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かんやん
2022年7月2日 22:55
不況のせいで首を切られ、あれこれ足掻いてはみたものの、結局東京で生活を続けることを断念し、ぼくは帰郷することにした。地方では仕事が少ないと頭でわかっていても、なんだかもう都会暮らしに疲れ果ててしまったのである。 控えめに言うと、三十半ばの長男が実家暮らしに戻ることについて、両親はとくに歓迎しなかった。するわけがない。地元の友だちとは一切連絡を取らなかった。さすがに部屋に閉じ籠もっているわけに
2022年7月7日 17:56
ぼくはしだいに佐々木さんから目が離せなくなっていった。牧さんも、そうだったと思う。それは他の利用者さんを蔑ろにすることではむろんないけれど、重要性において劣るというのか、もはや関心が持てなくなってしまったのだ。なんだろう、仕事に慣れてきて、日々の業務をテキパキと片付けてゆくことができるようになったせいかもしれなかった。 週に二回、朝夕の送迎で佐々木家を訪れるとき、中年の女性が見送り、出迎えに