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夜がすきだった。
こどもの頃から。


皆が寝静まって
まちのあかりも消えたころ。


やっと私の時間がはじまる。



何にも邪魔されない、
自分だけの時間。


心をわくわくだけで
満たせる時間が
ほかにあるだろうか。


学校は
楽しいことや好きなことも
あったと思うけれど


同等かそれ以上に
いやなことや気になること、
緊張することもあったと思う。


実家のこども部屋は鍵がなく
母はノックせずいつでも突然
部屋へ入ってきて、


勉強していないと
小言を言われた。


私は漫画家になるのが夢で
勉強しているふりをして
よく漫画を描いていたけれど、


母にみつかると
“漫画家なんてなれるわけないのに”
という意味合いの横槍を入れられて
いやな気持ちになった。



それでも読むのも描くのも
やめなかった。


やめられなかった。
好きだったから。
なにを言われても
手にとることをやめられない。



夜、
母も町も寝静まったころ
誰にも邪魔されない
私だけの時間がはじまる。


好きなだけ読もう。
好きなだけ描こう。


好きなだけ落ちこみ、
好きなだけ泣く。


その日あった
誰にもこわされたくない
大切なできごとを
そっととりだし、ひとりあたためる。


部屋の電気は消して、
布団に懐中電灯を持ちこむ。
寝たふりもかんぺきだ。


なにやってるんだろなぁ。
でもちょっとだけ楽しい。



堂々としてみたい。
でもきっと今のまま。


このまま夜に身をゆだねて
たゆたっていられたら。


「明日のために早く寝る」
という言葉の意味は
理解できるけれど、


この夜の時間をなくしてまで
備えたい明日ってなんだろう?


目をつむってしまえば
朝がくる。


朝がくれば、
1日がはじまり



夜までまた、
うまくやらないと。


そう思うほど
この夜の時間が惜しくてたまらない。
寝てなんかいられない。







進学しても
就職しても


基本的に朝がくるのは
楽しみではなかった。


1日がはじまる。
うまくやらないと。


緊張と不安と、
夜ふかしからくる睡眠不足に
低血圧もあり


布団からでれば
はじまってしまうと
思うほど起きられず。


こうして綴ってみると
すごい人生態度だなと思う。


でもこの現実を
私は生きてきて、
夜に救われながらやってきた。


一時期、夢日記をつけていたら
明晰夢を見られるようになった
ことがあり、


夜の時間を堪能したあと
夢の世界を楽しみに
眠りについていたことがある。


夢見がいいときは
夢でのいい気持ちを保ったまま
体を起こし、日常に入っていく。


けれど
朝起きられないことにも


原因はわかっていながら
それを正せない自分にも
常に罪悪感を持っていて、


それを払拭することに
またエネルギーを使う。


私にとってこのことは
大きなウエイトをしめていた。







花、色、言葉をとおして
人と、社会と繋がりたい


去年の秋ごろから
ふつふつとわいてきた想い


突然でてきたわけでなく
きっとずっと
どこかにあって


時を待ってわいてきた
願いのようなもの




すきなことを否定されるこわさも
たいせつな夢を汚されるつらさも


ぜんぶ知っている
だから隠してきた



ちゃんとしているふり
うまくなじんでいるふり


誰がみても「ふつう」で
なんとなく「かたちになってる」


それを演じていた
ほんとうのことは
ぜんぶ胸にしまって







花、色、言葉をとおして
繋がりたい気持ち


こわごわ少しずつ
ひらいてみることにした


もう、
否定する人はいなかった


共感してくれたり
一緒にやりたいと
声をかけてくれたり



心からすきなこと
心からのねがいが


自分の外にでて、
誰かに届き
ともに笑う


その尊いこと


こんなに
シンプルでありふれたこと
とも思えるのに


ふるえるほどの
できごとだった



明日この予定がある
明日のために早く寝ようと思う


明日を心待ちに
わくわくだけで
胸をいっぱいにして







最近またひとつ、
今までとはちがった朝を
むかえられた気がしたので



よろこびを綴ってみました。



けれどこの記事は、
「私は変わった」「朝が大好きだ」
ということがいいたいのではなく、


すきなことをひらき
うけいれてもらえた
ことをきっかけに



いちにちを、朝がくることを
ひいては
自分自身を肯定することができ



長いこと自身にはりつけた
「朝が苦手な私」という
レッテルを剥がす選択肢を


自分に渡してあげても
いいんじゃないかなぁと思えた、
というお話です。


はっててもいいし、
はがしてもいい。



夜の時間も大好きだし、
この時間がつちかって
くれたものは私の肥やし。




けれど、
明日のために
その時間をへらしてもいいと
思えるしあわせもいいですね。




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