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【PP】祝・wyolica復活

 wyolica知ってますか、wyolica。

 まあ、細かい話はWikipedia先生に聞いて頂くとして、知らない方にざっくり説明しますと、wyolica(ワイヨリカ)は、ボーカル・Azumi、ギター・so-toによる1999年デビューの男女音楽ユニット。僕の激推しアーティストだったのですが、2013年に惜しまれつつ解散してしまったのです--。

 が! 今年、デビュー20周年を機に、再結成!

 ということでね、渋谷・duo MUSIC EXCHANGEで先日行われた復活ライブを観に行ったのですよ。なんだろう。控えめに言って最高だった。最&高。

■ガチで20年も聴いてた

 思い返すと、僕がwyolicaを知ったのは、セカンドシングルの「風をあつめて」のPVを見たのがきっかけ。

 最初は、フィーチャリングのKJに興味が行ったんですけども、何度か曲を聴くうちに、透明感のあるボーカルとアコギ&ウッドベースの音色の心地よさに気づいてしまったわけです。その頃、邦楽界は小室ミュージックとヴィジュアル系の全盛期。それから、宇多田ヒカルが現れて、R&Bも流行り出していた頃。打ち込みとかメロディアスなツインギターアレンジが世に溢れていて、こういうシンプルなアコースティック楽器が軸になる楽曲って、すごく新鮮に聴こえたんですよね。画一的なジャンルにはまらない唯一無二感がとてもよかった。

 その後、すぐにサードシングル「愛をうたえ」が発表されて、なにこれヤバい!と、自分の中で大ブレイク。当時はYoutubeなんかないし、音楽配信も黎明期ですし、本格的にブレイクする前のアーティストの作品を聴くのって結構労力が要ったんですよね。ファーストアルバム「who said "La La..."?」を探して、レコードショップを5軒くらい回りましたし。予約すりゃよかった。(仙台)駅前の新星堂さん(だったかな?)でようやく見つけて。MP3プレーヤーなんて文化もまだないから、MDに録音したり、車にCDチェンジャーつけてぶち込んだりね。懐かしいなおい。

 調べてみると、「風をあつめて」のリリースがデビュー年の1999年10月だったので、そこから聴き始めたわけだから、僕ももうすぐ丸20年聴いていることになるというね。好きなアーティストや楽曲は数々ありますけども、流行り廃りにも流されず、飽きもせず、一時的にでも離れることもなく、日々コンスタントに20年も聴き続けてるアーティストって、僕の中ではwyolicaくらいかもしれない。もはや白米みたいなね。

■音楽と細胞の浸透圧

 wyolica楽曲は、もちろんアップテンポな曲とかファンキーだったりジャジーだったりする曲もあるんだけども、基本的にどれもとても優しい。まるで二日酔いの日のポカリとか、寝起きの一杯の水とか、そういう感じなんですよね。細胞に入ってくる感じ。BPMが心臓のパルスと近い感じ。

 すごいアゲてくれる曲とか、音楽性に唸らされる曲とか、好きな楽曲はいろいろありますけど、何も考えずに曲がするっと体に入ってくる感覚は、wyolicaが一番かもしれないなあ、と、今回、ライブを見ながら改めて思いましたよね。自分が本能的に心地よく感じる音と、声もメロディーもアレンジも、すごく近いんだろうなあ。

 特に、一番奥まで入ってきたのが、6thシングルの「シェルター」。

 リリースされた頃、僕は大学卒業前後で、就職活動もせず、音楽で食っていくんだ!なんて言っていた頃でして。常にテンションを高め維持しなきゃいけない時期だったので、とにかく夜眠れなかった。不眠症とかじゃなくて、寝てはいけないんじゃないか、みたいな強迫観念で夜更かしをし続ける感じで。寝ないと体力的に持たないけど、慢性的ナチュラルハイで眠れない、みたいなときに、「シェルター」を微音で聴きながら寝ていたんですよね。歌詞もドンピシャでね。眠れない夜、そばにいてあげる、みたいなね。ほんとにお世話になった曲。

