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長男1回目 7

カウンセリングと箱庭療法

長男小5の夏、私の友人が親と子を両方カウンセリングしてくれるメンタルクリニックを紹介してくれた。心療内科としての院長先生の問診と、母のカウンセリング、子のカウンセリングがそれぞれ別で行われた。

私のカウンセリングについてはもはやあまり覚えていないが、最初の数回はずっと泣いていたような記憶だけはある。まともに気持ちを吐き出せる唯一の場所だった。
長男の方のカウンセリングは、若い男性の臨床心理士さんが担当してくださった。長男にとっては、一緒に遊びながら話を聞いてくれる“頼れるおにいさん”で、あっという間に懐いていた。

最初はまず「箱庭療法」だった。
箱庭療法とは、砂の入った箱にいくつかのおもちゃやフィギュア等を入れ、それを使って何かを作ってもらい、心理状態を知る方法。無意識にあるものを意識化して自己表現ができるため、心の奥深くを知ることができるという。長男はまだ小5であり、言語化することが難しいことも多々あるであろうことから、それから始まった。

初回のカウンセリングの後、院長から長男がいる部屋に来るよう呼ばれた。
院長が指さした方向には、私を見てニコニコと楽しそうに長男が立っていて、彼のすぐそばに箱庭があった。
「お母さん!見て見て~、面白いの作ったよ!」

心の内側

・・・私は嬉しそうな長男に向かって、うまく笑えていただろうか。

パッと見た時は、箱庭がどうなっているかわからなかった。が、よく見てみるとそこにあったのは、怪獣や真っ黒いブロックやいろんなものに押しつぶされるように横たわっている1体のウルトラマンだった。
「ウルトラマンが怪獣に捕まって、逃げられないんだよ!」
素人目に見ても、それはゾッとするような恐ろしいものだった。

院長は長男に聞こえないように仰った。
「本当ならばこれはお母さんには見せないんだけど、長男くんの心の状態を把握しておいた方がよいかと思ってね。この子の心はこんなに苦しんでいるのよね。相当抑え込んで、我慢してきたんだと思います。」

長男自身は単純に、普段はヒーローであるウルトラマンが悪者たちに捕らえられているという意外性を表現したつもりで、なおかつお母さんに見せたらきっとその意外性を面白がってくれるはずだと思ったのだろう。
その気持ちは長男の笑顔からもすぐに察した。
だから私はできるだけ笑って長男に言った。
「すごいね!ウルトラマンが捕まってるの!?助けてあげなきゃね~!」

嬉しそうに長男が私とカウンセリングの先生に向かって、何か話している。
でももう耳に入ってこない。
それぐらいあの箱庭の光景は衝撃だった。
この子の心はこんなにがんじがらめになっていたのか。
こんなに押し潰されそうになっていたのか。
こんなに周りに敵ばかりだと感じていたのか。
私はただただ泣かないように、必死に笑顔を作っていた。

それから週に1回、カウンセリングに通うようになった。
私には「とにかく寝ないとまともに考えられなくなるし、あなたが倒れたら大変でしょ!」ということで、精神安定剤と睡眠薬が処方された。
(睡眠薬が効きすぎて洗濯しながらぶっ倒れたこともあったが、強制的にでも眠ることで、1~2ヶ月すると少し心が落ち着いてきた感覚はあった)
長男は、学校でも家でもない別の世界に、自分とたっぷり遊んで話を聞いてくれるおにいさんができて、楽しみに通院するようになっていった。


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