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ただの「ちょっとかわいい女子高生」だった話

前記事を書いていて思った。私はこの年、大きな失恋を2回もしている。春に人生初めての告白をして玉砕してから、さらに夏にも涙を流すことになる。(惚れっぽい)この年を私は自分の「厄年」と呼んでいた。

都内の私立の女子校に通っていた。その日はたしかテスト期間中で、午前中で学校が終わり。友達と近くのターミナル駅まで歩いていた。髪の毛は軽く茶髪でロング。当時はみんな、パンツが見えそうなくらいのミニスカート。ドラマによく出てくるような目立つ制服で「THE女子高生」を謳歌していた。

駅前の大きな横断歩道を渡っている途中で、3人組の男性に声をかけられた。「一緒にお昼食べようよ!」とかなんとか言われたんだと思う。「いや、いいでーす」と普通に流して断ったのに、しつこい。だいたい横断歩道の途中で声をかけてくるなんて危ない。せめて渡り終えてからにするべき。

とにかくしつこかった。大きな駅前で進路を遮られて通してくれない。たしかにかわいい友達といたし、パッと見は「ちょっとかわいい女子高生」2人組だったのかもしれない。どんな流れでそうなったかわからないけど、仕方なくアドレスだけ交換することにして帰宅した。知らない男の人たちについていってはいけない。(本当ならアドレスも教えてはいけないのだけど。)

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数日後、テストが終わったあたりにアドレスを交換した1人からメールが来た。「みんなでごはん食べに行こう!」みたいな感じだった。話を聞くと彼らは大学4年生。就職が決まり、卒業を控えた最後の夏に、女子高生と遊びたかったのだろうか。メールの文章がおもしろくて、とりあえずみんなでなら、ということでごはんを食べることになった。(健全なお店で。)

食事の日、向こうは前回の3人組。こちらは友達を1人追加して6人でごはんを食べた。合コンみたいだったけど「はじめまして~」みたいなキャピキャピしたノリではない。「仕方なく来てあげましたよ。」的なドライな女子高生3人組だった。

予想外にその場は楽しくて、もちろんお酒を飲ませたりなんてこともしないし、横断歩道でナンパしてきた人たちとは別人のような、紳士的な振る舞いだった。何より話がおもしろくて、知識と教養がある人たちだと思った。それもそのはず。超有名私立大学の学生だった。あのしつこいナンパ、本当にあなたたち? というくらい。

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それからもアドレスを交換した男性(以後、芝くん)とちょこちょこメールを交わすようになる。3人組の中では、一番好印象な男性だった。そして2人で遊びに行こうと誘われるようになる。

学校帰りに「お台場に行こう」と誘われた。同年代の男の子としか付き合ったことがなかったので、「ゆりかもめかー」なんて思っていたら、なんと学校近くまで車で迎えに来てくれていた。これが女子高生の私にはとても刺激的な出来事だった。

助手席に座り、お台場までドライブ。くだらない話で盛り上がり、あっという間に時間が過ぎる。

安全運転だったけど、ほんの少し急ブレーキをかけざるを得なかったとき、彼の左手が私の前にサッとでた。

わかる? あの咄嗟に出る左手が。私をかばおうとする、左手が!

今思えばなんともちょろいお話なのですが、当時の私は、これで恋に落ちた。(と言っても過言ではない。)

高校2年生だった私は、ナンパしてきた某有名私立大学の4年生に、また恋をした。

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その後も何度か遊ぶようになった。学校終わりからのお台場は定番になりつつあった。もうすぐ夏休み。私の誕生日。芝くんは「もうすぐ誕生日だね」なんてことも言っていた。このままうまくいけば、つきあえるんじゃないかなと思っていた。

ある日「花火大会に行こうよ」と言われた。嬉しかった。「いく!」と即答した。お母さんにお願いして、浴衣を買ってもらった。少し大人っぽく見えるような、紺色ベースの浴衣。

