スーパーで買えるきのこ図鑑
今回のcakes『スープ・レッスン』は、4種のきのこ汁。お好きなきのこを4種類使うことになっていますが、最近はスーパーへ行くと、実にいろいろなきのこが売っています。
そこで今回は、スーパーできのこ狩り!おなじみのきのこからニューウェーブまで、いろんなきのこを食べ比べてみましょう。
1.きのこといえばやはりこれ!「シイタケ」
鍋に、網焼きに、肉詰めに、どんな料理に使っても存在感を放つ食用キノコの王様「シイタケ」。かさがあまり開き切らず、肉厚のものが、歯ごたえがよく美味しいです。
生シイタケとキャベツの味噌汁
干しシイタケも利用範囲が広く、精進のだしには欠かせません。なお「どんこ」は品種ではなく、まだかさの開き切らない丸く肉厚のシイタケを乾燥させたもの。かさにヒビが入っています。
どんこ入りたぬき汁
椎茸の軸を捨ててしまう人が多いようですが、一番おいしいところ!いしづきだけ落とし、刻んで使ってくださいね。うまみもたっぷり出ます。
2.一体どれが本物?「シメジ」いろいろ
「香りマツタケ味シメジ」のシメジは人気のきのこ。でも、ちょっと呼び名が混乱しているので、整理します。
もっともポピュラーなのは、「ブナシメジ」。
クセがなくうまみがしっかりあるので、どんな料理に入れても邪魔をせず美味しくなります。形も良いので炊き込みご飯にしたり、さっとゆでたりだしで煮て和え物、さっと酒を振ってホイル焼きにしても美味しいです。いしづきはほんとうに先の固いところだけ切りおとせば大丈夫です。あとは手で小分けしてください。
ブナシメジとごぼう、水菜のスープ
そしてこちらが「本シメジ」。昔、ブナシメジを「本シメジ」と表記して売っていたためブナシメジを本シメジと思っている方も多いのですが、こちらが本物の「本シメジ」。この存在感!
どっしりしたその形からでしょう、大黒しめじ、なんて呼ばれることもあります。味わいも深く、とても美味しいきのこです。なかなか良いお値段がしますが、マツタケほどではありません。見かけたらぜひ買ってみてください。
ぶなしめじ同様万能で、鍋や炊き込みごはん、お吸い物、てんぷら、そして形を生かして迫力ある姿焼きなどもいいですね。
本シメジとじゃがいものスープ
「ブナピー」は、ブナシメジの改良種。あの、きのこのホクトが開発したオリジナル品種なんです。味はブナシメジと同じで、穏やかな風味のきのこです。
クセがないのできのこが苦手な人にも食べやすいかも。ぶなしめじと同じ使い方ができますが色が白いので、サラダやマリネなどにも。
ブナピーと里芋の白味噌汁
3.シメジの影武者「ヒラタケ」は万能きのこ
実はこの「ヒラタケ」も、かつて「シメジ」と名乗っていたことがあります。形をシメジに似せて栽培したヒラタケが、かつて「シメジ」として市場に出回っていました。その後ブナシメジが「本シメジ」と呼ばれるようになったため、ヒラタケは影武者の役割を降りて元のヒラタケになったのです。ま、ブナシメジも本シメジではなかったわけで……なんだか実社会にもありそうな話。
前置きが長くなったけれど、ヒラタケだって美味しい!
