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子どもたちと、かつての子どもたちへ 〜かこさとし展を観て〜

こんにちは!
先週末にBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと」に行ってきました。

一言でいうと
すごくよかった!!

あまりにも私の感性や思考に刺激的で共感する部分もたくさんだったので、逆に筆が止まるという状況です。でも、書かないよりも書いた方がいい!ということで、いつもどおりマイペースに書いていこうと思います。

親子でたのしめる展覧会

今回のかこさとし展は、「子どもたちに伝えたかったこと」と題して、かこさんの生涯と子どもたちへの想いが伝わる展覧会でした。

本展は小学生の入館料が無料ということで、夏休みということもあって、たくさんの親子が見に来ていました。

親子で絵を見ながら、かわいい、とか、これすき、とか言い合っている様子はとても微笑ましかったし、次あれ!と興味津々に作品に見入る子どもたちの姿はとてもかわいかったです。

かこさんが子どもたちへ伝えたいこと

一方、かつての子ども、今は大人の私はというと、かこさんの生涯と子どもたちへの想いや態度に、あらためて「そうだよなあ」と自分自身の思いを重ね合わせていました。

今回の展覧会では、作品自体のかわいさよりも、解説の方に注意が向いた、私にとってはめずらしい鑑賞体験でした。

会場で、展示作品の合間に挟まれる、かこさとしさんの自伝的エッセイ『未来のだるまちゃんへ』からの引用がひとつひとつ、心に迫りました。


生きるということは、本当は、喜びです。
生きていくというのは、本当はとても、うんと面白いこと、楽しいことです。

かこさとし『未来のだるまちゃんへ』

という一節がこのエッセイにあります。
ほんとうにそうだなあと思います。

だから、教育はそう感じられる大人を育てることであり、大人がそう感じている自分自身の姿を子どもにみせることなんじゃないかなと思います。

さらに、

これからを生きていく子どもたちが、僕のような愚かなことをしないようにしたい。
子どもたちは、ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の力で判断し行動する賢さを持つようになってほしい。
その手伝いをするのなら、死にはぐれた意味もあるかも知れない。

かこさとし『未来のだるまちゃんへ』

とも言います。

かこさんがここに思い至ったのは、強烈な戦争体験がありました。

敗戦のとき、かこさんは19歳だったそうです。

19歳。
子どもで、大人。
ちょうどはざまの時期。

19年間、大人たちが社会情勢なり教育なりといったかたちで19歳のかこさんをつくってきたのであり、戦争に負けててのひらを返すように態度を変えた大人たちをみて失望や憤りを感じながらも、しかし自分自身も「19歳」という大人側の人間であるという事実。

どれほどの虚無感があったことか。

しかし、かこさんは子どもたちの存在を力に、自分の人生を歩み始めます。

まずは楽しもう! そしてチラリと思いを馳せる

かこさんの手がける範囲は幅広く、絵本だけでなく、紙芝居や図譜も作成したり、内容も物語だけでなく自然科学の分野にもわたります。

そして、『からすのパンやさん』でたくさんの種類のパンがでてくるような「ものづくし」。

今回の展覧会では、これらを余すところなく存分に見ることができます。

自動車を分解したパーツの図、
エスカレーターの断面図、
とこちゃんが迷子になったデパートのなか。

ぜひ、楽しんでみてください。
自分のなかに眠っていたこどもが動き出し、絵に目が釘付けになるはずです。

そしてその裏にある、戦争を経験し、その後92歳になる2018年まで生きて、リーマンショックやイラク戦争、東日本大震災といった私たちと同時代も経験したかこさんの子どもたちへの思いを感じ取ってみてください。

2022年8月の今だからこそ

今回の展覧会はおそらく夏休みにあわせて開催されたのだと思います。
ただ、日本でいちばん戦争の記憶が濃くなる8月という時期に、世界情勢として戦争の気配が強くなっている2022年の今、この展覧会を見れたのは、より思考を深めるよい機会となりました。

生きるということは、ほんとうは喜びであること。
ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の力で判断し行動すること。

子どもたちにそれを教えたり、求めたりするだけではなく、私自身がそうでありたいと改めて思いを強くしました。

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