花火大会当日、ドキドキしてよく眠れなかった。新しい浴衣と、なんとか自分で頑張ったヘアセット。隅田川花火大会は言わずと知れた大人気の夏のイベント。

浅草あたりで待ち合わせをした。芝くんは私を見つけて、「かわいいねー!」と言ってくれた。その日は何度も噛みしめるように「いいねぇ」「かわいいねぇ」と言ってくれたので、本当に気に入ってくれたんだと思う。「これは今日いけるのでは!?」なんて私の期待も上がる。(まるで男)

しかし隅田川の花火大会は人がすごかった。私たちは2人とも初めてだったので、どこがいいスポットだったのかよくわからなかった。花火が上がりはじめ、それを目安に見やすい位置へと移動した。人が集まっている小さな公園のようなところがあった。木が少しジャマだったけど、花火が見えた。私たちはそこに留まって花火を見ることにした。

そのポジションで花火を見始めて少しすると、突然芝くんに後ろから抱きしめられた。

「(ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ)」心の声

今でいうバックハグですよ。もう心臓が、飛び出しそうで。

何度も遊んだことはあったけど、指一本触れてこなかった芝くん。突然の出来事に発狂しそうだったけど、騒いだらこのバックハグが終わってしまうかもしれない! と思って、ひたすらそのままおとなしく、花火を見た。バックハグの手に、私の鼓動が伝わっているかもしれない、と、気が気でなかったけど。

花火が終わって、何事もなかったのかのように帰った。「なんだ、告白はされなかったか(ちぇっ)」と心の中で思いながらも、確実に進展したという嬉しさで達成感いっぱいだった。

本当に、いい感じだったのだ。大人になった今思い返しても、とてもうまくいっていた。

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花火大会が終わって、メールをしても返事が来なくなった。あんなにいい感じだったのに。突然。

誕生日も近かった。芝くんにお祝いしてほしかった。「もうすぐ誕生日だね。」なんて言ってくれていたから、その日は空けておいた。でも何度連絡しても、返事は来なかった。

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誕生日当日、全然違う男の子に誘われていた。学校近くに住むその男の子にある日「いつも気になって見てたんです!」と突然声をかけられ、連絡先を渡されていたのです。

友達に「とりあえずメールしてみなよ」と言われノリでメールだけしていたものの、イマイチ気分が上がらず。(だって芝くんが好きだったし。)でも誕生日に1人で過ごすなんて、耐えられなかったのです。当時の私は。その男の子に熱烈なオファーを受け、遊びに行きました。

その男の子は免許取りたてで、車で私をどこかに連れて行ってあげたいらしく、その先がまさかのサプライズお台場だった。

そのサプライズはその日の私には衝撃的にきつく、何をしていても芝くんを思い出すし、ずっと泣きそうな気持ちを抱え、一刻も早く帰りたかった。

夕方から雨が降ってきて、いつも芝くんとお台場に来るときは天気がよかったのになぁ。とぼんやり考えていた。誕生日当日のデート相手の彼は何も悪くないんだけど、やっぱり何をどうしても無理だった。

こんなにつまらなさそうにしているのに、その彼は帰りの車の中で私に告白をしてきた。何て言われたか分からないけど、「この言葉を、芝くんに言ってほしかったなぁ」と思って、こらえていた涙が一気に溢れてしまった。彼は驚いたでしょう。訳も分からず。メンヘラな女と思われたかもしれない。まぁそれならそれでいい。「ほかに好きな人がいるので、ごめんなさい」と泣きながら帰った。

これが17歳の誕生日。今振り返っても、こんなに悲しい誕生日はなかった。一生忘れないと思う。

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結局芝くんの謎はいまだに分からないでいる。私が芝くんのことを好きなのが、伝わってしまった? 高校生が彼女だなんて犯罪? 芝くんにとって私はただの「ちょっとかわいい女子高生」だったのかな、と思う。それは本命の彼女にはなれない、ということ。

今もしまた会えたら、あの時どうして連絡をくれなくなったのか聞きたいと思う。このnoteが届くとは思わないけど、いつかあの時の気持ちを話せたらなぁと、思う。17歳の誕生日のあの時の私に、一言「おめでとう」って言ってほしかったよ、と伝えたいと思う。

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