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『こども地政学』を一部無料公開!

ロシア、ウクライナの情勢が不安定になり、戦争に発展、いまも緊迫した状況が続いています。連日、TVでの報道もされていますが、そもそもなぜ戦争が起こってしまったのでしょうか。

本書、『こども地政学』は地政学の観点から、世界で起こっていることを紐解いていくことで「なぜ?」がわかるようになる本です。

この記事では、本書のP32-33「ところで「地政学」ってなんだ?」から、P20~21「世界の国々にはさまざまなグループがある」や、P50-57「「ランドパワー」と「シーパワー」の特徴とは?」や「「ハートランド」と「リムランド」の違いを知ろう」の文章をまるごと掲載。
「地政学」を通して世界を見ることで「なぜ?」が「なるほど!」に変わるはずです。

『こども地政学』

書名:こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本
監修:船橋洋一
著:バウンド
イラスト:瀬川尚志
出版年月日:2021/03/15
ISBN:9784862555908
判型:A5 ページ数:128ページ
定価:1,430円(税込)

P32-33 ところで「地政学」ってなんだ?

■ところで「地政学」ってなんだ?

<地政学は「地理的条件」に着目する>

地政学は英語で「ジオポリティクス(Geopolitics)」といいます。「Geo」は「地球」や「大地」という意味の接頭語で、たとえば地理学は英語で「ジオグラフィー(Geography)といいます。「ポリティクス(Politics)は「政治学」という意味です。

地政学は国際情勢の変化の最も重要な決定要因を「地理的条件」とするのが最大の特徴です。地理的条件を簡単にいえば、「どこにあるか」です。そこに着目して、国がどう行動するか、国同士の関係がどう行動するか、国同士の関係がどう変化するかをさまざまな側面から考えていきます。

(本書P32~33より抜粋)

P20-21 世界の国々にはさまざまなグループがある

■世界の国々には様々なグループがある

<各国は複雑な協力関係を築いている>

世界の国々は、軍事面で協力するグループや政治・経済面で協力するグループなど目的に応じてさまざまなグループをつくっています。

世界平和の実現をおもな目的とするグループの代表格は、世界の193カ国が加盟している、「国際連合(国連)」です。軍事的なグループもあります。その代表格は、民主主義国家である米英が中心になって生まれたNATO(北大西洋条約機構)です。

また、NATO非加盟国のなかでもアメリカにとって戦略的に重要な13カ国が同盟を結ぶMNNA(非NATO主要国同盟)もあります。なお、冷戦時代にはNATOの対抗勢力として社会主義国、ソ連を中心にしてワルシャワ条約機構がありましたが、ソ連崩壊で消滅しています。

政治・経済面で協力するグループでは、日米英など先進7カ国が参加するG7(先進国首脳会議)が有名です(かつてはロシアも含めてG8でしたが、2021年2月現在、ロシアは参加停止中)。EU(欧州連合)やASEAN(東南アジア諸国連合)などの地域連合もあります。

世界の国々は、政治的には対立しても経済面では協力しないなど、それぞれの事情を踏まえて複雑に絡み合うように協力関係を結んでいます。

■世界のおもなグループ

・国際連合(国連) 日本参加
1945年設立。国際平和と安全の維持(安全保障)、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現を主な目的とする。
おもな加盟国:アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国、日本など全193カ国

・NATO(北大西洋条約機構) 日本不参加
1949年設立。欧米の資本主義国による政府間軍事同盟のこと。
おもな加盟国:アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、スペイン、トルコなど全30カ国

・MNNA(非NATO主要国同盟) 日本参加
アメリカによって指定されたアメリカ軍と戦略的に重要な関係にあるがNATOの加盟国ではない国との同盟のこと。
おもな加盟国:日本、オーストラリア、エジプト、イスラエル、韓国、台湾など全18ヵ国

・ワルシャワ条約機構 かつてなNATOと対立。いまはもうない!
1955年設立。ソ連を中心に東欧の社会主義国が結成した軍事同盟のこと。冷戦終結にともない1991年に消滅した
加盟していた国:ソ連、ブルガリア、ルーマニア、東ドイツ、ハンガリー、ポーランド、チェコスロバキア

<考えてみよう>

■世界にはまだまだたくさんのグループがある。どんなグループがあるかだけでなく、どんな目的のグループかまで調べてみよう


P50-51 「ランドパワー」と「シーパワー」の特徴とは?

