【アトツギ大全#003】事業承継の3要素 / 形式 / 経営 / ソース
昨日、講演で一般的に”事業承継”と呼ばれるものには3要素あって、通常言われているのは「形式」と「経営」の承継だけど、「ソース」ちゃんと継がせないといけなくて、それって非ロジカルなプロセスだよね、という話をしました。補足も含めてnoteにまとめます。
「形式」の承継
形式の承継は株式とか肩書きとかの承継です。社長にとりあえずしちゃうとか株を一部あげたら自覚が生まれて、行動が変わって、社内の見方も変わると言うのは継がせる側からしたら期待することですが、中身が伴わないと意味ない。中身とは「経営の3要素」の承継です。
「経営」の承継
存在目的
経営とは「存在目的(理念)」、「組織」、「戦略」の3要素があり、それが相互に関係してると言えます。 存在目的は、存在意義や理念やミッションやパーパスみたいにも言い換えられますが、「あなたの会社がある世界とない世界では何が違うのか?」です。
昔は会社の存在目的は「利益を稼ぐ」というのがメインではあったのですが、最近のトレンドは「理念経営」と言ってここをちゃんと定義したほうが良いよねと言うトレンドになってます(利益はこの理念を実現するための燃料みたいな位置付け)。
組織
組織とは、どうやってその存在目的を達成するのかです。超絶ブラックでもいいし、人に優しくてもいいし、法に触れない限りそこに制約はないのですが、どういう組織で運営したら最短最速で存在目的の達成ができるか?によってデザインされます。
これも昔は人は簡単に採用できて取り替えがきいたので「可能な限りコストをかけない」と言うのが一般的だったのですが、こちらも最近は人的資本経営といって人の成長と可能性にしっかり投資していきましょう、社員のウェルビーイングも大切にしようと言うのがトレンドです。
戦略
これは今も昔も同じ。他社に対してどのように競争優位を作るかになります。
経営の3要所の承継とは、「存在目的」「組織」「戦略」の設計と実行を承継社が引き継いで行うようになることです。
「ソース」の承継
「ソース」とは集団の中で何かを成し遂げようとする時にエネルギーの中心となる人とリーダーシップ論や組織開発の中で使われる用語です。イメージしやすいのは、softbankの孫さんや楽天の三木谷さん。彼らは組織の中心にいて、すべての人が彼らを見ています。組織の大小関わらずソースは存在してて、例えば町工場で若社長に承継しても、社員は皆、先代の会長の顔色見て、お伺い立ててる見たいな状況ってありますよね。
「組織の中心(ソース)をどう譲り渡すか?」は、非ロジカルなプロセスなので多くの優秀な経営者がここで躓きます。基本的にロジカルな営みの経営とは使うスキルセットが違うからです。
この組織におけるソースの承継が大事だよねというのは、自分自身の体験があるからです。私は社長には2010年になったのですが(形式の承継)、その時点では「経営」の承継が行われずにあくまでも先代の方針の中なので、特にやる気が起きずに別で会社作ってやってました。その後、コロナ禍での会社の混乱を経て、右腕の採用から経営の3要素を自分でグリップして会社を変える第4創業のプロジェクトをスタートしました。ただこの時点でも「ソースの承継」は起こっていませんでした。
ソースを承継したと言うその瞬間は今でも覚えてます。その際の経験は以下の記事にまとめていますので、ご覧ください。
事業承継で大切なこと
事業承継は、「形式」と「経営」の承継だけでは終わらない、その先に「ソースの承継」があると言うことを意識してもらえたらと思います。ソースの承継はその組織の過去と未来のすべての100%を手渡すプロセスです。継がせる側の「忍耐」と、継ぐ側の「覚悟」を通じて良い承継が行われるよう、この記事がプロセスの整理の一助になればと思います