見出し画像

《体験談》 おっさんの入院日誌 ① ~入院から7日目まで~

皆さま、こんにちは。かんおさです。

いつもこの様な辺境のnoteへお越し頂き、ありがとうございます。

今回は、闘病記で少しだけ触れております、最初の入院体験についてまとめた記事になります。

入院は、私にとっては初体験であった訳です。
そして折角、このような機会を得たのですから、暇つぶしも兼ねて私の入院生活を赤裸々に日誌として残しました。

そんな入院記を、皆さんにご紹介しようと思います。

また同時に、今回私が体験した症状やそれに下された判断、その後の治療などにつきましても、この機会に体験談としてご紹介します。
もしかしたら、私と同じような症状で苦しむ方がいらっしゃった時に、判断材料の一つになってくれれば、嬉しいです。

お暇な方は、肩ひじを張らず自由にふるまうオタクなおっさんの入院生活をお楽しみください。

【注意】

この入院日誌は、なるべくコミカルに、しかし私の率直なその時の想いを素のままに表現しようとした結果、入院の深刻さのようなものがほぼほぼ失われたものとなっております。
もしかしたら、人によっては不謹慎と感じるような表現も多々ある文章ですので、その辺りはご了承ください。

この記事を作成するにあたり、私の病名や症状、診断につきましてはなるべく詳細に紹介いたしましたが、その他の情報はかなりの誇張・フェイクを交えています
また、本当にお世話になりました病院への配慮から、実際の場所や人物像につきましては、一切お答えできません。予めご了承ください。

とりあえず、入院生活最高。看護師さんは神という内容となっております。
あくまで私の体験を通した感想であるので、異論は認めません。

以上の諸注意を胸においていただき、それでも宜しければお進みくださいね。

私が病名を告げられるまで

まずは、私が過去より自覚し苦しんできた病状について、その時の状況も踏まえて紹介したいと思います。こちらは闘病記でも被っている部分がありますので、読み飛ばしていただいても構いません。
ただもしかしたら、私と同じような症状があった方で、早期発見や何かのヒントになってくれたらうれしいです。

社会人~ニート期

就職氷河期以降、IT系で頑張ってきたことが恐らく原因かと思うが、多種多様な症状に悩まされ続ける。

・うつ病
当時の治療は、カウンセリングと投薬。
特に投薬がガバガバで薬の種類も無く、私には致命的に合わなかった。
薬を飲めば死人の様に何もできず、薬が切れれば妙に悲観的になったり時に出所不明な自信を持ち、無謀をやらかして自滅。
更に世の中を憎み、情緒不安定になる。
なるべくその姿を見せないように努力したが、母親にバレてめっちゃ泣かれた事で投薬をやめることに。
自己啓発と現実逃避を武器に、何とか自己改革に成功する。
結局ニートになってから人と会話できるようになるまで5年ほどかかる。
今は一応何とかなってると思う。多分。

・群発頭痛
当時の治療薬は、お守り程度の効果しかなかった。
明け方に起きやすいため、仕事のある日は廃人と化していて、仕事にならなかった。
だからめっちゃ怒られたし、いじめられる対象にもなったが、私の周りにはそんな人が多かった。
自分は普通で特別ではないので、頑張らねばと空回りし、被害を拡大する負のスパイラルが10年ほど続く。
そんな氷河期時代、私より優秀な同期が3人ほど首を吊ったり飛び込んだりした。
控えめに言って凄い悲惨な時代だったと思う。彼らは死ぬ必要など微塵もなかったと今なら思える。

群発頭痛の発作が頻発する時は、ほぼ毎日起きるため、地獄。あれは本当に地獄です。
しかしこの体験のお陰で死に纏わる大抵の事は怖くなくなった。痛い方が死ぬより怖いし辛い。

現在は症状が起きなくなった。それだけでも明るく生きていける。幸せ。
ちなみに今現在の時点では、どちらも発症していないと思われる。

社会復帰後 ~ 現在

その後、うつ病を長い時間をかけて克服し、フリーターとして社会復帰してから出始めた症状がこちら。

・原因不明の嘔吐
恐らく自律神経失調症の一種と思われる。
しかし、メンタルクリニック系で詳しく検査したが、原因は特定できず。
パニック障害ではないかとも疑ったが、薬は効かず診断も違うとのこと。
症状は以下の通り。
① 徐々に冷や汗が出るようになり代謝が急激に落ちる体温は35度台に
② 上半身や背筋、肩回りが硬直して血行不良に陥る
③ 同時に消化器系に異常が出る。腹痛・下痢が突発的に起こる。
④ 寒さで体が震える。冷や汗が出続ける。強い頭痛が起こる。ちなみにこの時顔は蒼白らしい。
⑤ 吐き気がもよおされる様になる。最終的に暫くの間吐き続ける。胃に何もなくても吐く。
⑥ 吐いた後なら体を暖かくして睡眠が取れれば回復する。仕事中などダメな場合は④に戻る。30分間隔で繰り返す。

