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【創作小説】まわれ!今川やきくん!中国の巻⑻

「でもなーーーー! いきなりステー○って、いつも行列できてるんだよなーーーー!」

「ぺっぺーーーー!」


いきなりステー○ まだ話してるのか…。
って言うより、今川焼きなのに よく知ってるな。
そもそも、今川焼きは ステーキを食べられるのか?

盗み聞きしながら、 シナプス変換のミスまでして、突っ込みどころ満載の今川ダンボ。
まあ、よい。



「誰だ!! 誰か 入り口にいるのか?」

「ななな!何だ!?あの不思議な生き物は!?」


自分たちが 倉庫に置かれた意味を 少し悲しみ混じりで 話していた月餅たち。


「ガ…ガハハのハ!バ…バレちゃあ〜しょうがないなーー!いやぁ、 何を隠そう!オレ様は 今川やきくん! 人呼んで…このところは 今川ダンボだ!」

「ペーっちゃん!」


「へ? 今川…焼き? ダン…ボ? 全く意味がわからないな。何者だか よく知らないが、春節に出てくる 獅子舞の 変形バージョンに見えたな」


「オレは でんでん太鼓だと思った」


今川ダンボ…華麗に変身しても、やっぱり太鼓‥。


「違ぁわい! オレ様は 日本のスィーツ!い・ま・が・わ!やき!くん!中は粒あん、しかも十勝産!」

「ペーーっ!」

「職人のオッチャンが 心込めて作ってくれたんだ!めちゃくちゃ旨いぜ!」


「ふ〜ん」
「ふ〜ん」


「ふ〜ん?って?  お、お前たちだって、月餅なんだろうけど、パンダさんの形をしてないじゃないか!」

「パンダの形? そんなもん、中国の月餅には ない!」


「え?そ、そうなの?」

「ぺ?ぺ?」


勝手に予想を立てていた今川ダンボ。

動物園で盗み聞きした 子供たちの話で、中国にも きっと パンダさんの月餅がいるに違いないと思いこみ、挑もうとしたが、現れたのは めちゃくちゃ強そうな まるい月餅。

しかも彼らは ステーキ…いや、ステータスを兼ね備えているらしい。


「おい、でんでん太鼓、オレたちの名前は 月(つき)と餅(もち)で “月餅 ” と読むだろう?なぜか 分かるか?」

「はい!お月さまみたいに まるい お餅だから!」


「ふ、ふ。惜しいが 少し違うな」

「カーーーーーーーーッ!残念だぜーーーー!」 



「オレたち月餅はな、中国では 春節(中国のお正月)の次に大事な伝統行事である 秋の満月、中秋節(ちゅうしゅうせつ)に 必ず お供え(おそなえ)されるお菓子なんだ」

「ふぅ〜ん。日本のお月見だんご みたいだな」


「その通りだ。オレたちの腹の中には アンコとアヒルのゆで卵が入っていて、月餅を切ると ゆで卵が 月に見える」

「なぁ〜るほど…」

「ぺぇ〜ぺ…」


「まるい月餅は  “円満(えんまん)の意味があり、スイカなどと一緒に供えて 家族仲良く円満、幸せに暮らせるよう願いながら、月餅を切り分けみんなで食べるのだ」


「カーーーーーーーーッ!そんな素晴らしい意味があるとは! 月餅スゲーーーーーーッ!」

「ぺーーーーーーッ!」


「うむ。中国の伝統ある 風習として受け継がれてきたのだが、しかし……」

「ん?」



続く

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