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ドイツのコワーキング事情に見るローカルコワーキングの課題とは:今日のアウトテイク#241(2024-07-16)

<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・いずれKindle本にまとめる予定


#今日のBGM

#今日のコトバ

"ぼくは、今、議論に関わらないように生きている。 たとえ1+1=5と言われても、それでいい、勝手にやってくれ。"
(キアヌ・リーブス)

#規模を超えたマインドセットであるということ

ローカルコワーキングを考えるとき、それがインディーであることが理想。なので、Cat Johnson氏のこの言葉は時々、反芻しておきたい。

インディーのコワーキングスペースは中小規模のブランドが多いが、インディーというのは規模を超えたマインドセットだ。 音楽と同じように、インディー・コワーキングスペースであることの多くは、メンバー、文化、仕事の未来、地域との関わりをめぐる考え方(マインドセット)だ。

#ドイツのコワーキング事情に見るローカルコワーキングの課題とは

このところ、海外のコワーキング事情のトピックスが多いが、今日はドイツだ。ご多分に漏れずドイツでもコワーキングは活況を呈している反面、課題もあるという記事が流れてきた。

ひとつはこれ。

もうひとつは、世界のコワーキング関連のメディアとしては老舗のDeskmagのこれ。

この2つの記事から、要点をかいつまんで共有する。

ドイツのコワーキング数は近年爆発的に伸びており、現時点で978箇所。2020年以降、スペース数はなんと41.5%増(!)。大都市のみならず500以上の都市にコワーキングスペースがあり、ベルリン、ハンブルク、ヘッセンは人口あたりのスペース数で群を抜いている。

注釈しておくと、ここでいうコワーキングは不特定多数のワーカーが混在して利用する「共用ワークスペース」のことで、特定の契約者だけに利用を許すシェアオフィスは含まれていないと察する。

なお、日本には現在、3,000箇所のコワーキングがある(とされている)が、その中には厳密にはコワーキングとは言えない施設も含まれている気配があるので要注意。

46%のスペースが好調だと答えているが、稼働率を平均すると、2023年に比べて大幅に増加しており、現在、コワーキングスペース全体の3分の2近くが稼働している。
ただし、小規模な場所より大規模な場所の方が利用率が高い。500平方メートル以上のコワーキングスペースの平均稼働率は約75%。 一方、小規模なスペースでは約50%にとどまっている。
しかし、その500平方メートル以下のスペースが全体の70%を占めている。

これは、世界共通の傾向かと思う。そもそも、小規模なコワーキングは地方や郊外に開設される。その地域の人口が少ないために、利用者のパイが小さくなるのは当然だ。

それより注目したいのは、むしろ小規模のスペースが70%を占めているという事実。毎度同じことを書いているが、これもコワーキングの地方分散と郊外型コワーキングの普及の現れだと思われる。

(出典:spacebring.com)

そのうえで、こういう意見もある。

ベルリンには300を超えるスペースがあるが、ハンブルクという小さな都市には50ほどしかない。ほとんどのコワーキングスペースはベルリンのような大都市にあり、スタートアップ企業はベンチャーキャピタルを求めている。大々的なスタートアップの宣伝はベルリンに集中しており、小さな町にとっては問題が生じている。彼らはベルリンの成功を再現したいと考えているが、人口が数千人しかいない町では難しい。
(Christian Cordes氏:ドイツコワーキング連盟)

先日も書いたが、コワーキングはスタートアップを育成する場でもあるから、事業資金を調達しやすい大都市のコワーキングにスタートアップが集中するのは判る。その点、ローカルのコワーキングが劣勢であることは確かだ。

ただ、コワーキングのユーザーはなにもスタートアップに限らない。むしろ、ローカルコワーキングにとってはスモールビジネスをするコワーカーを支援することのほうが意味と意義があると思う。

