貿易商社DX実例~元貿易商社の社内SEガ綴る中小企業がDXで失敗しないための記事~

元中小の貿易商社でDXを推進していたオートメーションエンジニア・つのはたです。

貿易業界の特徴

貿易って、相手の国のルールの変更、自国のルール変更、物流業者の変更、乙仲さんなら顧客によってフォーマットが違う、などで業務フローや書類の細かな部分がちょくちょく変わります

例えば最近では、EMSで送る荷物に電池等危険物がないことをチェック入れ&署名する紙が増えましたよね。

更に、商工会や通関への申請など、公的機関が絡んでくるため、そちらさんのやり方が古くてどうしてもエクセルで作った書類に判子を押して直接提出しに行くまたは印刷したものを郵送、Faxを送って確認、などのフローが残ってしまう。
なので、IT投資をしてもすぐ手を加えねばならず、中々デジタル化、自動化に踏み切られない現状があるのではないでしょうか。

結果として、エクセルに親データをなんとか持ってきて、各子書類でVLOOKUPなどを使って値をもって来て、印刷してミスがないか確認して・・・ということをひたすらやっている、というのが大抵の会社さんの現状じゃないでしょうか。

何をやったか

そんな中で、私は事務方の作業量の5割くらいを削減できました。
私がやってきたことを列挙してみます。業界の方なら分かると思います。ちなみに私の会社の商材は中古車でした。

・発送すべき付属品をバーコードを使ってピッキング

   ワードの差し込み印刷にバーコード生成機能がついています。それで表示したい情報とバーコードを印刷。MD100というバーコードリーダーがピッキングシステムがついている中で最安だと思います。中古で十分。
csvでピックするリストを用意し、リーダーに読み込ませ、そのリストにないものはバイブが鳴るという単純なものです。が、目視と比較にならない楽さを味わいました。

主要取引先とはSlackで連絡を取り合う

ビジネスメール実態調査によるとメールの平均所要時間は6分/件です。皆さん、毎日20~30件以上はメールしていませんか?宛先設定や前後の署名的定型文が不要なチャットツールはそれらの時間を半減してくれます。また、文章を送った後も編集ができて、慌ただしくガシガシ仕事しなくてはいけない貿易事務の中ではありがたかったです。
主要取引先にもお願いしてSlackに入ってもらったところ、相手も大喜びでした。
ちなみに、これから新規に導入するのであればSlackよりもTwistがお勧めです。Slackはどうしても情報が流れていきがちですが、Twistはスレッドを立て、スレッドのトピックが解決したらそれをクローズするという方式です。当日受けた連絡をタスク化→その消込という流れを沢山していかないといけない貿易業務にぴったりです。

クラウドストレージ導入

ファイルはメールに添付が多いと思います。そのファイル、ちょくちょく修正が入りませんか?クラウドストレージのリンク共有なら、修正した後、「修正したので同じリンクからダウンロードしてください」で済みますので、エクスプローラーをブラウズしてメールに添付する、という作業がかなりなくなります
なんなら仲のいい取引先であれば、専用フォルダを用意しておいて、あなたに渡すファイルはいつもここ、という風にすればお互いに楽だと思います。Power Automateなんかで「このフォルダの新規ファイルは自動通知」という形にすれば連絡も不要になったりします。
途上国を相手にする機会があるのであれば、無料でDocsやスプレッドシートが使えるGoogleのGoogle Driveがおすすめです。セキュリティ第一であればBoxというものがあります。

データベースクラウド導入

御社のシステム、古くなってませんか?現在の業務フローに堪えられず、いくつかの主要な情報が入ったcsvを吐き出すだけのものになってませんか?
データベースクラウドなら、柔軟にデータベース構造を変更できるので、変化についていけます。皆さんが一生懸命関数組んでやっているものも、データベース側が計算しておいてくれます
また、後述しますが、ここが自動化の鍵になってきます
具体的にはkintoneでもいいですが、お金ばっかりかかるので特に貿易系の皆さんは海外のものに目を向けていいと思います。過去記事で紹介していますが、Ragicがおすすめです。
他に、knackやAirtableなどもありますが、貿易商材は大量にやり取りされると思うので、すぐレコード数の上限が来てしまうのではと思います。プロセスが終わったデータをAirtableなどから抜いてアーカイビングしていく、というフローを作るのであれば、あまり気にしなくていいかもしれません。

リサイクル券料金の還付申請自動化

私の扱っていた車という商材には車検証があり、車検証にはQRコードがついていました。
そこに大方の情報が一律で、一定の形で詰まっていたので、QRコードを読み込む&それをクラウドデータベースに書き込むプログラムをまず作りました。
クラウドデータベースであれば、大抵APIと呼ばれるプログラムがアクセスできるインターフェースを用意しているので、ここも重要なポイントでした。
QRコードで得られた情報は100%正しいので、その情報を元に夜な夜な自動車リサイクルシステムのサイトにアクセスし、リサイクル券番号を回収してデータベースに書き込む、というプログラムを作りました。これによって、リサイクル券の管理が不要になりました。
商材が輸出された段階になると、回収したそのリサイクル券番号を使って「リサイクル料金を還付してください」という申請をするのですが、夜な夜なサイトにアクセスして申請するプログラムを作り自動化しました。

・Fax自動化

車を買い付けた後、前所有者から名義を変更したことを証明するのに、名義変更後の車検証を買い付け先の競り市にFaxにしないといけないのですが、これもクラウドデータベースにある「仕入れ先」を元に自動でFax送信されるプログラムを作りました。Fax API、探せばちゃんと用意しているところがありました。
Faxに記載しないといけない情報は、それもクラウドデータベースから取ってきました。
Faxすべき元のファイルは、クラウドストレージにあるのでそれもプログラムで引っ張って来れました。
ちなみに、Fax送信APIを持つサービスは今のところTelnixというサービスが最安かと思います。受信についても自動化したい場合はFax Plusがいいと思います。国産ではFaximo Silverが安かったです。

データベース、ストレージをクラウド化しよう

業務はデータとファイルで動いています。上述のように、データベースやストレージをクラウド化すれば、プログラムでアクセスできるようになります(ただし、APIを公開しているものに限る)。
プログラムでアクセスできるようになれば、それが自動化の鍵になります。

できれば情報が入ってくる入口も、一定であるとよいです。顧客から情報を回収するフォーム(GoogleフォームやJotFormなど)や、ファイルをアップロードしてもらうポータルなどを作るとかなり楽になります。Googleサイト、Softr、BubbleなどWebサイトが簡単に作れるサービスだっていくらでもあります。

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