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治療とQOL - 包帯を取り替える

写真:包帯を取り替えて。リラックスしてこんな風に寝ることも。

注意:足の腫瘍の手当て・処置について書いています。その写真はありませんが、文章でも苦手な方はお控えいただくのがよいと思います。


ぼんちゃんの足は、治療が始まった頃から、すでに血が滲むような状態で、そして腫瘍が増大していくと、粘膜質の腫瘍がそのまま剥き出しになった状態でした。

治療は、点滴と投薬、そして足のガーゼを取り替えてもらうことでした。日々の状態や変化を伝え、できるだけQOL(生活の質)を保てるような治療をしていただくようにしていました。

当初は毎日でしたが、だんだんと間隔が開いて週に2、3回になり、最終的に週に1回になりました。それは状況が良くなったというわけでなく、猫が通院をストレスに感じるようになったからです。

猫にとって(まず多分どの猫も)治療はストレスフルです。ぼんちゃんも最初は唸るくらいで、耐えていましたが、その内悲鳴のような声を上げるようになりました。腫瘍がだんだんと大きくなると、包帯の取り替えの痛みが辛かったんだろうと思います。また痩せてきた体にとっては、点滴や注射の針も堪えるようでした。実際の痛みもですが、治療は怖い・痛い・嫌いという記憶でも拒否反応を起こすようでした。

私たちみんながどうしたら良いかと悩みました。

これらの薬と処置が、今のあの子を支えているのも確かでした。体重はだんだんと減りましたが、日常生活は、トイレも自分で、朝には庭で日向ぼっこをしたり、お家の中では、休み休み好きな窓辺まで歩いて行ってお昼寝をしたりしていました。体は弱り、できることもだんだんと限られるようになりましたが、それでも健康だった時と同じように、毎日の家での生活は、それなりに穏やかで心地良さそうでした。

治療と生活の質とのバランス。

猫は、人間のように、この治療は辛いけれど、これは自分の病気を直すために必要だ、などという風には考えませんので、どこでそのバランスを取るか悩みました。最初の頃と、治療の内容はほとんど変わらないのですが、だんだんとその治療が辛そうに見えました。

獣医の先生はとても慎重に包帯を取り替えてくださっていたのですが、包帯が血などで患部にこびりついてしまうので、剥がす時に痛みを感じるようで、それは本当に見ているのも辛いくらいでした。腫瘍が大きくなるにつれ、痛みが増しそして、出血量も増えました。


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病気と治療の疲れで、やつれたような表情をすることが多くなった頃。この時、すでに私も足の包帯を換え、腰の部分の処置もしていた。服を嫌がるので、着替えの時を狙って腰の処置をし、その後は、少し自由な時間を持つようにした。


ある日のこと。治療中に、あの子は振り返って、私の目をしっかりと見ながら「もうやめて!」と言うように悲鳴を上げました。その時、あぁ、もうこれ以上このペースで続けるのは無理だと思いました。

治療を1週間に1度に減らしたいと獣医さんに伝えました。獣医さんもあの子の反応を見て、治療がストレスなようなので、お家でゆっくりする時間を優先する方がよいと同意してくださいました。二週間ほど有効になる抗生剤を注射することで、通院を週に一回に減らしてみることになりました。

通院が一週間に1度になると、必然的にお家でガーゼの交換をすることが必要になります。

包帯の交換は獣医さんにしてもらっても、私がやってもすることはほぼ同じです。獣医さんの毎回の処置を眺めていましたし、多分大丈夫だとは思いましたが、あの反応を見ていたので、お家でやるのはなかなか大変だなとは思いました。さりとて、次の診察までの間、包帯を交換しないわけにはゆきません。

とにかく、通院の機会を減らしたいと思いました。たとえ命が短くなっても、辛い経験や辛い時間をできるだけ減らす方を選択しました。

さて、1回目の日。正直怖かったです。

包帯交換の時は、必要なものを全て手が届くところに用意します。猫にはエリザベスカラーをします。暴れた時を想定して、一人でするときは、体を大きなバスタオルでくるっと包んで足だけが出るようにします。それとは別に綺麗なタオルを念のために用意するとよいと思います。


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箱に一式を詰めるようにしています。慌てなくて済みます。


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左:綿棒、不織布の粘着包帯、キネシオロジー・テープ  中:カットした脱脂綿、伸縮性の粘着包帯(ピンク)、中に巻く包帯(白)ゲンタシン、ピンセット  右:滅菌パッド、アクリノールを浸した脱脂綿、絆創膏、止血剤(青キャップ)


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古い琺瑯のバットは傷口を洗う時に、受け皿のように使います。もちろんなんでも代用できます。ある程度深さのあるものがいいです。使う時は跳ね返りで汚れないように、内側に新聞紙を敷き、また大きく開いた新聞をバットの下に敷きます。


包帯をまず解きます。外側の包帯は伸縮粘着性のものなので、ハサミでそっと切ってはずしてしまいます。傷口を覆っているのは、コットンのような素材を包帯状にしたようなものです。それが一部患部にこびりついているので、そこに精製水をかけてふやけてくるのを待つのですが、素材の性質が軽く水をはじくようで、どんなにしてもどこか引き剥がす形になってしまいます。可能ならば、患部に触れないよう、慎重にハサミを使うこともあります。ハサミは使うたびに消毒します。

