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超入門 カーボンニュートラル

・カーボンニュートラル:人間社会が排出する二酸化炭素を、プラス・マイナス・ゼロにしようという動き

・日本のカーボンニュートラルの広まり
2020/2:631の機関投資家が安倍前首相に共同書簡を送り、2050年までのカーボンニュートラルへの目標引き上げを要請
2020/10/26:菅首相の所信表明で「2050年にカーボンニュートラルを目指す」と表明
2020/12:政府が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」という産業転換方針を採択
2020/12/7:経団連「2050年カーボンニュートラル実現に向けて」の提言採択
日銀と金融庁は上場企業に課している「コーポレートガバナンス・コード」の中で気候変動が事業リスクや収益機会につながる重要な経営課題と認識するように取締役会に求め、特に大手上場企業に対しては、リスクと機会の将来財務影響を開示することを求める考え

・グローバル経済で災害のリスクを国際的に分散し、地球全体のリスクを人間社会全体で支えあう→年金基金も国際的に分散投資

・グローバル経済の中で気候変動が経済活動に破壊的な影響を及ぼす予見
2020/1:国際決済銀行(BIS)「グリーン・スワン」を発表し、気候変動が巨大な金融危機を引き起こすリスク(①、②)について言及
①気候変動による災害や自然環境の変化による経済ダメージ(物理的リスク)
②気候変動を緩和しようと政府が産業転換を強いる政策を導入、企業や金融機関も自発的に産業転換を図ろうとする経済システムの影響(移行リスク)
(参考)ブラックスワン:あまりにレア、発生したときの影響が広範囲で甚大、発生する前には具体的な影響把握が困難
→BISは気候変動を止めるために、中央銀行の影響力を行使し、二酸化炭素排出量の削減を実現。新しい金融政策が必要になると指摘。

2020/11:連邦準備制度理事会(FRB)の「金融安定報告書」で気候変動が資産価格を変動させ、金融システムを脆弱にしてしまうため、銀行に気候変動リスクに対処することを要請

・温室効果ガス
排出量は50Gt/年。70%が熱や電気を生み出すエネルギーのために排出されている。
石炭、石油、天然ガスの利用が気候変動の原因になっており、オイルメジャー企業や石炭発掘企業の責任が強くなるのはこのため

・ネガティブエミッション:どうしても削減できない温室効果ガスの排出量を大気中から何とかして吸収する
①植林、森林管理:世界には9億ヘクタール(日本の面積の24倍)の植林ポテンシャルあり
②ブルーカーボン:地球上で生物が吸収しているCO2のうち55%は海洋の海藻、海草、植物プランクトン。マングローブ林に注目が集まる
③バイオ炭:田畑に撒くことで土壌の炭素を吸収し、養分を抱負に
④直接空気回収(DAC):大型換気扇で大気を吸引しCO2のみ吸着&反応させて除去
⑤バイオエコノミー:栽培した植物を化石燃料の代替資源へ

経済成長思想は資本主義特有のものではない
「デカップリング(切り離し)」を実現:温室効果排出量を削減しながら、経済成長を実現。GDP成長が一定の状況を超えた国ではデカップリングは実現できている。新興国に対しては、経済成長と生活の質向上と環境制約の3つを両立するには「リープフロッグ」と呼ばれる大幅な発展の飛躍が必要

2020年の世界運用金額:280兆ドル
・個人投資家:63%、機関投資家:37%
・世界トップ富豪62人の資産合計:1.76兆ドル(0.6%)
・世界の年金基金全体:53兆ドル(19%)→年金基金の影響力大

「クライメート・アクション100+(CA100+)」:575の年金基金、保険会社、運用会社が加盟。加盟先の運用資産合計は54兆ドル
→世界で温室効果ガス排出量の多い167社に狙いを定め、温室効果ガス削減に向けて直接の圧力をかけ、2050年までのカーボンニュートラルの実現を要求。日本はトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、日立、パナソニック、東レ、ダイキン、日本製鉄、ENEOSが該当

「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」:年金基金と保険会社の37機関が加盟、加盟先の運用資産合計は620兆円。投資先に2050年カーボンニュートラルを投資先にコミットさせることを目的。債券投資先の各国政府も含む。中間目標として2030年までに排出量50%削減、2050年以降の排出量見通しを開示することも要求事項に盛り込む。
→ダイベストメントではなく、対話を通じてカーボンニュートラルへのコミットを目指す。理由は以下の通り。
①加盟先の最終ゴールは金融危機を起こさないようにすること
②2050年カーボンニュートラルにコミットする企業が減っていけば、投資運用先がなくなっていき、最終的に十分な投資運用ができなくなる

「国連責任銀行原則(PRB)」:ESG投資の動きをESG融資に応用展開。220社加盟、加盟先の資産運用合計は50兆ドル超。加盟先へは、各銀行グループが現状生み出している環境と社会に対するネガティブとポジティブ双方のインパクト査定を要求される。初回査定は加盟から1年半語まで、その上でインパクトに関する目標設定を行い、2年に1度以上、進捗状況を開示することが義務化される

・グリーンローン:融資で調達した資金の使途が特定の環境目的に限定
・サステナビリティ・リンク・ローン(SSL):融資を受ける前に事前に環境や社会の観点での目標を設定し、目標を達成すると融資条件が優遇されるローン。目標を達成すると金利が下がったり、その逆がある。
・ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF):融資先の企業の事業が経済・社会・環境に与えているインパクトをポジティブとネガティブの双方の観点から包括的に分析し、ネガティブインパクトの緩和とポジティブインパクトの拡大について目標を事前設定することを義務化した融資

・イノベーションやカーボンニュートラルに必要なもの
①先を見据えたイノベーション分野の設定
②大胆なグローバル市場展開構想
③金融機関と投資家の連携

・大企業が長期的にカーボンニュートラルを追求する際のリスク
①市場寡占や下請けいじめなどの競争法上の不当行為
②政治献金などを通じて不当に政治影響力を行使し、大企業に有利な市場環境を作り出すこと
③グローバル企業体制を悪用し、租税回避を追求することで、国内で努力している中小企業が不利になっていくこと

(参考数字)
アメリカの上場企業の株式時価総額:世界全体の56.1%
アメリカの債券時価総額:世界全体の約40%
米ドルの決済通貨の割合:世界シェアの60%

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