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不登校になってしまうのではなく、学校に行かないことを自ら選べばいい~感受性が強い長女の話~

長女は中3の11月から、卒業式を除いて1日も学校に行かなかった。行けたら行くのではなく、もう行かないと決めた。私と娘は担任の先生に自分たちの考えをそのまま話した。小6の時も病欠ではなく何日か休み、この時も度々休むことになる理由を担任の先生にそのまま話した。今は通信高校に通い、単位さえ取れれば、行ったり行かなかったり自由な生活をしている。

長女が1歳から通い始めた保育園で、保育士さんに私は言われた。「お子さんは感受性が強すぎるので、育て方によっては良くも悪くもなりますよ。」私にとっては初めての子供だし、私も多くの事を過剰な刺激として受け取る子供時代を過ごしたので、保育士さんに言われても特別な事とは思わなかった。ただ、赤ちゃんの時から長女にはごまかしが効かないと感じてきたので、取り繕わず接していこうとは思っていた。

小学校に入学すると、今度は長女が私に言った。「私だけ学校に似合わない顔をしている!」何度も言っていた。小2ではクラスの給食の完食を目指すような、優等生のエイエイオー的な先生が担任になり、相性が悪かったらしく長女は辛そうだった。ちなみにそれまでは調理法によっては食べられていた人参が、一切食べられなくなってしまった。

”大人が自分の力を誇示するためや自分の都合のために、エラそうに発言したり子供をコントロールする”ことに気づいた長女は、ほとんどの大人は信用できないと小学校低学年で悟ったそうだ。

小4の担任の先生には、長女はピン来たらしく「パパとかママが言って事とと同じ事を先生も言ってた!」と報告してくれた。自分の親と同じような発言をする大人に初めて出会ったかのようだった。私は個人面談の時に、学校について思う事、長女という人間、その今後について思うことを話すと、先生は言ってくれた。「彼女はいつも何かをイメージしていますねー。多くの人には学校は必要だと思います。しかしこの先、例えば中学校で1、2年間学校に行かないことがあったとしても、長い人生の中で彼女にとってはその期間学校は必要ないという事だと思います。」

学校に通っている方が長女にとってマイナスになると判断したら、不登校を自ら選ぼうと考えていた私は、それを肯定してもらい心強かった。

小5小6の女の子の世界は厳しいものになってくる。ちょっと何かが違うと周りから思われていた長女は、妬みや噂の対象になり、詳しくは未だに私も教えてもらっていないが、相当辛かったらしい。小6のある早朝、寝ている私に長女からメールが来た。「勝手に涙が出てきて止まらないの。」私が「学校休む?」と返すと、「うん」と帰ってきた。来る時が来ただけという感じだった。先生にもそのまま説明した。そして長女のペースで行ったり行かなかったりしていた。この時期長女のクラスの、ある思春期に入りかけている男の子が音楽の時間にピアノの下に潜り込んで発狂したり、という事があったそうで、長女は言っていた。「私だって休みたい時に学校を休めなかったら、あんな風に発狂したくなるよ。」

長女は美容に関して早くに興味を持ち、小2から留守番中によく化粧の練習をし、小4からは外出時も化粧をしていた。中2で吹っ切れて目覚めた彼女は、外出時は最低でも大学生に見られた。この頃一人で銀座に出かけたりして、大人として扱われることを楽しんでいた。もう学校では、女子にも男子にも先生にも、皆に目を付けられていたと長女は言う。そして中3のある日、長女は私に言った。「学校で服を何枚着ても震えが止まらなくて、先生の顔が全く見られない。」この日から中学校は一切行かないということで、お互い合意した。その日が来ただけだった。

いつも長女の事を学校の先生に話すときは、私の力の見せどころという感じで、学校に向かうのも全く苦ではなかった。

その人が今何を感じるか、何をしたい衝動に駆られているか、それは世の中の区切りとは関係なく起こる。結局長女は義務教育の大部分は学校に通ったが、親は子に義務教育を受けさせる義務がある前に、子を守る義務があると思う。やはり不登校だった私の弟が昔言っていた。「学校が終わって外に出て空を見ると、牢獄から解放されたような気分だったよ。」多くの人が従っているものに対してどう思うかは、人それぞれだ。親が周りへの体裁や、狭い世界の経験論や、子供のためと履き違えた自分の安心感のために、その子の感性を無視するのは、社会的に無力な子供を大いに苦しめることになると思う。

私もかつては自分に一杯一杯で、子供を力で押さえつけて来たことも沢山あった。もっと早くに気付きが得られていたら、と思うことも沢山ある。その思いも含め、いつでも親は、子供から感じること、考えること、覚悟することを放棄してならないと思う。


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