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心理検査を受けた話


「覚えがわるい。人より遅い。この子は大丈夫だろうか」
これは私が子どもの頃から家族や学校の先生から言われていて、ずっと引っかかっていた言葉だ。
なぜなら自分のことを人より覚えが悪いとも人より覚えが良いとも思ったことがないから。
自分の普通をそう言われたところでいまいちピンと来なかった。

でも、それを自覚できないのに周りからそう言われ続けると、どこか不安になるものだ。
得体の知れない何かを抱えている気がして。



心療内科に通い始めて一年ほど経った頃、心理検査を受けることにした。
発達障害の傾向を調べる目的で行われているらしいが、私はそれも加味しつつ自分の傾向を知りたい、それを知れば治療に役立つかも…という理由で受けることにした。

結果は発達障害の傾向はなく、全体的な数値に特に問題はないが、注目すべき点が二つ。
ひとつは平均より少し高い数値が出ている項目が一つあるのと、処理能力の項目が平均を随分下回っていることだった。
検査士の人曰く、平均より上の項目と下の項目が存在するだけで心理的な負荷、ジレンマが強くなるらしい。

私はこの結果で長年の違和感が解消された。
「覚えが悪い。人より遅い」は、
処理能力の低さであって、そういう特性を私の脳が持ち合わせているだけに過ぎないのだ。
遅いと評価されて、私なりに早くやろうとしてもミスばかりが増えるのはそういうこと。
それは努力では補えない領域だったのだ。

一種の諦めと、安心が広がっていったのを今でもはっきりと覚えている。
考えれば分かりそうなものだが、自分のことを、ましてや脳のことを、自ら客観視するのは難しいものだなと思った。

長年よくがんばっていたな。
小学生から高校生まで詰め込み教育で、ひとり落ちこぼれがいたところで授業は待ってはくれなかったもの。

でも、心理検査を受けたおかげで今ではそう悲観的にならないですんでいる。
遅くたっていい。自分のペースで、確実に取り組んでいけばいい。
自分はおかしいのだろうかと何処かでもやもやしていた昔の自分に大丈夫だよといってあげられる気がした。

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