痛がりますし、出血も増えるので、ふと、自分が怪我をした時に、傷口に張り付かないガーゼ(滅菌パッド)というのを使ったことを思い出し、家にあったものを使うことにしました。

患部を精製水で洗います。獣医さんは、指の間まで手で綺麗に洗ってくださいましたが、私は、患部に精製水を長めにかけて洗い流すだけにしました。不用意に触って出血させてしまうのを恐れたのと、菌に感染したりするといけないと思ったからです。

洗った患部の水を脱脂綿で吸い取ります。アクリノールで患部を軽くパッティングするようにして消毒します。アクリノールは、ピンセットで取り出せば良いように準備しておきます。小さく切った脱脂綿を小瓶に詰めて、ひたひたになるようアクリノールを注いでおきます。

獣医さんのところでは、このアクリノールのプロセスはありません。それを使ったのは、精製水では流れなかった、患部周辺の血や老廃物を取り除くためです。

アクリノールで患部を消毒したら、綿棒でゲンタシン塗ります。綿棒が患部にこすれると痛むだろうと思ったので、かすかに患部から浮かすようにして患部に触らないようにしながら軟膏を広げます。

ここまでくると後一息です。

傷口に張り付きにくいという滅菌パッドで患部を包みます。軽く絆創膏で止めて、そこから、あのコットンの感触のする包帯で包みます。滅菌パッドは傷口からすこし浮く感じになりますので、出血のこともありますし、この包帯は必要です。

このあと伸縮粘着性の包帯を巻いて、しっかりと包帯を固定し、脚と包帯の境目を絆創膏で止めます。このパートは強すぎると血流を悪くしてしまうのですが、同時にゆるすぎるとせっかく巻いたガーゼと包帯が一式抜け落ちてしまうことがあります。(実際・・・治療の初期の頃は、舐めたりしてどんどんずれてしまい、何かの拍子に外れた!ということがよくありました)

この境目を止める絆創膏なのですが、糊が足の毛にしっかりと張り付くので、実は包帯を変える度に、剥がすのが一苦労でした。獣医さんも少しづつ手で皮膚を押さえながら、時間かけて剥がされるのですが、どうしても毛が抜けますし、痛がります。

これも、あるときふと、私が使っていたキネシオロジー・テープはどうだろう?と思って試してみました。すると、伸縮性のあるキネシオロジーのテープだと、毛をむしり取ることなく、着脱することができました。テープは撥水性のものを使用しています。キネシオロジー・テープなので、動いてもずれにくく剥がしやすいということで、このテープには助けられました。

病院とは違って、お家ではやっぱりリラックスするのか。私がするということで、安心するのか。時折、低く唸ることはあるものの、悲鳴をあげることもなく、また逃げようともしませんでした。

包帯の交換は、病院であれ家であれ、猫にとってはストレスフルなんですが、同時に、交換してもらうとやはり気持ち良いのは確かです。その後はいつもリラックスしてるように見えました。

また、獣医さんに患部を綺麗に洗ってもらうのは、とてもすっきりするようです。いつもは大騒ぎでも、だんだんと大人しくなります。時たま唸ることはありますが、痛いということではなさそうでした。そばにいる私は、前脚を押さえながら肩のあたりをゆっくりストロークするんですが、そういう時は、少しですが体がゆるむのがわかりました。

傷口に張り付きにくい滅菌パッドを使用したことと、キネシオロジー・テープに変えたことは大きかったように思います。この二つに気付いてからは、獣医さんのところにも、このパッドとテープを持って行くようにし、それを使っていただくようにお願いしました。

キネシオロジー・テープに気がつくまでは、包帯を交換するたびに毛が抜けるので、その場所はすっかり毛がなくなっていました(毛はまた生えて、今は元どおりです。)また、絆創膏の糊が皮膚についたままになってべとべとするので、時折、消毒用のエタノールを脱脂綿に浸して、軽く何度もなぞるようにして少しづつ糊を取るようにします。

治療開始から数ヶ月後、足先の次に、背中の腫瘍にもガーゼを貼る必要ができてしまいました。

背中にガーゼを止めるのはなかなか難しいものがありました。周辺の毛をバリカンで刈ってもらって、同じように滅菌パッドをテープで止めるようにしますが、腫瘍が膨らんでいるのもあって、とりあえず張り付きますが何かでその上から止める必要があります。

そういうわけで、ぼんちゃんは、胴着を着ることになったのですが、それについてはまた改めて書くことにします。

滅菌パッドは腫瘍のサイズに切って、そしてそのパッドを幅広のテープで止めました。幅広のテープは、メッシュ状の不織布で作られていて、通気性があり刺激が少ないけれどしっかり粘着するというものです(写真左の上から2つ目の白いテープです。)その上からクロスするように先ほどのキネシオロジー・テープで止めました。

これらの滅菌パッドやテープは、近くのドラッグストアで手に入れました。獣医さんのところでは、犬猫用の医療用品を使用されているようなので、人のものとは少し違うようですが、その時の状況に合うもので、使いやすいものであれば動物用でなくても使ってよいと思います。

現在、足の腫瘍が半分以下に小さくなり、ほとんど出血しなくなりました。包帯の交換とひどい出血は、今はほとんどありません。がんがなくなったわけではなく治療は同じように続いているのですが、それだけでも、とても楽になったと思います。