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保全のトリアージ

 災害などで多くの負傷者が発生した際、少しでも多くの命を救うためにトリアージが行われる。トリアージでは、負傷の程度によって治療の優先順位が決まり、呼吸のある重傷者が優先される。つまり、「生命を救うため、直ちに処置を必要とするもの」が最優先治療群となるのである。

 第六回目となる大量絶滅の時代を迎えている現在、地球上の生命は大災害に見舞われている。そして、同時に人類による絶滅危惧種のトリアージが行われている。ただし、このトリアージの優先順位は、「絶滅を防ぐために直ちに処置を必要とするか」ではない。人類の文明や文化にとって有益な種か、象徴的な種か。これがトリアージの基準である。森の日陰に棲む昆虫たちと、ジャングルを駆けるトラ。どちらの保護が優先されるかは、もはや一目瞭然である。

 保護に使える資金は限られている。そのため、「象徴種」と呼ばれるような、人類にとってより魅力的な種が保全の対象となる。しかし、自然界の複雑なシステムにおいて、人類にとって魅力的であるか否かは全く関係のないことである。名前さえ知られていない種が、時として、生態系内で重要な役割を演じていることがある。しかし、このような種にはなかなかスポットライトが当たらない。ここに大きなジレンマがあるのだ。したがって、私たちは、保全が約束されていない種を絶滅の危機にさらすわけにはいかない。そのためにも、自然環境を守る必要がある。そして私は、彼らにもスポットライトを当てられるように、もっと彼らのことを知りたいと思う。

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