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教育とナッジ理論

日々のニュースで教員の不祥事を目にすると、
元教員である私はいつも複雑な気持ちになってしまいます。
大半の教員は多忙の中、
誠実に子どもたちと向き合い教育活動に勤しんでいるのに、
一部のネガティブなイメージによって
批判の対象になりやすい状況になっていると感じるのは私だけでしょうか?

そんな厳しい目で見られがちな教員の方々は、
プライベートも含めて自身の言動に細心の注意を払わなければなりません。

たとえば、子どもたちに対して「勉強しなさい」という注意も、
言い方やニュアンス、注意するまでの子どもたちへの関わり方、
背景情報などが違えば、パワハラになってしまう可能性があります。

カリスマ性のあるスーパーティーチャー以外は
「しなさい」「やめなさい」という直接的な言葉で、
子どもたちの行動を強制したり、抑制したりする指導は
もう難しいのかもしれません。

そこで行動経済学の「ナッジ理論」です。
ナッジとは注意をひくために、ひじで軽くつつくという意味で、
強制するのではなく、自由な選択の余地を残しながら
より良い選択肢に誘導することをいいます。

たとえば、
男子トイレの小便器に的を描くことで、的を狙いたくなる心理を利用し、
きれいに使用してもらうことを誘導するナッジや、
税金の滞納者に対して同じ地域の住民の納税率を知らせることで
みんな払っているから払わなければならないという心理に誘導するナッジ
などが社会で応用されています。
(参考:「行動経済学見るだけノート」真壁昭夫箸 宝島社)

このナッジ理論を教育現場でも応用できれば、
教員が強制するのではなく、子どもたち自らが判断して行動するので、
生徒や保護者からの不満は確実に減るはずです。
しかも、より良い選択ができるように密かに誘導することが
ナッジ理論の真骨頂なので、
子どもたちの決断を安心して見守ることができます。

かなり理想的な教育になると思われますが、
ナッジ理論を応用した教育に関する具体的な事例が
どれほどあるのかわからないので、現時点では絵に描いた餅にすぎません。

だからこそ、これからの教育のために研究しがいのある理論だと思います。
たとえば問題集を提出しない生徒に対して、納税を促すナッジのように

クラスごとの提出率を提示したり、

「■人中、〇人が提出期限を守って提出しました」とアナウンスしたり

などを試し、ナッジ理論に基づいて
仮説と検証を繰り返せば教育に特化したナッジが生まれるはずです。

他にも、
・「勉強しなさい」と指導しなくても、
 自主的に学習に取り組みたくなるようなナッジ
・「掃除をしなさい」と指導しなくても、
 自主的に清掃活動を行いたくなるようなナッジ
・遅刻や忘れ物などを注意するのではなく、
 自主的に生活習慣を改善しようとするナッジ
・人間関係のトラブルがあったとき、和解に舵を切るようなナッジ
・道徳の授業において、より良い選択を誘導する発問などのナッジ

など研究しがいのあるナッジがたくさんあるのではないでしょうか。

子どもたちを
『強制するのではなく、導く』ナッジこそ、まさに教師の仕事です。


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