■「ランドパワー」と「シーパワー」の特徴とは?

<シーパワーは貿易、ランドパワーは侵略>

島国である日本では、自分たちの土地を耕し、海で魚を獲って生活してきました。食料や資源が足りなければ、いまの日本がそうであるように貿易でその不足を補ってきました。たとえば、19世紀にイギリスが圧倒的な武力を武器に中国に対してアヘン戦争を起こしたり、ペリーが黒船で浦賀にやって来てアメリカが日本に開国を求めたのも自由貿易をしたかったからです。

しかし、陸続きで国境があるランドパワーは、食料や資源が不足すれば隣の国へ出向いて奪うことが可能です。たとえば、チンギス・ハンで有名なモンゴル帝国(元)は、西は現在のトルコ、南はアフガニスタン、東は中国・朝鮮半島までユーラシア大陸のほとんどを領土にしました。モンゴルの土地は農業に向かず、資源もそれほどありません。

食料や資源が足りなくなると新たな土地へ食料や資源を求めて次々に征服していき、ついにはヨーロッパまで領土を拡大しました。海を越えて日本に攻め込んできた「元寇」もその一環でした。
なお、ランドパワーとシーパワーは考え方が異なるため、争いになることが多いとされています。

■「ランドパワー」と「シーパワー」の特徴

<ランドパワーの国>
ロシア、中国、ドイツ、フランス

<おもな特徴>
・領土を侵略される危険性が高い
・足りない資源は周辺に奪いにいく
・農業、鉱工業が得意
・伝統的に陸軍が強い
・港を確保して、シーパワーのような海上輸送手段を得ようとする

<シーパワーの国>
日本、イギリス、アメリカ

<おもな特徴>
・領土を侵略される危険性が低い
・足りない資源は貿易で補おうとする
・漁業、海外との貿易が得意
・伝統的に海軍が強い
・海の要所をおさえて、ランドパワーの海洋進出

<考えてみよう>

■元寇があった鎌倉時代の日本人だったとして、もし飢饉などで食料が足りなくなったときに、わざわざ海を越えて食料を奪いに行こうとする?


P56-57 「ハートランド」と「リムランド」の違いを知ろう

「ハートランド」と「リムランド」の違いを知ろう

<リムランドは紛争地帯になりやすい>

ハートランドは現在のロシアを中心とする領域です。冬は寒くて雨が少なく、荒れ地が多いので農業に適さない土地です。そのため、古くから人口は少なく、世界的な大都市はありません。

一方、リムランドは温暖な気候で豊かな土地が広がっています。また、海があり、外国との貿易が盛んなため、海沿いには、上海、香港、バンコク、リスボン、パリといった名だたる大都市が集まっています。中国のようにリムランドに位置するランドパワーもありますが、「ランドパワーとシーパワー」との関係をみると、「ハートランドに位置するランドパワー」、「リムランドに位置するシーパワー」と大ざっぱに分類できることがわかります。

別ページで説明したようにランドパワーとシーパワーは対立しやすい関係にあります。厳しい環境のハートランドに位置するランドパワーは「豊かな土地まで領土を拡大しよう」「海に出たい」とリムランドへ出ようとします。

一方のシーパワーはそれを食い止めようとします。それゆえ、リムランドやマージナルシーは両者が衝突する場所になりやすく、歴史的にも多くの戦争が起こっているのです。

■ハートランドとリムランドの特徴

<ハートランドの特徴>
・寒冷な気候で農業に向いていない
・人口が少なく、大都市が少ない
・ランドパワーとシーパワーの衝突は少ない

<リムランドの特徴>
・温暖な気候で農業に向いている
・人口が多く、大都市が多い
・ランドパワーとシーパワーが衝突する

<考えてみよう>

過去のおもな戦争や紛争がどこで起こったのかを調べてみよう

■監修者

船橋洋一(ふなばし・よういち)
(一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)

1944年北京生まれ。法学博士。東京大学卒。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長を経て、朝日新聞社主筆。
その後、独立系民間シンクタンクを立ち上げ、福島原発事故検証(民間事故調)、新型コロナ対応検証(民間臨調)の各報告書を刊行。2011年から月刊『文藝春秋』で「新世界地政学」を連載。
『21世紀 地政学入門』(文春新書、2016年)、『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』(中公新書、2019年)、『地経学とは何か』(文春新書、2020年)ほか著書多数。英国際戦略研究所(IISS)評議員。


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