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次の時代へ持っていけないもの、こぼれおちるものを

※今日はマーケティングではなく、少し感傷的なお話です。
ホテル業界にいる、ホテルが大好きな1人の人間として、今感じたことを書いています。

ホテルマーケターという職業柄、お仕事で色んなホテルの
営業状況を確認しています。

・自粛を受けて、ゴールデンウィークまで休業中
・制限付きで営業している
・閉館している

大きくわけて、3つのパターンに分かれていました。

今回の件で閉館したのか、去年の台風などその他の事情でなのかは分かりませんが、クローズした宿を見るのは切ない気持ちになりますね。

様々な媒体で調べていると、普段TwitterやInstagramで紹介されている施設は、数ある宿の中でほんの一握りなのだなと、改めて。

3月の始め頃は、ぼんやりと「あまりよくない宿は淘汰されて、いい宿が残っていくんだろうな・・つまり、業界全体としてはいいことなのかもしれない」と考えていました。

でも、いったいどんな宿が良くて、どんな宿が良くないのか。
それは誰かが決めることができるものなんでしょうか。

私は口コミを読むのが大好きです。
表に出ている施設情報は、なんとなく平面的で、よそゆきの顔をしています。

だけど、クレームでもお礼の言葉でも、お客様からの声はリアルです。
口コミを読むことで、その宿の本当の姿が表情持って見えてくるような気がするのです。

すごく評価が低い宿や、「もう二度と泊まりません」と書きこまれている宿。こういう施設は、きっと一般的に見たら「良くない」宿ですよね。

でも、よくよく見ると、その中に1件だけ「気さくなおもてなしがありがたかったです」「お安く泊まれて嬉しかったです!」など、いい口コミが入っていたりします。

大多数の人にとっては良くない宿も、誰かにとっては思い出に残るいい宿だった。また泊まりたいと思うような体験だった。

そんな良かったと良くなかったの声が織り交ざって、
世界にはたくさんの宿泊施設が存在しているのだと思います。

最近どこかで聞いてなるほどと思ったお話。
「内装にこだわったステキなお店ができても、喜ぶ人と喜ばない人がいる。”私なんかがこんなお店に入っていいのかと気おくれしてしまう”人も、一定数いる」何が良くて何が良くないなんて、一概には決めつけられないのだと思います。

しかし、今のこの状況下では、たくさんの小さな声に支えられてきた宿が、なくなっていってしまうかもしれません。

宿泊業界に関わる人たちは、宿を愛する人が多いです。
自分たちの施設だけでなく、業界全体を盛り上げていこう、助けようと考えて動いている人たちがいます。素敵なことですし、自分もそうでありたいと思います。

それでも、もともとファンが少ない宿や、こぢんまりと日々のキャッシュを回してきた宿、後継者がいない宿、エリア的に長く流入が見込めない宿・・

長期戦になればなるほど、それぞれの理由で閉館する宿も
出てくると思います。

すでに閉館している宿を見つけたとき、1つ1つ感傷的な気持ちになったように、業界の中で閉まる施設が増えることは、とても悲しいことです。

ホテル業界だけではありませんが、これからは今までと違う方法を取っていく必要があるかもしれません。1つ、大きく時代が変わろうとしている、変わらなくてはいけないタイミングなのかもしれません。

目を閉じると、悲しいような、寂しいような気持ちになります。
「業界全体にとってはいいことなのかも・・」なんて考えていた自分は、
どこかへ行ってしまいました。

なぜなら、色んな人の顔や、ホテルが浮かぶからです。
実際に会ったことがある方や、顔を知っている方というわけではなく
インターネット上で見つけた廃業した宿だったり
そこで働いていたであろう、女将さんだったりの、想像。

大多数の意見の中でぽつんと書かれていた「この宿に泊まれてよかったです」という声が、消えていくような感覚。

宿泊施設の運営状況を調べている中で、そんな感覚がありました。

けれども、やはり変化は起きるものだと思います。
変わる中では悲しいこともありますが、それでも後の世界の方が
もっと良かったと思えるように、動くことはできます。

私だって、小さな会社に勤めていて
今後もホテル業に従事できるかなんて先のことは分かりません。

「前を向こう」とは簡単には言えないし、なれない時だってあります。
自分がその中でこれから心に留めておきたいのは、
ひっそりとインターネット上に落ちていた、「この宿に泊まれてよかったです」の声。

ネットを使いこなしている宿ばかりではないから、もしかすると
宿で働く人自身には、届いていなかった声かもしれない。
でも、私は見たからね、という。

きっと動くであろう時代。次の時代へ持っていけなかったもの、忘れ去られるかもしれないもの。自分が気づけないもの、こぼしてしまうものも、いっぱいあると思います。

だけど、少なくとも、私は見たからね。

変わるものと、変わらないものに思いを馳せて。






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