ちょっと脱線するが、ドイツには「ドイツコワーキング連盟」なる団体があるんですね。

サイトを見るとこうある。

私たちの使命:
ドイツコワーキング連盟は、コワーキングの5つのコアバリューに従って運営しています。

・オープン性
・アクセシビリティ
・持続可能性
・コミュニティ
・コラボレーション


コワーキング・カルチャーの文脈で人々をつなぎ、刺激し、情報を与え、代表し、資格を与える。 ドイツ語圏の人々の利益を代表する存在であると自負しています。

いつも出す「コワーキングの5大価値」がここでもしっかり掲げられている。

脱線ついでに、コワーキング協同組合で開発して、ただいまβテスト中のアプリの「cosac」という名前は、この5つの価値の頭文字を入れ替えて命名した。

話を戻す。

ローカルコワーキングの利用者が少ない理由として、こういう意見もある。

大都市以外でのコワーキングのメリットを説明することが課題となっている。なぜ自宅のオフィスを離れる必要があるのか理解できない人が多い。
私たちのスペースでは、ソーシャルワーカー、クリエーター、プログラマー、起業家などが集まっており、このコラボレーションがポジティブな影響を与えることを目の当たりにしているが、このようなメリットを従来の企業に納得させることは依然として難しい。
(Jonte Schlagner氏:Frohet Schaffen)

コラボレーションはコワーキングがもたらしてくれる価値の中でも最も重要なもののひとつだ。世の中に一人で完結する仕事はない。誰かと組むことでコトが成される。コワーキングはその機会を与えてくれる、あるいはゲットする最良の環境だ。それは体験してはじめて理解できる。なので、コワーキングの体験イベントはとても大事。

では、どういうルートで利用者はコワーキングにやって来るのか。そうだろうと思ったが、やっぱり口コミが80%で最も多い。次にSEOないしはSMM、つまりオンラインでの施策による誘導が50%。でそれにコミュニティやイベントが続いて30%となってる。

しかし、口コミの源泉になっているのは、案外コミュニティやイベントではなかろうか。それに参加した人の口からそのコワーキングのことが伝えられ、興味を持ったワーカーが(事前に検索するにしろしないにしろ)やって来る。

つまり、リアルなカツドウなしでは口コミも起こらないし人もやって来ない、ということだと思うのだが。

一方、スペースの経営上の課題として、まず挙げられているのが、家賃と光熱費の高騰だ。が、

これらを会員に全額転嫁できていないのだろう。 ここ数ヶ月の状況を見ると、稼働率の低い小規模なコワーキングスペースは、値上げによって会員を失いたくないため、特にこの影響を受けているようだ。

ここは非常に悩ましい。日本も、コワーキングによっては利用料金の改定(値上げ)の動きがチラホラ見えはじめているが、依然として安価なところで頑張っている(我慢している)スペースが多いのが現状だろう。だが、単価が上がらないと収益性も改善されない。

ただ、コワーキングの収益モデルは利用料金だけではない。コワーカーでコラボを組んでスペースとして仕事を受託することも全然ありなのだ。つまり、コワーキングはコラボを組むメンバーが集まるハブであって、そのメンバーで協働することでスペースも収益を上げられるということ。これも何度も書いてる。

ドイツでもそれぐらいのことはやってると思うのだが、ここでは専ら場所代しか議論されていない。まさか、やってないのかな?だとしたら、それは迂闊。

だからかな、「なぜドイツのコワーキングスペースは収益性が低いのか?」という問いに対して、以下の3つの指標があるとしているが、スペースのことにしか言及していない。

第一に、より多くのコワーキングスペースが非営利企業として運営されている。 これは利益を上げることを妨げるものではないが、それが第一の目的ではないことは明らかだ。

第二に、(前述の通り)ドイツの多くのコワーキングスペースは比較的小規模であるため、キャパシティや柔軟性だけでなくコスト優位性も制限される可能性がある。
小規模スペースには、空きスペースをコワーキングスペースとして転貸する営利企業も多く含まれる。このような場合、スペースが主な収益源ではなく、自立を主な目的としていることが多い。

第三に、スペースの規模は収容人数だけでなく、提供するサービスの多様性にも影響する。多くのコワーキングスペースでは、個々のデスクのレンタルが中心的な収入源となっている。過去には、主に個室オフィスがそうであった。現在では、ミーティングスペースやイベントスペースが特に求められている。しかし、小規模なコワーキングスペースはスペースが限られているため、これらを提供する可能性は低い。

とまあ、消化不良な調査結果に拍子抜けしたのだが、一応、海外のこうした情報を参考にしつつ、急激な成長を狙わず(スタートアップではないので)、地道に、愚直に、丁寧に日本ならではのコワーキングを粛々と実行していく、それに尽きると改めて思った次第。

ということで、今日はこのへんで。

(カバー画像:Maheshkumar Painam


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