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土用の丑の日、うなぎ食べつつ息子を想う

丑の日の短歌。


なぞ、うまき  「う」の字のゆゑを 知りたがる あこの幼さ 求めるゆうげ
【どうして「うまき」? 「う」の字の由来を知りたがる、わが子の幼さを探し求める夜でした】

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夕暮れどきのスーパーは、今夜の食の準備にかかる人たちで混雑している。

この日私は、先日「京鼎樓」で食べたカシューナッツ炒めの美味な記憶が冷めないうちに作ってみようと、中華食材売り場でカシューナッツを、野菜売り場で葱としょうがを、肉売り場でもも肉をカゴに入れたところだった。

しかし、レジへ向かう途中、惣菜売り場を見て、即、今夜のメニューを翻意した。赤い派手な「うなぎ」の文字と、積み上げられた鰻重弁当。
振り返ると、さっきは素通りした魚売り場にもうなぎがずらりと並んでいるのが見えた。

そうか、今日は土用の丑の日だ。

スーパーの売り場は、季節の行事をどんぴしゃでからめてくる。年始の七草、節分の恵方巻き、ひなまつりのちらし寿司、子どもの日のちまき・・・。
子どもができてからというもの、スーパーのこうしたあの手この手には喜んで乗っかるようにしている。むしろ感謝したいくらいだ。

元来、息子はうなぎの蒲焼きをやたらと好む。好きになったきっかけは、宮島のあなご飯を食べた4歳のときだったか。少食の息子が大人用のあなご重をぺろりと平らげ「おいちい、おいちい」を連呼した。あなごが好きならとうなぎを食べさせたところ、やはり「おいちい」と相成って、以来、実家に行けば義父が手製のタレでうなぎを食べさせたし、かの有名な「野田岩」にも連れて行った。

そんな息子にとって、何はともあれうなぎを食べる土用の習慣は大歓迎だろう。

そんなわけで、食卓に並べたできあいの鰻重弁当。
惣菜売り場でついでに買った「うまき」も並べた。

「うまき」って何? 「う」って何のこと?
以前より明らかにおしゃべりの減った中二の息子が聞いてくる。
食べたらわかるよ、の意味をこめて、右手をうまきに差し向けると、ふむ、とうなずいて食した息子。

なんだ、うなぎの「う」か。単純すぎる! と面白そうに笑っていた。

笑いながらも2切れ、3切れ。

常時売っている「だし巻き卵」の出来がいいスーパーなので、うまきも少し期待して買ったのだが、よかった、やっぱりおいしかった。

でもね、息子よ。きみは数年前、かの「野田岩」ですでにうまきを食べているんだよ、と心の中でつぶやいたら、彼の記憶の中で過去と今とが結びついたらしく、「ああ、あれか、食べたことあるか」と合点したようだった。

あの夜、レジに並んだ前後の人たちのカゴには、同じくうなぎが入っていた。スーパーの季節行事推しに乗っかって、同じメニューが各家庭に並ぶ現象は、けっこう好きだなと思う。

鰻の旬は冬なれど。

土用の丑の日:
土用とは立春・立夏・立秋・立冬の前18日間のこと。
その期間中の「丑の日」を「土用の丑の日」と呼ぶ。

「丑」とは言うまでもなく十二支のうし。現在知られている十二支は年単位だが、じつは1日ずつ12日ごとにも繰り返されていて、つまり「土用の丑の日」は春夏秋冬それぞれに存在しているのだ。
が、うなぎを食べるのは夏だけ。その習慣が残ったこともあり、現代社会で「土用の丑の日」を意識するのはうなぎとの文脈において、というのが一般的だろう。

立春・立夏・立秋・立冬は旧暦で決まるため、毎年日付けが変動する。しくみ上、年によっては2回あることもあり、二度目の丑の日は「二の丑」という。2022年の土用の丑の日は7月23日と8月4日の2回。

土用の丑の日にうなぎを食す習慣が定着するきっかけを作ったのは、ご存知、江戸時代の蘭学者 平賀源内。知人の鰻屋の宣伝のために「本日、土用の丑の日」と店頭に張り紙をしたところ大繁盛したのが起源として有力な説である。

実際のところ、天然うなぎの旬は、身に脂がのる秋から冬にかけて。うなぎは水温が下がると冬眠するため、その前に脂をたくわえるのだという。養殖うなぎには旬なぞ関係なく、需要の多い夏に多数出まわるように水温がコントロールされている。

脂ののった天然うなぎを食べてみたいという願望もあるにはあるが、あのあまじょっぱく香ばしいタレの香りは、やはり真夏にこそふさわしい。






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