イワシのベッカフィーコ
シチリア島の州都、パレルモからの発信。 ボンジョルノ。
やー、今日も雨です、涼しい。 早いところ衣替えをしなくては。 そういえば私はトレーナーという物を持っていません。 昔は沢山持っていたのに、ここ10年くらいは着ていないんです。 特に理由があるわけではないのですが、シチリアにいると着る時期があまりない? 買っても結局着ることが少なく、徐々に処分してしまって今に至ります。 でもここ数日のお天気、トレーナーがあったら丁度いいかんじです。 買おうかな? 肌寒い時にはごく薄いウールを着ることが多くなっています。 トレーナーって、畳んでしまうと結構場所を取るというのも着なくなった理由の1つかもしれません。
昨日のホムパの事を書こうかと思いましたが、その前に書いてしまおうと思っていた事があるので、そちらを先に書いてしまいますね。
シチリアの郷土料理の1つ、イワシのベッカフィーコという料理です。 手開きしたイワシでパン粉ベースの詰め物を巻き巻きして、オーブンで焼きます。 何度も書いていますが、シチリア料理はよくパン粉が登場します。 硬くなったっパンの再利用。 パン粉、松の実、レーズン(甘くない物、日本にはないと思います)、パセリのみじん切り、アンチョビのみじん切りを混ぜて、そこへしっとりするくらいのオリーブオイルを加えます。 これを具としてイワシで巻き、オーブン容器にイワシ、ローリエ、イワシ、オレンジのスライス・・・と並べていき、上からもオリーブオイルをかけてオーブンで焼きます。 私はオレンジではなくレモンを使用、オレンジの方が甘味が強くなります。 人によってはパン粉の具材にオレンジの絞り汁を入れる人もいますが、私は入れないで作ります。
オーブンに入れる前。 きっちりと詰まる容器があれば、爪楊枝などで留める必要はありません。 170度くらいで15分強かな?
焼き上がりはこんな感じ。
焼きたての熱々でも、常温でも美味しいです。 シチリアでは大抵前菜として常温の物が出ますが、熱々をメインとして食べるのもおすすめです。 個人的にはパン粉の量があまり多くない方が好み、パレルモでは下町へ行けば行くほどパン粉の量が増える感じがします。 パン粉でお腹を満たそうって感じかしら?
切り口です。 シチリアのイワシは日本のそれよりも小さいので、厚みも少ないし、パン粉が多いとイワシが負けてしまう・・・。
ベッカフィーコと言う名前ですが、これは小鳥の名前です。 日本語だとニワムシクイと言うらしいです。 18世紀のスペイン統治下、シチリアでは裕福な貴族達がフランス人シェフを抱えていました。 そして貧しい農民の娘達が貴族の家へ奉公へ出向いていたんですね。 たまのお休みで家へ戻ると、娘達は母親に貴族達がどんな暮らしをしているか、どんな物を食べているかなどを話して聞かせたそうです。
当時の貴族達は娯楽として狩猟を好んでいましたから、このベッカフィーコと言う鳥を捕り、料理人が詰め物をし、調理していたのです。 貧しい農民達には手の届く物ではありませんでした。 それをイメージして、イワシで代用したのがこの料理だそうです。 イワシの尻尾がピンと立っているのが、正に小鳥の尻尾と似ていたからと言う話です。 貴族達の食べていた本物のベッカフィーコの詰め物が何であったかはわかりませんが、農民達はパン粉で作っていたのです。
今これを書きながら、「シチリア料理はそのままこの島の歴史を語る」シリーズ、フェニキア人、ギリシャ人、古代ローマ人と3回書いたところで滞っていることを思い出しました。 こっちも続けなきゃ。
私のFB上の食いしん坊のグループ、時々Zoomでお喋りをするのですが、先週の土曜日は管理人さんからの依頼で我が家のキッチンをお見せしました。 そして「イメージクッキング」と言う企画でこのベッカフィーコの作り方を説明したところ、既に数人の方が日本で再現して下さりました。 甘くないレーズンは手に入らないと思うので、ドライトマトで代用できると申し上げたら、皆さん忠実にドライトマトで作ったようです。 更にそれぞれ違うハーブを入れたりアレンジもして、ご家族にも好評だったとか。 嬉しい限りです。
楽しみが少ない今日この頃、でも私はかなり楽しんでいるなぁと実感しました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?