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カワセミの体型、美しい色彩の秘密

「空飛ぶ宝石」と呼ばれ野鳥の中でもひときわ高い人気を誇るカワセミ。美しい迫力ある写真満載のビジュアルブック『にっぽんのカワセミ』が4月9日に発売となりました。今回は本書PART2の「カワセミペディア」から、カワセミの体型と美しい色彩の秘密を紹介します。

カワセミペディア

●特殊な形状には理由がある
 カワセミのサイズは、スズメ(全長約14.5cm)より少し大きい全長約17cm。しかし両者の差は、カワセミの体の4分の1ほどを占める嘴峰長(※1)3.3 ~ 4.3cmという長いくちばしによるところが大きく、体自体は実質、スズメと同じくらいと思っていいかもしれません。体重は約35g、翼長は約7cm、翼開長は約25cmで、日本に生息しているカワセミ科の鳥の中では最小種です。体全体のバランスは他の鳥に比べるとかなり独特で、体に比して長いくちばしとは逆に、くび(頸)や足、尾は短く、ポーズにもよりますが、全体の比率から見ると三頭身に近い頭でっかちのマンガキャラクターを思わせる、どことなくユーモラスな風貌をしています。
 なお、美しい羽色と並んで外見上のポイントとなっている長く鋭い流線型のくちばしは、その役割もサイズ以上に大きいもの。水中の小魚などの獲物めがけ、高速スピードで一直線にダイブ、かつ、土崖などのしっかりとした地盤に横穴式の巣穴を掘る際のツルハシの役目をも果たす、カワセミの生態を支える重要装備なのです。
 空中から、さらに抵抗の大きな水中へのダイブを生業とするカワセミは、一連の動作で受ける抵抗を最小限に抑えるため、体の突起を極力廃するべく進化を遂げました。くちばしに加え、大きな頭、短い頸、そして短い足や尾は、ダイビング時に有効な弾丸形や流線形を保つためにカワセミが獲得してきた形状だったのです(※2)。
 以下に、部位ごとの色、形状などの特徴を挙げておきますので、前・後章の写真などで確認してみてください。


※1 くちばし(嘴)の付け根から先までの長さ。

※ 2 かつて最高速度300kmを目指した500 系新幹線の先端部の形(ノースデザイン)は空気と水の抵抗を非常に受けにくいこのカワセミのくちばしの形状をモチーフに開発された。


●部位ごとの色彩と特徴
……一般にコバルトブルーと表現される見た者を魅了する羽色は、構造色によるもの。色素ではなく羽の微細な構造が光の干渉を生み、光沢ある美しい色を反射しているので、時間帯、飛翔時など、光線の具合や状態により見え方は多様に変化する。また色や模様は場所により細かく異なり、たとえば肩羽、雨覆、風切は緑色で、雨覆にはコバルトブルーの斑点、風切には線がある。
……上尾筒にかけて縦に走る鮮やかなコバルトブルーが目立つ。
頭、額(ひたい)……羽や背部分と同様のコバルトブルーに、水色の小斑がある。
……大きく黒目勝ち。ダイビングの際、水中では他の水鳥と同様に瞬膜で眼球を保護しており、水中から飛び出した瞬間をとらえた写真などでは瞬膜を確認できる(※3)。

※3 ほかにも捕った獲物を木の枝に叩きつけたり、羽づくろいの際などさまざまな場面で瞬膜は見られる。写真上が瞬膜の出た状態で、下は目を開けた通常の状態。

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くちばし……オスは上下ともに黒く、メスは下くちばしが橙色(※4)。
頬の後ろ、喉、顎(あご)……白色。

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頬、胸、腹……成鳥は鮮やかなオレンジ色。
……短く、橙色(幼鳥は黒っぽい)。爪の色は黒い個体が多い。あしゆび(趾)は3 趾のうち2 趾が基部で癒着した合ごう趾し 足そくで、歩行することは少なく得意でもないらしい。
しかし巣穴掘りの際は、掘った土を外へかき出すジョレンのような働きをする。

※カワセミの幼鳥は他の多くの鳥と同様に、生まれた年の秋に部分換羽を行い、鮮やかな雨覆や胸などのオレンジ色の羽毛はこのタイミングで獲得される。この第1回冬羽への換羽により、冬には成鳥と見分けることが難しくなる。


【目次】

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内容紹介はこちら

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『にっぽんのカワセミ』
矢野亮 監修
ポンプラボ 編集
ページ数 112
判型 A5
本体価格 1,650円(税込)
出版社 カンゼン
発売日 2021年4月9日

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