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「性弱説」から始める中小企業の組織作り

◾️まとめ
地方の中小企業の組織運営では、人材のマーケットボリュームが都会と違うことから、人材の「弱さ」≒「歪さ」とどう向き合いながらインクルーシブな組織をどう設計していくかが重要だ。

この1年で48個の施策を地方の中小企業で導入して、思ったこと

鹿児島で111年続く会社の4代目として2022年から第4創業と称して会社の大改革を始めました。去年の4月にミギウデとして入社してくれたCHROの池田亮平と一緒にちょうど1年間走ったところです。池田くんのnote↓

1年で行った施策を挙げると、なんと48個ありました。

KOBIRAが2022年9月から2023年4月までやったこと、その1
KOBIRAが2022年9月から2023年4月までやったこと、その2

並べてみてみて「ちょっとやりすぎた」かなと思うところもあるし、「こんだけ覚悟もってスピード感持ってやんなきゃだめだよな。」とも思うところもあります(とはいえやり遂げたチームはまじ最高)。

そんな中で、地方中小企業では組織を作る際に都心の大企業やスタートアップとどういう風に違ったアプローチが必要なのか感じたことを書いてみます。

「性弱説」と弱さの定義

先日、前述のCHROの池田くんと話していた時に出てきた、「性弱説」という言葉があります。「人は、悪いものではない、弱いもの」だから、間違いを起こしたり、いろんな組織の問題が発生する。人の性(さが)である弱さと向き合い、前提にしつつ組織を自分たちは作っていけないといけないかもね、というもの。

ここでいう「弱さ」というのは、単に能力が低いとか、ストレス耐性が低いという意味ではなく、パラメーターのバランスが取れていないという意味かと思ってます。大企業や都心のイケイケスタートアップに集まる能力値が綺麗な円に近い人材ではなく、「これは得意だけど、これは出来ない」、「個人の事情から、こういうふうに働かせてほしい」みたいに癖がある、とも言い換えられるかと思っています。

地方中小企業の組織作りの筋として、その弱さや歪みを「共に抱きしめられる」組織がこれからは必要だというのがこの記事での主題です。

性善説 vs 性悪説、性強説 vs 性弱説

人は良いか悪いか、という性善説、性悪説と重ねると以下のグラフで企業から見た人の捉え方を整理できます。

人の捉え方の4象限

「性悪説的」組織作り

過去を振り返ると、いわゆる1960年代の経営者の労働者観は「労働者は仕事に意欲はなく、サボったり、手を抜いたりしようとする。だから、それを賃金などの外的報酬で動機づけしつつ限界まで働かせないといけない」というものでした。

人は「サボるし手を抜くもの」という意味で「性悪説」に基づいています。その後の研究で人は機械じゃないから性悪説的なマネジメントをする組織からはベストな結果は出ない事が分かり、人を単純には割り切れない存在として認識して組織を作ろうというアプローチになってきました。

とはいえ、この「性悪説」的な組織コンセプトが今でも残っている業界や会社はとても多いです。ノルマ制、罵声と強制がはびこる組織、数値のみの管理などなど、人間を機械の部品と考えて「効率的に使い切る」という考え方で組織の仕組みが作られている中小企業は未だ多いのではないでしょうか。

外資系やスタートアップの「性強説」的組織作り

都心のイケイケ企業(大企業やスタートアップ、外資系)と、地方中小企業の組織作りにおける違いは、「強さ」と「弱さ」をどう取り扱うかという事と考えてます。人材マーケットの質とボリュームがある都心ではバリバリにキャリアを作ってきて適応力が高く世界中どこでも職を得られるような強いハイスペック人材を前提にした組織設計が出来ます。限界まで組織にコミットしてもらい、会社の成長に最大に貢献して成長してもらう。そんなできる「強い」人向けの組織作りが可能です。

もちろん会社ごとに組織戦略は異なりますが、都心の大企業やイケイケのスタートアップでは、「強い」人材、どこでも適応が可能ないわゆるハイスペック人材を求めているし、そういう人らが集まった組織であるというのは大枠そうなのかなと思っています。

地方中小企業の「性弱説」的な組織作り

人材マーケットの質とボリューム部分が小さい地方の中小企業だと、ついて来れるやつだけついてこいという「性強説」の考えで仕組みを作りにくいです。そこで、「弱い」ことを前提とした組織構造を作ってマネジメントが必要だと思っています。

また、再度説明すると、ここでいう「弱さ」は「能力のなさ」というよりも「能力の形の歪さ」と思ってます。真四角やまん丸ではなくで、角が出ていたり、変な形のレゴを想像してもらえればいいんですが、それをはめられる余白の設計が組織を考えるときに必要だと思っています。

うちの会社は、新しくMVVを掲げてから、面白い人たちの応募が増えてきたように感じます。それはMVVだけというよりも、同時に社内規定を全て改定し、多様な働き方を許す組織にできたということも大きく貢献していると感じています。

今回の改訂でうちの会社はフルリモートの制度を作ったり、事業部によりますがフレックスにしたり、副業OKにしたり、子育てや介護休暇の制度を整えたりと就業形態の幅も大きくしました。またベーシックインカム的な考えで、子育て手当や、KOBIRA奨学金、住宅手当の拡充(家賃だけでなく住宅ローン含めて6割補助ですし、ADDressなどの多拠点居住サービスも対象)、ウェルビーイング手当などの福利厚生なども充実させました。そういう受け入れの働き方の幅を広げたことが採用状況の改善に繋がってると思います。まずは制度による幅の拡張が、「弱さ」を受け止められる性弱説的な組織作りの一歩かと感じてます。

あらゆるライフステージとライフスタイルを受け入れる 懐の深い組織になる

もちろん会社のリソースには限りがあるので、出来る幅には限界もありますし、キレイゴトだけではありません。自分たちが大きく変化していく中で、それについて行けない人材をどうするかという事への議論にまだ結論は出ていません。

ただその中でも可能な限り対話しながら理想に近づく努力をしていくことが、社内の関係性を高め、設定した2032年に向けたビジョン3「あらゆるライフステージとライフスタイルを受け入れる 懐の深い組織になる」に近づくことになるかなと思っています。

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