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宿題と学力

私は中学校で数学を教えていた頃、退職する数年前までは

宿題が生徒の学力を向上させるとは考えておらず

毎日、数学の宿題を与えることはありませんでした。

いや、訂正します。

宿題を効果的に運用できる自信がなかったので、
宿題では学力を向上させることが私にはできない

と思っていたため実施しなかったというのが実情です。

つまり、
宿題と学力の相関の有無は関係なく、
ただ私の処理能力の無さが問題なんです。

何クラスもの担当する生徒を抱えている状態で、
授業などの通常業務をしながら、
毎日100人以上の宿題をチェックして、
生徒の学力に還元することは無理だと判断していました。
(チェックするだけならできるかもしれませんが…)

定期テストや夏休みなどのときには、
問題集を宿題として提出させていましたが、
そのチェックも時間的に考えて

空欄がないか?
答え合わせの丸のつけ方の配置がどんな感じになっているか?

ぐらいで、視覚的にざっと学習状況を確認する程度でした。
(それでも結構時間はかかりましたが…)

この宿題で生徒たちに求められるのは、

期限を守って宿題をこなすことだけで、

・わからないことがわかるようになる
・できないことができるようになる

という学習過程については生徒の自主性に頼らざるをえませんでした。

しかし、教師側が自主的に学習してほしいと思う生徒は、
数学が苦手な場合が多く、自力で学習することが困難なため、
何もサポートしなければ宿題を避ける傾向になってしまいます。

苦手を克服してほしいと願って設定した宿題が、
逆効果になっているのではないか悩み、

いっそのこと宿題はなしでもいいのではないか?

と考えたこともありましたが、

宿題をやめたら、やめたで何もしない生徒が増えるかもしれない

という葛藤をくり返し、結論を出せずにいました。

そして結局、
今まで通り、定期テストのときや長期休業中の宿題の実施に
落ち着いてしまっていたという感じです。

そんな私にも
宿題を効果的に実施できるかもしれないチャンスが巡ってきました。
1学年10人以下の小規模校に勤務することになったのです。

この人数なら宿題を学力向上につなげることができるかもしれないと思い、大人数ではできなかった

 宿題プリント配布 → 翌日提出 
→ 採点&弱点などの確認 
→ 生徒へのアドバイス 
→(宿題プリントの結果やアドバイスの反応を受けて)
  弱点補強など生徒の実態に応じた宿題プリントの作成 
→ 宿題プリント配布 → ・・・

という生徒へのサポートを含んだサイクル
中学1年生~3年生まで宿題を実施しました。

少人数だからなんとかなると最初は余裕をもっていましたが、
いくら少人数でも1人ひとりの特性は異なるので、
10人いれば10通りのサポートを考えなければならず
実際、試してみるとかなり大変なことがわかりました。
特に大変だったのが次の2つです。

宿題プリントについて

宿題プリントは市販のものではなく、
目の前にいる生徒たちの学習状況をリアルタイムに把握しながら、
それに応じて作成しました。

 ・その日の授業内容を復習する問題
 ・前日の宿題で答えられなかった問題、または、類似問題
 ・知識が曖昧なところを強化する問題
 ・理解度に合わせた発展的な問題
 ・今学習している以外の単元の問題

などの内容を混ぜたプリントを放課後までに作成するため、
朝、登校時に宿題プリントを回収して採点し、
その採点状況やその日の授業の生徒の反応を見ながら、
生徒たちにフィットする内容を考えました。
それらをまとめて即日配布しなければならないので、
私の小さい脳がフル稼働で悲鳴をあげていました。
個に応じた1人1枚の宿題プリントが理想でしたが、
さすがにそれは不可能だったため、
クラス数人の生徒の傾向を平均的にまとめた宿題プリントを作成しました。

生徒へのアドバイスについて

宿題プリントを採点した後、
休み時間などを使って1人ひとりにアドバイスをしました。

・同じミスを繰り返していることの指摘と改善策の模索
・弱点の確認
・できていなかった問題に対するアドバイス
 全くわからない状態の場合          → 1から丁寧に説明
 ある程度わかっている様子の場合       → ヒントを与える
 今までできていたのにできていなかった場合  → 考え方や記憶を
                        確認し、思い出させる
・成長や取り組みを褒める

日々のことなので、生徒の負担も考慮し、
なるべく簡潔に1人1分程度のアドバイスを心がけました。
重要なのは継続することだと思い、

1回のアドバイスで改善できなくても
2回、3回と続ければ少しずつ定着していくはずである

と信じて取り組みました。

まとめ

勤務時間の大半を使って、毎日パソコンと生徒と向き合っていましたが、
継続した甲斐もあって、リアルタイムに生徒の学力向上が実感でき、
テストなどでも、ある程度結果を残せるようになりました。
(授業以外に、これだけ手厚くサポートすれば嫌でも効果は出ます)

生徒たちからは
「(定期テスト中)数学はできるから、他の教科から勉強する」
「苦手だったけど、得意になった」
「できるから面白い」
など前向きな発言が増えました。

このように宿題を効果的に運用することができれば、
学力向上は十分見込めると思いますが、かなりの労力が必要です。

私の力量では、
最後に務めた小規模校以外では、同じように実施するのは不可能でしょう。
(そもそも全員の提出が難しい)

AIの発達によって、生徒の学力を診断し、
膨大なデータから自動的に適切な問題を作成するアプリなどがあれば
効果的な宿題の実施は可能になると思いますが、
そうなると今度は教師の存在意義が問われかねないので難しい所です。

ちなみに私は夏休みの宿題を8月31日に号泣しながらやるタイプでした。

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