水分が多いのが特長。鍋、スープ、煮物など水の多い料理に向いています。クセが少なく特長がないため、シメジの影武者になってしまったというのがなんとなくわかりますが、キュッキュッという独特の歯ざわりがあり、何にでも使えます。
4.軸が主役の洋風きのこ「エリンギ」
今やすっかりポピュラーな「エリンギ」。でも実は日本では新顔のきのこです。
愛知の森林・林業技術センターが平成5年、国内で初めて人工栽培に成功。「とっとき1号」というその品種を食べたことがありますが、うまみの強い美味しいエリンギでした。
とっとき1号のシンプル・スープ
もともと西洋のきのこですので、やはり洋風の料理が似合います。パスタや肉料理の付け合わせなどに。軸をメインで食べるため、ちょっとアワビにも似た、強い歯ざわりが特長。薄くスライスしても存在感があります。
エリンギとズッキーニ、じゃがいものスライススープ
5.洋風きのこの代表といえばこれ「マッシュルーム」
「マッシュルーム」は最初、海外向けの缶詰として輸出するために栽培されていたのが、やがて国内で生食するようになりました。
ホワイトのほかに、ここ近年はブラウンマッシュルームも出回っていて、こちらのほうが味が強いようです。煮込みなどにはブラウンを、サラダやクリームシチューなど色を気にする料理はホワイトを使うといいと思います。
マッシュルームとクレソンのコンソメ
食べ方はやはり洋風に、バター炒めやクリームシチュー、スープやパスタに刻んで入れたりもします。アヒージョ(オイル煮)も美味しいです。生でスライスしたものをサラダなどにして食べることもあります。
きのこは基本、洗わずに使うほうが美味しいのですが、マッシュルームは堆肥栽培も多く、泥などがついていると気分的にちょっと洗いたくなりますね。ここは、意見が分かれるところのようです。
「ブラウンマッシュルーム」少し味が濃いかもしれませんが、基本的にはホワイトと同じ。使い方もあまり変わりません。
マッシュルーム入りビーフシチュー
6.白も茶色も。キュロキュロっとした食感が楽しい「エノキダケ」
国内で最も多く栽培されているのが、この「エノキダケ(エノキタケ)」。鍋に欠かせないキノコの定番です。クセが少なく安価で、最近ではダイエットにもよいという情報もあり、人気です。(カロリーがほとんどなく繊維質の多いきのこは基本どれもダイエット向きですが)
鍋のほか、和え物、てんぷらにも。あと、株を3つぐらいに分けてバターと一緒にホイルに包んでバーベキューに持っていくと、喜ばれます。
最近出回っている「ブラウンエノキ」は、少し品種が違い、歯ざわりがよく、加熱によって少しぬめりが出ます。こちらも鍋や炒め物など万能です。味噌汁に入れ、かきたま風にするのも美味しいものです。
ブラウンエノキのかきたま汁
7.赤だしには欠かせない「なめこ」は扱いのコツがあります
さて、普通のきのことちょっと違う売られ方をしている「なめこ」。あのヌルヌルしたぬめりが最大の特長です。体にもとても良いのです。
何といっても味噌汁が美味しいですね。さっとゆでて和え物などに入っていることもありますが、豆腐と合わせて、八丁味噌のような赤味噌を使った赤だしが最高です。炒め物などは焦げやすいので不向きです。
なめことパセリのコンソメ
ヌルヌルは食べられますが、酸化しやすく、酸っぱいような味や香りの原因となりますので、サッと洗って使うのがおすすめです。もともとなめこは日持ちのしないきのこ。だから袋にぎゅっと詰めて空気を抜いて売っているのです。買って来たらなるべく早めに食べましょう。
最近は株つきのエノキも売ってます。ヌルヌルも少な目です。
このタイプだと、炒め物や、今回cakesの記事でご紹介したスープベースの当座煮にも、使えますね。
8.きのこキングの「マツタケ」も、怖れず普段のお惣菜で
さて、ここまで来たらやっぱりあのキノコも食べてみたいもの。そう「マツタケ」です。
栽培ができず、さらに獲れる環境が激減してますます希少価値が高くなっており、国産マツタケは庶民にはちょっと手の届かない金額です。でもまあ、カナダ産や中国産のものならなんとか買えそうな値段で出回っていますので、どうしても食べたい、それなのに食べられない!というほどではありません。
その価格から高級感のある和食店などで使われることが多いため、土瓶蒸しや天ぷら、網焼きなどこちらを威嚇するようなゴージャスな料理が多いですが、家で食べるなら気負わず松茸ごはんかお吸い物、あるいはホイル焼きがよいかと思います。香りが特長なので、香りが楽しめるような食べ方がよいですね。
マツタケお吸い物
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さあ、スーパーでおなじみのきのこを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか!お気に入りのきのこはありましたか?
最後になりますが、スーパーでこんな風景を見かけました。きのこのホクトがやっている「もぎとりきのこ」という商品。栽培しているカップをそのまま売場に並べ、「もぎたて」きのこを買えるということです。こんなカップで栽培しているんですね!
きのこって、不思議な生き物だなと思う風景です。以上、現場からのレポートでした。
cakes『スープ・レッスン』、“4種のきのこ汁”と、便利な当座煮のレシピはこちら!きのこの美味しい食べ方のコツものっています。
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。