
そろそろロンドンへ遊びに来ないかい?
足がクタクタに疲れるまで、君と一緒にロンドン中を歩きたいと
いつも、思っている。
君の叔父より。
ダイルクロコダイル XXX 


ダイルクロコダイル氏は、いつも持ち歩いている切手を、貼りました。
“ダイルクロコダイルのポストカード好き” は、ちょっと有名です。 どこへ行っても、ポストカードを買い、カフェに座ると書くのです。

送る相手は色々ですが、特にお気に入りの
遠いい国に暮らす甥っ子、ターにはしょっちゅう書いています。
きっと、ターの手元にはもう何百枚ものポストカードが届いているはずです。

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カードを書き終わると、待っていてくれたかのように、ロールキャベツが出
て来ました。
美味しい食事に、美味しいワイン、そしてデザートのチョコレートタルト!
なんと幸せなのでしょう...

コーヒーを飲みながら、暫くご無沙汰していた店の主人と
楽しくおしゃべりをした後、レストランを出ると
いつの間にかチラチラと雪が降っていました



さて、それから1週間が経ち、約束の木曜日が来ました。
ピータージェイムス E の家はホランドパークの反対側だったし
天気が良かったので、ダイルクロコダイル氏は公園を通り抜け、手土産を買
いながら歩いて行くことにしました。 

ホランドパーク内を歩く時の注意は
お喋りなクジャク夫人につかまらないこと!
急いでいでいる時には、絶対に避けなければいけません。 

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さてクジャク夫人に捕まることもなく、二時を少しまわった頃
スカースデイル3番地に着きました。
ドアへ向った時、近くに停まっていた車から大男が出て来て
ダイルクロコダイル氏の身分証明書の提示と、何の用事があって来たのか…
など色々と質問をするのでした。
後日、意味が判ることになるのですが
長年ロンドンで良き市民として暮らしていたダイルクロコダイル氏は このような体験をしたことが一度もなかったので
少々驚いて、そしてちょっぴり気分を害してしまいました。

やっと大男に解放され、スカースデイル3番地の黒くて大きな
ドアのベルをならすと
仰々しい執事がドアを開け、中へ通してくれました。
家の中に入ったとたんに、「あっ」と驚きの声を発してしまた。
そこはまるで個人博物館のようだったのです。

居間に通されると、書き物をしていたピータージェームス E が立ち上がり

「良く来てくれました」
「今日はご招待ありがとう」と、お互いに挨拶を交わした後

「ではさっそくお見せしましょう!」と言い
壁中作品だらけの長い廊下を歩き、階段を上がり、正面のドアを開けました。
高い天井の広い部屋に入った時、ダイルクロコダイル氏は、またしても
「オオッ…」とうなるように低い声を発してしまいました。
まず目に飛んできたものは、大きな壷です。
これがお父様から受け継いだものなのでしょう、それは素晴らしい壷でした。
そして、この部屋には、陶器の他に、絵画、古書、彫刻、古いコインのコレ
クションや、 昔の兜や刀、武器類等がところ狭しと並んでいました。

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しかしピータージェームス E は、その部屋を横切り
「さあ、どうぞお入り下さい」
と、窓の近くにある一つの小さなドアを開けました。
暗い部屋の中に入ってピータージェームス E が電気を付けた時
ダイルクロコダイル氏、この時ばかりは声が出ませんでした。
部屋の中央に設置されているのは、博物館でも見た事が無いような大きな
古い壷です、素晴らしい作品です。
壷に細かく描かれている文様は,
ピータジェームス E の国にまつわる話と、歴史とだと説明してくれました。 ジーと,観ていたダイルクロコダイル氏は、その世界に入り込んでしまうよ
うでした。
戦争のストーリーと、王家の歴史物語が、沢山描かれていましたが、
地図や、彼の国に生息する珍しい動物、植物についても、細かく丁寧に描かれています。
伝統料理の仕方までもありました。
他に大宴会の様子、子供達の遊び、スポーツ 街の様子、田舎の様子などなど


それらの一つずつを、ダイルクロコダイル氏はなぞるように見せてもらい
ピータージェイムス E は
その意味を丁寧に一つづつおしえてくれました。
ダイルクロコダイル氏の驚きと、喜びの顔を見て、ピータージェームス E も
誇らしげな顔です

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充分に時間をかけて、壷を見せてもらいました。

「こんなに素晴らしい国宝級の壷をお持ちだったとは、
大したコレクターでいらっしゃるのですね、お父様は…」
というと、それには、応えずに
「さて、それでは南の間で、お茶を頂きましょうか...」
と、言いながらピータージェームスEは、壷の間から出て
明るいガーデンに面している部屋に向かいました。

To be continued...

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