Kaori Kadobayashi

元フリーライター(現・会社員)。ここでエッセイ等を綴りながら、自分にとって「書くこと」…

Kaori Kadobayashi

元フリーライター(現・会社員)。ここでエッセイ等を綴りながら、自分にとって「書くこと」を改めて考えています。

記事一覧

【No.44】小さな怪獣を飼っているのよ

私の中には小さな怪獣がいる。 最近、巷で言われているインナーチャイルドというものかもしれない。ただ、私の中のこの怪獣は、とってもワガママで、暴れん坊、芯の強い子…

Kaori Kadobayashi
11時間前
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【No.43】親の顔が見たいっ!

うちの子は、恐ろしく口が悪い。時々、彼らの会話を聞いていると、親の顔が見たい!と思うレベルに口が悪いんだけれど、私はそんなに口が悪くない。というか、言っているこ…

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【No.42】夢ではいまだにタバコを吸っている

また台風が発生したみたいだ。 3週間ほど前、台風の影響で東海道新幹線が止まってしまい、週末を埼玉の新居で過ごした。長男は京都の自宅に帰っていて、娘は2人とも京都に…

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【No.41】性教育はいたしません

子供達が大きくなるにつれて、抱える問題は大きくなる。 ちゃんと寝てくれない、偏食をする、人見知りですぐに泣く、癇癪を起こす、そういった家の中で解決できた問題が、…

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【No.40】ワタクシが男であるという疑惑

「男らしいな」 久しぶりに会った友人から言われた言葉である。復職→離婚→給料アップを狙って転職に次ぐ転職→東京に単身赴任というのが私の、暫くぶりに会った彼女に対…

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【No.39】キズナって、干からびた臍の緒のことだっけ?

9カ月の妊娠期間を理由に母子の絆は特別だと言う人がいるけれど、本当にそうだろうか、と私自身は懐疑的である。もちろん、9カ月、お腹の中の住人が十分に栄養が取れるよう…

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女の未来はアフリカに詰まっている

『アフリカの日々』のアイザック・ディネーセンに憧れていた。結婚を機にケニアにわたり、コーヒー農園を切り盛りした強さ。夫に性病をうつされて、子供を持てない体になっ…

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【No.37】そういえば、ずっと母子家庭みたいだったんじゃないか?

離婚する前もずっと、旅行は私と子供3人の4人だけで行った。 待つのが苦手というわけではない。むしろ、周囲に思われている以上に忍耐強いし、気が長い、と自分では思って…

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【No.37】食べ盛りの偏食家はケーキ一台を平らげる

我が家のチビ、なごちゃんは偏食家である. チビと言っても中学2年なので、もう小さくもないのだけれど、大学生、高校生の上の2人がどんどんと身長が伸びていくのに、なご…

Kaori Kadobayashi
2週間前
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【No.36】 今更ながらの幸福論

「昔の日本だったら皆が貧しかったから、貧乏でも幸せだったかもしれないけれど、今は皆んなそれなりの生活をしているんだから、アンタには耐えられないよ」 今から30年も…

Kaori Kadobayashi
2週間前
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【No.35】究極のコミュニケーションの形は、あれだよ

夜になると涼しくなって、窓を開けて寝るようになった。すると、今までは気配くらいしか感じてこなかった赤ちゃんの泣き声が聞こえる。長男とビールを2人で飲みながら、「…

Kaori Kadobayashi
2週間前
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【No.34】ジジイに呪われていたということ

ジジイと呼んでいた。今どきの「ジイジ」ではなく、「ジジイ」。母方の祖父のことだ。 おそらくは口の悪い姉がそう呼び始めたのだと思うが、幼かった私は右に倣えでジジイ…

Kaori Kadobayashi
2週間前
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【No.33】アノヒトは今・・・

台風が過ぎ去った後の東京は、ものすごく暑い。蒸し暑さでは、京都の方が勝っているのかもしれないけれど(そんなことで勝ちたくなんてないが)、乾燥はしていて海風(ビル…

Kaori Kadobayashi
2週間前
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【No.33】今が一番若いんだよ

就職氷河期の人たちに注目が集まって久しい。 実力があっても、良い大学を優秀な成績で卒業をしても、就職に失敗をし、氷が解けないためになかなか思った通りに行かずに、…

Kaori Kadobayashi
2週間前
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【No.32】キムツカシイ娘の話

初めて子供の文化祭に参加をした。 申し訳ないけれど、普段は運動会とかイベントに参加をするのは気乗りしない。たくさんの人がいて、並んだり挨拶したり、それだけで気疲…

Kaori Kadobayashi
3週間前
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【No.31】新しい武器を入手したぞ

東京の茅場町で働いているというと、まず聞かれるのが「通勤電車、大丈夫?」ということ。 正直言って、最初は驚いた。「高田馬場」で西武新宿線に乗り換えるのだけれど、…

Kaori Kadobayashi
3週間前
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【No.44】小さな怪獣を飼っているのよ

私の中には小さな怪獣がいる。 最近、巷で言われているインナーチャイルドというものかもしれない。ただ、私の中のこの怪獣は、とってもワガママで、暴れん坊、芯の強い子である。 自分でこんなことを言っても、俄かには信じてもらえないだろうけれど、私はずっと大人しい子供だった。幼い時期の多くを祖父母とともに過ごしていて、歳をとった彼らは遊んでくれることもなかったから、ずっと本を読んでいた。いつもは触ったら怒られる「小学1年生」などの雑誌を姉たちが小学校に行った後にこっそりと探し出し、裁

【No.43】親の顔が見たいっ!

