「珈琲屋に通ってみた」〜コロナでテイクアウトに
仕事も終わり、買い物帰りの夕方〜
自転車のカゴは米まで積んでいて大荷物だったけれど、ちょっぴり心配で寄ってしまった。
ちょくちょくお世話になっている珈琲屋は、3日前からテイクアウトのみになったのだ。
コンビニでも、ファーストフードのドライブインでも珈琲はテイクアウト出来る。
この店の珈琲は特別美味しいとは思うけれど、一瞬で出てくるわけではない。
一杯一杯、入れるのに茶道の様に丁寧にいれる珈琲屋。
待つ間、自然に客同士で生まれる会話を聞いているのも楽しい。
そんな、喫茶店ならではの珈琲屋なのに、テイクアウトの為にわざわざ出かけて外で待ってくれるお客さん…
いるのかなぁと。
テイクアウトしたところで、自転車だからどうしよう。
同じ通りにある、近くの公園で飲もうか?
そんな事を思いながらだった。
実は店内で飲めるのが最後と聞いた日も、ちょうど有休を取っていたのでワンコインのモーニングを食べに出かけた。
その日、新聞記事に載った、コーヒーフィルターで作るマスク作りを一緒にやり、とても実用的とは思えない仕上がりに笑いながら、これからの事を語る若店主にグッドラックと心の中で祈る。
(中国新聞、QUEより)
***
店に着き、自転車を置こうとすると笑顔で若店主がやってくる。
心配だから見に来たのはきっとバレバレ。
「気にかけて常連さん達が来てくれるんですよ」
と笑っている。
雨上がりの今日は、自転車を漕いだからか、夕方にも関わらず少し暑いくらいに暖かだった。
猫舌だから、外ですぐ飲める自信も無くて、アイスコーヒーを頼んだ。
「あ、アイスは初めての注文ですね」
「豆の種類はおまかせで」
「じゃあ、アイスに合うのにしますね」
そういえば、テイクアウトを始めたのに合わせて、店の前にベンチが置かれているのだ。
外のベンチに座っていると、間もなくテイクアウト用の容器に入った珈琲と一緒に、小さな皿にチョコレートも入れて差し出してくれた。
チョコレートに「あっ!」という顔をたぶんしたのを見て、若店主がニッと笑う。
ベンチより少し離れた、段差になっている玄関先に若店主も腰掛け、コロナの最新情報の噂話をする。
そこに、ツバメが飛んできた。
店の玄関上に作った巣に止まった方思うと、ひゅっと飛んで電線に止まるとのを定期的に繰り返す。
「忙しいなー」
と言うと、笑ってこんな話をしてくれた。
「ツバメは僕らを観察しているんですよ。
大丈夫な人達かな、僕らを守ってくれるかなって。
ほら、ツバメは人の出入りの多い玄関の上に巣を作るでしょ。
カラスから身を守る為に、人を利用するんです。
巣が出来る家は合格!
ツバメが巣を作る店は繁盛すると言うからこの店は大丈夫。
ああ、早くひなが出来ないかなぁ」
…そうなんだ!
今度は、ツバメの絵本でも描いてみたくなった。
(軒先にやって来たツバメ)
(電線で鳴くツバメ)
***
店の前を通る人は、挨拶をしていく人も多い。
チワワを2匹連れた散歩中の人が、そのまま玄関先に座る。
まるで、縁側の様だ。
好奇心いっぱいの犬が、近づこうとしては離れる。
可愛い!
動物は大好きだ。
若店主は、ワンワン吠えられながら
「可愛い!」
とニコニコしている。
夕方の春の風が心地良い。
客入りを少しばかり心配して覗きに行ったところが、珈琲を飲む間にすっかり癒されて心が晴れやかになった。
何の不安も心配も要らないと、ベンチに座って珈琲を飲むだけで私の方が励まされるようだ。
またテイクアウトに行こう。
文章が誰かの心に響いて、それが対価になって、それを元手にさらに経験を積んで文章など色々な表現で還元出来たらと思い続けています。 サポートお待ちしております♪