塾の仕事を辞めた現在、②で食い止められる様になった為、この症状はコントロールできている。

・原因不明のかゆみ・攣り
初期症状は2018年5~6月にかけて起こる
症状は以下の通り。
・特定の場所に違和感。その違和感が増大すると痒さが出てくる。
・痒さが溜まる、または少しでも痒い箇所に刺激が加わるとその部分を中心に攣る
・攣りは起点となった部分から上下に広がり、最終的に大腿部から腰まで全部が連鎖的に攣ることも多い。
・とにかく滅茶苦茶痛い。変な声が出る。クネクネしちゃうくらい。

起点となりやすいのは以下の通り(すべて右側)

・お尻 内股 鼠径部 大腿部外側 下腿部膝外側 前腹 脇

座る時間が長くなると症状が出やすくなる。
下半身が冷えると症状が出やすくなる。
寝ていても症状が出る。その為、常時寝不足になる。

・原因不明の痺れ(視神経脊髄炎)
肛門を一周するように、常に痺れる。

日によって痺れの強さはまちまちで、強い場合は排尿・排泄が困難になる。
更に痺れが進行すると、前述の攣っていた部分とほぼ同じ場所が痺れ、歩行困難に陥る。

症状が進行し、お腹周り、最終的に右掌にまで痺れが拡大する。
一定の周期で強弱が変わり、強い時には物が持てなくなる。

更に症状が進行し、右腕全体、上半身、最終的に左腕を介して、左掌まで全てが硬直し痺れるようになる。

下を向くと上半身がビーンと痺れる。
首にシャワーを浴びると高確率で上半身が硬直するほど痺れる。


〇 病状発症から入院へ至るまでの経緯

2018年 7月

突如、身体のあちこちで痒みが発生しその後攣ると言う原因不明の症状が頻発する。
あまりにも辛かったので、悩んだ末に大病院Nにかかる。

神経内科にかかることになり早速検査が始まる。
一気に費用がかさみ、生活が一気に苦しくなる。

血液検査、胃・大腸カプセル検査、MRIいずれも異常なしとのこと

8月一旦、症状が治まったので様子見

2018年 12月 

症状が再発

症状の頻度が高く、一日に何度も攣る。左側にも出始める。意味不明。
歩いていてもいきなり攣るようになり、歩行に支障が出始める(足を引きずるようになる)
再度、大病院Nに来院。

血液検査、MRI異常なし

整形外科に回されるも「気のせいだから、とげぬき地蔵に行け」と言われて流石に心が折れる。
大病院Nへの通院を止める。
その後、我慢しながら付き合っていたら2019年2月半ばに症状が治まる。

2019年 4月後半

朝起きると、肛門回りに強烈な痺れ。
排便しにくいものの、攣るより遥かにマシだったので様子見。

以後、痺れの強弱はあるが、ほぼ毎日痺れ続ける。
5月に入り、右手に若干の痺れが出るようになってきたので、嫌々ながら再度病院受診を決意。

2019年 5月上旬

大病院Sへとかかる

上記症状と今までの経緯を医師に説明。

右手掌の触覚・痛覚が鈍くなっていることを確認。
血液検査、尿検査、血圧で異常値。
半年前は正常値だったのに血圧最高180 最低140は流石にビビる。なにごと。

MRIでも何か気になる所があるらしく、特別な検査をしたいとのこと。
しかし、腎臓に負荷がかかる検査のため、腎臓科の判断を仰ぐ必要あり。
この進展の速さはどっかの大病院とは雲泥の差である。マジで滅びろ大病院N。

2019年 6月~11月

腎臓科にかかる。MRI検査にGOサイン。
血圧異常について、原因としてホルモン異常を疑われる。
別途、ホルモン値の検査をすることに。

11月まで、痺れについてMRI、脊髄液の検査
血圧異常に関しては、ホルモン値の検査を2回行う。
血圧降下の薬を貰うも、効き目まるでなし。反抗期だろうか。

その間、肛門回りの痺れは、強くなったり弱くなったりを繰り返す。
痺れが強い時は、排泄排尿が困難。

右手の痺れは常時起きるようになる。感覚が薄いので、精密作業に支障あり。
ただ、精密作業をする機会が微塵もないので、問題はなかった。
ただし、字が書きづらくなり、明らかに汚くなった。
あまりのひどさにこれは駄目そうだと、副業である塾講師を辞める事を決意する。

体調の悪い時は、右半身上部が全て痺れるようになる。
更に症状進行。右手が肘くらいまで痺れるようになることも。
この時は物が持てず、文字も書けない。箸が使えないのがちと困る。
しかし、キーボードは北斗的な要領で打てる。ホアタァ!問題なし。

10月ごろから強く痺れる場合は、左掌も痺れるようになる。

2019年 11月末

検査の結果、痺れの原因は「多発性硬化症」(難病指定)と診断される。
おっさんではかなり珍しい症例とのこと。
大病院Sでは治療が難しいため、大病院Oを紹介される。

同時に、金銭面の問題から難病指定の申請を強く勧められ用意を始める。
しかし申請に必要な文章費5,000円はすごく痛い。

2019年 12月

大病院Oにて診察開始。
しかし紹介状の所見からは、多発性硬化症ではないとの見立てになり、再度、検査をすることに。
私の文章費と労力を返せと言いたい。

2020年 1月ごろ

腎臓科の方でもホルモン検査の結果が出る。
「原発性アルドステロン症」と診断される。

ホルモンバランスがおかしいので、場合によって手術の必要があり。
仮に手術できない場合は、投薬治療になるとのこと。
やはり大病院Sでの治療は難しいとのことで、大病院Oで同時に治療することとなる。