うちの子は、恐ろしく口が悪い。時々、彼らの会話を聞いていると、親の顔が見たい!と思うレベルに口が悪いんだけれど、私はそんなに口が悪くない。というか、言っていることがキツイのに対して、声とイントネーションがソフトだから、言われている側にしたらすぐには気づかないのだと以前から言われている。 私は、生まれてからのほとんどを京都で過ごしてきたから、京都弁とまでは行かないまでも、そのイントネーションを導入している。それに対して、同じく関西で生まれ育った5歳上の長姉は、バリバリの大阪弁

【No.42】夢ではいまだにタバコを吸っている

また台風が発生したみたいだ。 3週間ほど前、台風の影響で東海道新幹線が止まってしまい、週末を埼玉の新居で過ごした。長男は京都の自宅に帰っていて、娘は2人とも京都にいるから、一人ぼっちで、そんなにひどい雨が降っているわけでもないが、車もない、電車が止まるかもしれないから遠出もできない中で、私が何をしていたかというと、ネットフリックスを一日中見ていた。 「Good Doctor」というアメリカのドラマで5シーズン、各シーズン20話あるから100話、4500分もの時間を私はドラマに

【No.41】性教育はいたしません

子供達が大きくなるにつれて、抱える問題は大きくなる。 ちゃんと寝てくれない、偏食をする、人見知りですぐに泣く、癇癪を起こす、そういった家の中で解決できた問題が、友人関係のもつれやいじめといった家の外の問題へと発展し、進学、就職、恋人と親にはどうしようもない手の届かない問題になっていく。お金のかかり方も、年齢とともに桁違いに大きくなっていく。 我が家には、大学生の息子と、高校生の娘、中学生の娘がいるけれども、きっと普通の家庭以上にオープンにいろんなことを話してきた。話さざるを

【No.40】ワタクシが男であるという疑惑

「男らしいな」 久しぶりに会った友人から言われた言葉である。復職→離婚→給料アップを狙って転職に次ぐ転職→東京に単身赴任というのが私の、暫くぶりに会った彼女に対する近況の報告だったので、驚いたのかもしれない。 「男らしい」という言葉が何を意味するのかはさておき、強いということなのだろうと受け取って、とりあえず嬉しそうに歯を見せて笑っておく。 すると彼女は「本当は男じゃないの」と被せていう。 「かもしれないね」と笑って誤魔化す。どういう意味か、わからねぇ。 しかしながら、3人

【No.39】キズナって、干からびた臍の緒のことだっけ?

9カ月の妊娠期間を理由に母子の絆は特別だと言う人がいるけれど、本当にそうだろうか、と私自身は懐疑的である。もちろん、9カ月、お腹の中の住人が十分に栄養が取れるように気を使ったり、踵の形が分かるくらいに大きくなってきて、お腹の上からつまんでからかってみたりすることはできるけれど、生まれてきた子供が分身のように思えるかと言えば、思えない。 無条件に赤ちゃんというのは可愛いものであるだが、それぞれ生まれつきの個性を持っている。手を焼かされることもある。泣き止まないこともある。自分

女の未来はアフリカに詰まっている

『アフリカの日々』のアイザック・ディネーセンに憧れていた。結婚を機にケニアにわたり、コーヒー農園を切り盛りした強さ。夫に性病をうつされて、子供を持てない体になっても、なおも恋に行きた激しさ。農園で働く人たちを気遣い、相談に乗ったり、身体のケアをした温かさ。 高校生の時に、その本に出会ってから、ディネーセンは私の憧れの女であり続け、少しでも近づきたいと留学もしたし、ケニアにあるディネーセンが住んでいたと言われる家も訪れた。 成績も中の上、何かがとびきりできたわけではない。運動

【No.37】そういえば、ずっと母子家庭みたいだったんじゃないか?