 ベースラインがとてもとても優しくて、メロディーも歌もギターもリズムも心地よくて、僕的には邦楽の中でも屈指の名曲だと思っているので、ぜひたくさんの人に知ってもらいたい。眠れない夜のお供に最適。

■20年越しでようやくライブに行けた

 そんなこんなでwyolicaをずっと聴き続けているのですけども、ライブには行けないまま20年経ってしまっておりました。学生時代は地方在住だったのでなかなか思うように会場に行けず。卒業後は東京に出てきたものの、20代の間は自分でも音楽活動をしていたもんでクソ金欠。お金がなさすぎて、「人様のライブに行く」っていう概念が消し飛んでしまってね。

 音楽の道を諦めた後も、仕事だなんだで生活に追われているうちに、ある日、ついに「wyolica解散」というニュースを目にして、ああ、って。

 今でこそ、エンターテイナーは普遍の存在ではないのだ、ということを思い知って、「推しがいるなら行ける時に行けるだけ行け」という教訓を持っていますけれども、当時は「自分の好きなものがなくなる」という喪失感にまだ慣れていなくて。なんでライブに行かなかったんだろう、とめちゃくちゃ後悔したんですよね。失恋とかペットロスとか、そういうのに近い感覚。
 Azumiさんのソロライブでwyolica楽曲を歌うことはあっても、「wyolica」という一つの形で聴くことはできなくなってしまったわけなんですよ。なんか、残念やら悲しいやら、自分が腹立たしいやらでね。

 それが、今年、急転直下の再結成。奇跡、、、!

 これはもう行くしかないと、予定も考えずにチケットを取りまして。お陰で今、思った以上に原稿の進みがヤバくて尻火が大炎上ですけどね。でも、行かないという選択肢はなかったですよね。結果、自分の人生を振り返りながら穏やかな時間を過ごすことができて、いろいろ考えたり整理したりすることができたなあと思います。
 きっと、小説にもいきるはず(編集者さん向け弁明)。

 僕は、過去を振り返ることも、何かに自分の人生を投影することもあまりしないタイプの人間なのですけども、ライブ中、何故か自然と自分の20年を思い出して、感情が綯い交ぜになりました。自分でも驚いた。たぶん、ずっと水を飲むみたいに聴いてきたものだから、その時々の感情とか記憶が曲に溶け込んでるんでしょうね。

 一度失ったものが戻ってくる、っていうことは人生において極めて稀なことですけど、こうしてずっと抱えていた後悔を取り返しに行くことができた、というのはすごく嬉しいことでした。なんかでも、知らない曲ないし、歌詞も覚えてるし、会場もアットホームな空気だしで、はじめて行った感じしなかったですけどね。

■POWER PUSHしていくよ

 11月に次回を予定、という嬉しい告知もありましたけど、せっかく再結成してくれたわけなので、これからもライブに行きたいし、新曲も聴きたい。オリジナルアルバムも出して欲しい。なので、微力ではありますけどもね、noteで今後もゴリゴリ推して行けたらいいなあと思っております。この【POWER PUSH】というマガジンは、本業とか関係なく、偏愛をまき散らすために書いているのでございましてね。お願い!みんな聴いて!

 おすすめ曲? まず何を聴くか?(おしつけがましく)

 前述の「シェルター」は紛れもない傑作ですし、「愛をうたえ」とか「さあいこう」とか「スパークル」とかポジティブになれますし、「空と風」は壮大で、「恋の幻」や「red song」はしこたまクールでカッコイイ。新曲の「Beautiful Surprise」もwyolicaらしさに溢れていて素晴らしいし、両A面の「one room」はめちゃくちゃかわいい曲だった。アルバム曲だと、個人的に「Lesson」とかも大好きでね。あとはーー。


 というか、全部いい曲なのでとりあえずベスト盤聴いてみてくださいな。


  


 

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp