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憲法上問題ない東京・武蔵野市住民投票条例案-外国人に日本人と同条件で投票権-への長島昭久の攻撃

東京都・武蔵野市が、外国人に日本人と同条件で住民投票の投票権を付与する条例の上程したこと(正確には議会開会日に上程)について、さまざまな反応がみられた。

その条例に賛成すること・反対することは、それぞれの考えがあり自由であるが、公職につく者がデマ・悪質なミスリードをすることは許されない。その悪質なミスリードをしているのが、長島昭久議員(自民・比例東京)である。

「意図」に執着する長島昭久

長島議員のこの件に関するいくつかのツイートを紹介する。

市長の意図や動機は何なのか。投票結果の法的拘束力は?
多様なバックグラウンドを持つ住民の生活の質を向上させる目的なら、日本国民同等の投票権ではなく、住民アンケートで十分ではないか。

外国人に日本人と同条件で住民投票権 東京・武蔵野市が議会上程へ https://t.co/orRkoPnXfP @Sankei_news (長島昭久Twitter @nagashima21 2021/11/12-08:15)
この条例では、投票結果に法的拘束力がなく、結果を「尊重」すれば良いとされている。つまり、効果としては住民アンケートと大差ない。なのに何故わざわざ「住民投票制度」としたのか。これを突破口にして何か別の目的を追求しようとしているのか、と市長の意図を訝らざるを得ない。(長島昭久Twitter @nagashima21 2021/11/12-21:15)
そもそも自治基本条例に問題があるわけではないですね。
今回の「住民投票条例案」の最大の問題点は、投票権を有する「住民」の範囲。
条例案によれば、市内に3カ月以上住む18歳以上の日本人と(留学生などを含む)定住外国人とされ、在留期間の要件も付けていない。
この「意図」が最大の争点。(長島昭久Twitter @nagashima21 2021/11/13-07:25)

この他にもいくつか関連ツイートはあるが、住民投票条例の「意図」に執着している。
さすがに、外国人への住民投票の投票権の付与について、法的に問題ないことは理解していそうである。法的に問題はないから、勝手な「意図」を想起させ、それを攻撃するしかないのである。明らかに悪い「意図」があることを前提にしてツイートしているのが長島議員である。

が、松下玲子・武蔵野市長は、住民投票条例について、以下のように述べている。

「意見交換会など市民参加を進めてきた中で、外国籍住民を除くことはしていない。住民投票制度についても、国籍でわける理由はない」(朝日新聞デジタル 2021/11/12-22:22)

明快である。この住民投票条例において、外国人についても投票権を付与するのは、「国籍で分ける理由はない」からである。

そもそも、この条例は、長島議員も重ねてかいている通り、市長選や市議選の選挙権を与えるものではなく、この住民投票には法的拘束力もない。外国人を排除する理由がないから、外国人も含めただけであり、このような条例は、全国初というわけでもない。

長島議員がこれに批判的なのは、むしろ法的拘束力さえない住民投票ですら、外国人を排除しよう、という「意図」があるからに他ならない。

外国人地方参政権は禁止されているか

さて、長島議員のいう悪い「意図」とは何か、ということであるが、おそらく地方参政権であろう。
そもそも、今回の住民投票条例に外国人地方参政権の意図があると解するのは、無理があるが、しかしまず外国人参政権は許されないものなのか。

外国人にも、地方参政権を与えるべきである、あるいは与えてもよいとする学説は、昔は少数説であったが、今では有力説ないし多数説である。
国政選挙は国民主権に照らし、外国人の参政権は禁止される(とするのが多数説である)。もっとも、地方選挙は、憲法92条が「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とし、93条2項が「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」としていることから、住民は日本国民に限られず、一定の外国人も住民に含まれる、とする。(いわば、「住民主権」である。)
地方自治は、住民自治が原則となり、その「住民」を日本人(日本国籍保有者)に限る必要はないということである。

さて、このような学説等の状況であるが、最高裁は平成7年2月28日の判決で、次のように判示している。

「憲法93条2項は,我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが,憲法第8章の地方自治に関する規定は,民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み,住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は,その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから,我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて,その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく,法律をもって,地方公共団体の長, その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは,憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら,右のような措置を講ずるか否かは,専ら国の立法政策にかかわる事柄であって,このような措置を講じないからといって違憲の問題 を生ずるものではない。」 (最高裁判所第三小法廷判決 平成7年2月28日)

つまり、外国人であっても、「永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるもの」に地方参政権を与えることは禁止していない。
なお、結果として、この判例は、参政権についての憲法上の保障は「日本国民のみをその対象とし」ているとし、「(外国人に地方参政権を付与する)措置を講ずるか否かは,専ら国の立法政策にかかわる事柄であって,このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」とし、特別永住者である原告の主張は退けている。

しかし、外国人の地方参政権が禁止されないと最高裁が判断したことは明らかである。

長島昭久議員の曲解判例解釈

それを踏まえて、長島議員のツイートをみる。

時の菅直人内閣は、平成7年の最高裁判決(憲法15条1項により、参政権は国民固有の権利と判示)を曲解して、外国人に地方参政権を付与する法案の国会提出を企図したのです。
今回、武蔵野市において住民投票権を外国籍住民に無条件で付与する動きは、底流にこの流れがあるのかもしれません。(長島昭久Twitter @nagashima21 2021/11/14-13:11)
武蔵野市が制定しようとしている常設型の住民投票条例に対し、再考を求める緊急街頭集会を武蔵境駅南口広場で開催。
憲法上も疑義があり、悪用リスクも高く、市政のかたちを根本から変えてしまう可能性のある重大な条例制定を、市民にきちんと説明せず拙速に行うことは、断固阻止せねばなりません。 (長島昭久Twitter @nagashima21 2021/11/14-17:39)

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外国人に地方参政権を付与するかどうかは、立法府の裁量であるとした平成7年最高裁判決に照らせば、このツイートが悪質なものであることは明らかであろう。
そもそも、住民投票条例は全く法的な問題は生じないし、地方参政権と結びつけるのも早計である。が、仮に地方参政権に結びつけたとしても、憲法・判例上の問題はない。

長島議員の主張では、平成7年最判が、外国人地方参政権付与を与えてはならない、と解するのがさも正しいかのようにしているが、それこそ「曲解」である。
また、多くの判例解説(例えば判例百選)などでは、この判例は、外国人の国政の選挙権は許されないとし(禁止説)、地方参政権は許される(許容説)としているとされる(地方許容説・部分許容説)

長島昭久の妄想と曲界

まずもって、長島議員の武蔵野市長攻撃は、明らかに常識を逸している。条例の「意図」については、松下市長が明快に答えているにも関わらず、それこそ妄想といってもよいくらいに曲解し続ける。そして、妄想に基づいた「意図」についても、それを前提とする判例理解も曲解したひどいものである。

デマッター・長島昭久の愚行は終わらない。

続編:『外国人に投票権を認める武蔵野市住民投票条例には憲法上問題ないー長島昭久氏の悪質なツイートを許すな

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