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就職活動記~死のグループディスカッション編~

☝エントリーシート編はこちらから

自分の自己満足でしかなかったエントリーシートが、「企業へのメッセージ」になっていった頃。

某人気ゲームメーカーの本社に呼ばれた。

ゲームメーカーの本社に集められた就活生は合計8人。

「おい!!!一体俺たちを集めて何しようってんだよ!!1」

1人の男性が叫んだ。

みんな不安なんだ。将来の自分の職が関わっているのだ。

8人集められてなにをさせられるかも分からない。

そりゃ精神を保てと言う方が無理がある。

不安を抱えた者もいたが多くは冷静な顔でその時が来るのを待っていた。


さすがあの過酷なエントリーシートを書き終え、会社から認められた者たちだ。

面構えが違う。

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10分ほど時間が経っただろうか。

部屋の奥にある扉が重々しく開いたのを私は見逃さなかった。

「お待ちしておりました。本日は○○の選考に来ていただきありがとうございます。」

扉から現れた怪しげなスーツを身に纏った女性はこう言った。

「こちらへどうぞ。」

こちらの混乱など露知らずといった様子で女性は私たちを建物の更に奥に案内しようとした。

案内通り社内を進んでいくと会議室にたどり着いた。

「みなさんには今からグループディスカッションをしてもらいます」

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グループディスカッションとは複数人で決められたお題について議論し合い時間内に結論を出す。その話し合いの様子を見て次の選考に進むものをきめるという過酷な試験の一つである。

全員が次の選考に通ることなどはほとんどない。

司会進行・書記などなどのポジションを奪い合い、いかに話し合いの中で自分の良さを看守に見せつけ、周りを蹴落とすか。

いわば就活生同士の「殺し合い」


周りを見渡す。

この周りの就活生を殺すのはこの会社の人事じゃない。

俺たち自身なんだ。自分たちの手で、自分と同じ立場の人間を・・・・


会議室に座る。

全員の顔を見つめてみる。

男性4人に女性4人。

メガネ3人に裸眼&コンタクト5人。

自信満々といった表情が3人、どこか怯えている表情が5人。

もちろん私は怯えている側の人間だ。

テーマが言い渡される。

「いい職場とはなにか」


実に難しい・・・

私の中のリトルガリレオが呟いた。


制限時間は30分。

「よーい・・・スタート!!!!」


まずは自信満々といった表情の3人がほぼ一斉にしゃべりだす。

「まずは役割を決めましょう。」

こいつら・・・もしや経験者か・・・??

このセリフを発した時点でこの人らが進行をしていくことが確定した。

自信満々トリオのメガネ男が司会、裸眼女が書記、裸眼男がオピニオンリーダー的なポジションを奪取。

私を含めた怯えた5人衆は開始2分黙るという窮地に立たされた。

書記の女性がホワイトボードに「いい職場」と書く。

意味があるようでない文字だ。

続けて「いい職場」の文字の横にどこかキティちゃんのようなキャラクターを描いた。

さっそく司会がそこにツッコむ。

「なんだよそのキャラクターw」

場が和む。

しまった!!!

ムードメーカーというポジションが書記に奪われた!!

書記&ムードメーカーという二刀流を完成させたのだ。

こちとら未だに無職だ。

無職が5人もいる状態で既に副業で稼ぎ始めた人間が出てきたのだ。

こんなところで資本主義の残酷さが垣間見えた。

オピニオンリーダーが続ける

「俺が思ういい職場ってやっぱ風通しがいいとかだと思う」

後輩の意見が上まで届く。確かにそれはいい職場だ!!

「私もそう思う!!」

私の隣の怯えていたメガネの女の子が言った。

一瞬、場が凍り付く。

司会・書記・オピニオンリーダーのみの会話で30分が終わりそうだった雰囲気に水を差したのだ。

しかしこの少女の勇気ある一言は良くも悪くもこのグループディスカッションの様相を変えた。

「私は男女が平等に働ける職場がいいと思う」

「僕は休みが取りやすいことかな」

次々にみんなが思う「いい職場」を発信し始めた。

ここで乗り遅れるほど私は無能ではない。

しかし発言者の順番としては6番目。

そろそろ目新しい意見を言わないと・・・というプレッシャーを感じた。


「私は・・・業務外交流への参加の自由度が高い職場がいいと思います」

飲み会・休日返上の社内イベントへの参加が強制ではなく自由に参加できる。そんな職場を求めた。

これは本音であり、時代に合っているという自信もあった。

人事をチラ見する。

「ほ~~」という音こそないものの、たぶん面白いと思ってくれていることが伺える表情だ。

怯えた5人衆の言葉のダムが崩壊した。

形勢逆転。

最初は意気揚々と意見を述べていたオピニオンリーダーは頷くことに徹し、

書記は無駄なキャラクターを書く余裕などなくみんなの意見を板書することに奔走。

司会は目まぐるしく変わる発言者に目を回し、一旦着席するという事実上のノックアウト。

一度決められたポジションは形式上だけになり

入り乱れた意見合戦になった。

30分経過。


人事の方の終戦宣言によって議論は沈下。

結論、いい職場の定義は人それぞれだから「風通しのよい職場」がいい職場を実現するために必要な絶対条件である

という結局オピニオンリーダーが一番最初に言った意見に落ち着いた。

彼はやはりリーダーだったのだ。


ここからは人事の方からのフィードバック。

「みなさん・・・・本当に今日初対面ですか・・・??」

人事は初対面でありながら流暢に議論を交わす私たちを見て

本当に初対面かどうかを疑っていたらしい。

最初にポジションを決めたこと、全員が意見を言えたこと、結論に至れたこと。

当たり前のようでできないグループがある。

「本日の選考は以上です。次の選考に進んで頂く方には追って連絡いたします。」


帰り道、一回意見をぶつけ合った私たちは連絡先を交換するまでに仲が深まっていた。


そして・・・・


次の選考へ通過した者はいなかった。


これが就職活動・・・

自信を取り戻しては失う。

手応えなんてまやかし。


就職ってこんなに難しいことなのか・・・


to be continued...







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