離婚する前もずっと、旅行は私と子供3人の4人だけで行った。 待つのが苦手というわけではない。むしろ、周囲に思われている以上に忍耐強いし、気が長い、と自分では思っている。 しかし、元夫が期日通りに手続きを行わなかったせいで、海外に行くはずだった新婚旅行は国内になり、石垣島を希望していたのも沖縄になった。私は、一月以上も前からパスポートを準備して待っていたというのに。さすがにハネムーンは1人ではいけない(今から思えば、1人でも良かった!)。 子供が生まれて、旅の供ができてから

【No.37】食べ盛りの偏食家はケーキ一台を平らげる

我が家のチビ、なごちゃんは偏食家である. チビと言っても中学2年なので、もう小さくもないのだけれど、大学生、高校生の上の2人がどんどんと身長が伸びていくのに、なごちゃんは華奢で頼りない容姿のままだから、いつまでもチビと呼んでしまう。 とにかく、チビは恐ろしく偏食をする。 「和(なごみ)」という名前のせいか、ずっと和食しか食べなかった。白いご飯、お味噌汁、焼き魚が大好きで、パスタやハンバーグといった洋食は苦手。海外旅行に行っても、頑として受け付けないものだから、私はいつもカバ

【No.36】 今更ながらの幸福論

「昔の日本だったら皆が貧しかったから、貧乏でも幸せだったかもしれないけれど、今は皆んなそれなりの生活をしているんだから、アンタには耐えられないよ」 今から30年も前、アメリカ人の彼氏を連れてきて結婚したいという私に、母が断言した。どんなに貧しくたって、大好きな彼とだったら平気だと思っていてけれど、彼との関係はまもなく別のことが理由で終結し、別の彼氏と付き合い始めたが同じ理由で反対された。 私が付き合う男たちは、ことごとく生活力がなくて、収入も低かった。不思議なほどに私はそ

【No.35】究極のコミュニケーションの形は、あれだよ

夜になると涼しくなって、窓を開けて寝るようになった。すると、今までは気配くらいしか感じてこなかった赤ちゃんの泣き声が聞こえる。長男とビールを2人で飲みながら、「いいねぇ。かわいいねぇ」と胸をときめかせる。 私は無類の赤ちゃん好きである。あまりにも好きだから、自分の経済力も元夫との不仲も顧みることなく3人も産んでしまったほど。うっとりと泣き声に耳を傾けていたが、良い機会と思い長男に声をかけた。酔っていたということもあって、通常よりも直接的な言葉を選んだ。 「結婚とか子供とか

【No.34】ジジイに呪われていたということ

ジジイと呼んでいた。今どきの「ジイジ」ではなく、「ジジイ」。母方の祖父のことだ。 おそらくは口の悪い姉がそう呼び始めたのだと思うが、幼かった私は右に倣えでジジイと呼び、彼が世を去るまで、世を去ってからもジジイと呼んでいた。 なるほど、今、私がババアと子供達に呼ばれるわけである。ジジイは口癖のように「呪ってやる」と口の悪い4人の孫に毒付いていた。これは、彼の呪いにちがいない。 とにかく、50になっても走り続ける自分を振り返った時にジジイのことを思い出した。彼もまた、ずっと何

【No.33】アノヒトは今・・・

台風が過ぎ去った後の東京は、ものすごく暑い。蒸し暑さでは、京都の方が勝っているのかもしれないけれど(そんなことで勝ちたくなんてないが)、乾燥はしていて海風(ビルの谷間風?)が吹くとは言っても、直射日光が半端ない。アスファルトからの照り返しで9月も半ばに入ろうとするのに、日焼けしている。 「おかーさんが幼い頃は道路が舗装されていなかった」 その事実を打ち明けると、うちの子供たちは目をひん剥いた。そして下から上までジロジロと見て、「年やからな」とその言葉の重みを実感しているか

【No.33】今が一番若いんだよ

就職氷河期の人たちに注目が集まって久しい。 実力があっても、良い大学を優秀な成績で卒業をしても、就職に失敗をし、氷が解けないためになかなか思った通りに行かずに、キャリアを築けず、挫けて、非正規社員であることを甘んじて受け入れて、職場を転々としてきた人たち。 ある年齢層の社員がごっそりと抜け落ちる、管理職になり若者を指導する立場にいるはずの年齢層が薄いというのは、会社という組織として見た時にも問題があるらしい。 かくいう私もその時代の申し子だ。アメリカの大学でジャーナリズムを

【No.32】キムツカシイ娘の話

初めて子供の文化祭に参加をした。 申し訳ないけれど、普段は運動会とかイベントに参加をするのは気乗りしない。たくさんの人がいて、並んだり挨拶したり、それだけで気疲れする。 授業参観などは普段の子供の様子を見られるから行っていたけれど、小学校高学年にもなるとあまり意味がないと思っていた。子供は親が来ると思うと仮面を被るし、先生もいつもとは違う授業をする。それを見ることに何の意味があるのか、と失礼ながら心の奥底では、この暇に本を読みたいとすら思っていた。 だけど、「お母さん、文化

【No.31】新しい武器を入手したぞ

東京の茅場町で働いているというと、まず聞かれるのが「通勤電車、大丈夫?」ということ。 正直言って、最初は驚いた。「高田馬場」で西武新宿線に乗り換えるのだけれど、東西線と西武新宿線、山手線の中継地点になっているだけあって、「え?今日って祇園祭だっけ? 祇園さん、出張してきたんかーい」と思ったほどである。 二十代の頃は京都から大阪まで毎朝通勤していた。だけど、ラッシュアワーでもこんなにはひどくない。 満員電車に乗るのは気が進まないので、電車を1本やり過ごして、車両の真ん中くら