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歴史の勝利              20210907_C/3

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ヨハネス・フェルメール「絵画の寓意」

  今回は趣向を変えて、先に絵画を紹介する。

 フェルメールは、17世紀オランダの画家で、北欧のモナリザと呼ばれる「真珠の耳飾りの少女」の作者といったほうが有名だろう。

 作品名の「寓意(アレゴリー)」というのは、絵画でしばしば用いられる手法で、あるものや事柄を象徴するアイテムを描き込んで、意味合いを連想させるというものだ。

 わかりやすいもので、ドクロは「死」、狐は「狡猾」、天秤は「公正」など。老人は「時の流れ」と取るという趣深い物も有る。

 掲載の絵では、フェルメールのトレードマークであるウルトラマリンの青い装束の女性が、歴史の女神「クレイオ」を指し、彼女が栄誉を表す月桂樹を冠している事から、「歴史の勝利」という寓意が表現されていることになる。

 他にもたくさんの寓意を織り交ぜた作品であるが、私は画中の画家が、月桂樹を書きかけていることから、やはりそこが一番表現したかったように感じるし、そもそも「歴史の勝利」という言葉が好きである。

 

「歴史」・・・敬愛する田中芳樹原作「銀河英雄伝説」の登場人物で魔術師的傭兵家、ヤン・ウェンリーは、「人類の歴史はめくるページめくるページ戦争ばかり。戦争の歴史と断じても過言では無い。しかし、その合間にも何十年かの平和で豊かな時代は存在した。その期間の効用は、その1/10の期間の戦乱に勝ること幾万倍だと思う。」と語った。

 国々の成長するにつれ、格差が縮むなか、全世界の人類がまともな地位向上・尊厳・人権を求め始め、グローバル化が進むにつけ、民族混合の再整理、宗教・文化の対立は、やはり避けられない。

 第二次世界大戦までの戦争がやや非人道的な格差社会の修正だったように、これからも紛争を避けることは難しい。 

 しかし、紛争の解決方法が必ず武力による衝突あるべきかというと、それは果たしてどうだろう?そこに焦点を置くべきではないだろうか?しかし、そこへ誘導するには、紛争の解決方法が、戦争より優れているいるものを提示しなければならない。戦争よりうまみのある物、経済学的に言うところの効用のあるもの。

 戦争を概念的に否定する人は多いが、どうしてもその具体的な効用を訴える人が少ないように思う。

 戦争擁護派の方では、実利的な効用として、戦争が科学を進歩させたと主張する人がいる。人情的には、このような方々には、「ご自身か自分の身内を人体実験の検体として提供してくれればいい。」と申し上げたいところであるが、実利的効用を具体的に挙げているという点については、誤りではない。

 正直、今のところ、戦争か平和かという選択肢を「効用」という尺度で論じ合えば分が悪い。戦争を科学する「戦争論」が、かなり体系化されるところまで研究が進んでいるのもそのせいだ。

 

 前回投稿で、「平和学」というものの創設を提案したが、こっちの方は、「戦争論」に比べ、まるで研究が進んでいない。 

 「平和学」という言葉や学問が実際有るのか調べてみたら、ウィキペディアに掲載されていた。※平和学 - Wikipedia

 一部の大学では、講義に盛り込まれ始めているらしい。

 でもまだ生まれたばかりの学問で、戦争の根絶や原因となる土壌の廃絶という、目的や概念については、おおむね似たようなものでも、アプローチの仕方は様々なようだ。

 いくつか、ページをググってみたが、私の提案に完全一致するものはなかったので、改めて提起する。ただ、私は学者ではないので、いまのところ、いくつかのアプローチを提起する事はできるが、具体的な対応策はできていない。

 そこで微力ながら、私も答えを見出すよう努力し、自分なんかよりずっと頭のいい人の目に留まって、この提案がヒントとなり、平和に向けての名案が生まれることを願うことにした。

 

【前提】

 第一に、これは、たいていの論者が納得しているところであるが、残念ながら、報道カメラマンがいくら命を張って戦場の悲劇を報道しても、「戦争→悲惨→怖い」では平和は保てない。実際の戦中派を親に持つことのできた私たちは、壮絶な地獄を口伝され、私は大の反戦論者になったが、今ではそんな戦後生まれの私でも、生きた化石だ。

 次に、経済封鎖や村八分では、ひねくれ国家はまともにならん。100年前からやっている事は同じだ。

【アプローチ】

 ①紛争解決の手段として武力を使わない方法を考える事。

 例えば、領土問題⇒国際裁判所に領土問題解決委員会を設け2030年時点での実効支配地域をもって領土を線を確定。前提として「小賢しい揉め事は大人げないからやめようぜ。」という世界的意識改革が必要。

 ならず者をまっとうな国家にする方法⇒とにかく過去の蛮行を不問とし、元首を国外に歴訪させ国際化し、徐々に国民を国外に歴訪させ国際化する。

 宗教・民族、さらに移民等との対立を如何に解消するか?⇒これについては、具体案はまだない。

 ②戦争を必要とする立場の人々を利益誘導によって反戦化する。

 軍産複合体や、日本の公共工事のように財政政策か政権延命措置を目的として定期的に戦争を引き起こす国に対し、なんとか代替案を提示し、平和の効用を具体的(数値的)に示し、平和の圧倒的インセンティブを示し、くだらないことをしていると思わせる。

(この第2アプローチは気に入っているのだが、今のところ、具体案が全くない。)

 

 経済学は、ケインズ以降も進歩を続けている。

 哲学ですら、新説が現れている。

 平和学は、始まったばかり、戦争を回避する画期的なアイデアでも考えて論文を提出すれば、凡人でもノーベル平和賞を取れるかも。

 

 DNAの交換の連続では、人類の進化は無かった。

 言葉・口伝・文字・書物、これらがDNAに成り代わり、過去を未来に繋ぎ、過去の失敗を未然に防いだ。それが、人類の進化の本質である。

 人類のみが異常な速さで進化(正しくは進歩なのだが)したのは、人類が「歴史」を持つことができたからである。

 

 歴史の女神クレイオは、何をもって栄冠を頂いたのだろう。

 積み上げた結果、人類は所詮戦争を避けることができない呪われた種族であると言う解答を得ることか?それとも蓄積された叡智の結晶によって、くだらない戦渦のループから抜け出す手法を編み出すという解答なのか?

 多くの人は前者の解答を望むまい。

 窓辺にしなやかに佇むクレイオが持っている大判冊子は「歴史」である。

その巻末は、後者の記述であることを望む。

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