2019年12月中盤~2020年1月にかけては、左手も含めて上半身が痺れる時もあり。
主にシャワーを頭から浴びる時に多く起こる。あまりの痺れに「うへぁー」と変な声が出ることも。
一回痺れ切ってしまえば、その後、右手の平の痺れだけに落ち着く。

また同時期に、右脇前部(肝臓のあたり?)に強烈な違和感が出るようになる。
長く同じ姿勢でいると鈍く痺れる事もあり。座り仕事なので、結構な頻度で起こる。
そのせいなのか、排泄衝動が薄くなり、前触れもなく突然、便が下りてくるようになる。
歩いていても気付くのが遅れ、2回ほど外で漏らしそうになる。危ない。社会的に終わるのは避けたい。

2020年 2月頭

逆転判決で、多発性硬化症と似た病状である「視神経脊髄炎」と診断される。
どちらも難病指定であることは変わらないらしい。カテゴリも同じだ。良かった、5,000円が無駄にならなくて。
進行性の病状であり最悪失明、寝たきりになるため、なるべく早い段階での入院を強く勧められる。

昨年末に所見違いと聞いて入院については何も考えてなかったので、ドタバタと仕事の日程調整や、書類やら入院の準備に追われる。
結局、それから入院日が決まる2月下旬まで音沙汰なしで、気分は死刑宣告を待つ罪人の気持ちで過ごした。
入院前日にならないと連絡が来ないシステムは割と控えめに言っても、いただけないと思う。

2020年 2月下旬

のんびりラーメンを食べていたら、電話が鳴る。
「明日入院できますか?」とのことで、OK逝くよと返答。

既に着替えや入院書類などの準備は2週間前に済ませてある。
超頑張ったから大丈夫。急いだのは無駄だったけど。
仕事の方も根回し済みだったため、何も問題はない。

いや、ブログ更新ができないわ。

入院に持っていく予定の実家で転がってた低スペックPC(Celeron)では記事が書けない。
そもそも花騎士がまともに動かずゲームができないのでスクショが取れない。と言うかネットができない。
スマホはネットに繋がるけど、それで記事は書けない。

急遽、告知文だけ書いてその後、各所に最終調整したらあっという間にその日が終わった。
起きたら朝一で病院へと出かけなければ。

おっさんの入院日誌 ~入院から7日目まで~

※この期間の日誌も一日ずつ作っていたのですが、Google Docが吹っ飛び、次元の彼方に消え去った関係で、ダイジェスト版になっています。
おのれ、Googleめ。

次の日、病院へと無事到着。
早速、入院手続きをするために受付へと向かう。

しかし、前に来た時も思ったのだが、この病院、入口がとても年季が入った建屋の為、圧倒的な昭和感を醸し出しているのだ。
くすんだ壁。波打つリノリウム。薄暗い照明。長い廊下。人が多いのでまだ良いが、無人だったら思わず叫びたくなる光景である。
そして長い廊下に整然と並ぶ扉。その中は何故か誰もいないのに椅子だけやたら置いてある面談室。
部屋の隅に血まみれの何かが転がっていても、何の違和感もない(失礼
古めかしく長い廊下の両側に、そんな部屋が扉を開け放って延々と続く景色は、ちと心に来るものがある。

ただその長い廊下を抜けると、今までのは何だったんだという程、近代的で洗練された空間が目の前に広がる。
白と木目を基調としたデザインは、見るものに安心感を与え、広く取られた空間と明るい採光は開放感を与える。

まさに下げて上げるを地で行く設計。侮れない。

そうして入院手続きをしようとしたのだが、ここで問題が発生。
私は2週間前に風邪の症状が出ていて、咳き込んでいた。
今は何ともないが、それが入院に待ったをかけたのだ。

世はまさに例のウィルスで大騒ぎの状況だ。
これは仕方ない。むしろ、ちゃんとしっかりと防疫しようとしてるのを感じられて安心する。
ちょっと申し訳ないなと思いつつ、結局、すったもんだの結果、肺のレントゲンまで撮ってようやく許可が下りた。

初日から中々に大変である。
迷惑をかけてしまったので、入院中はなるべく良い患者でいられるように、大人しくしておこうと思う。

病室のある棟へと足を運ぶ。
例のごとく、某ホラーゲームも真っ青な雰囲気を醸し出す廊下を歩き、エレベータを乗り継ぐ。
改装工事中らしく、軽く迷路になっており、行き止まり、通行不能の連続で完全に方向感覚を失う設計。リアルで普通に怖い。

そうして辿り着いたのは4階。出来過ぎじゃなかろうか。

分厚い扉の先が私の新天地のようなのだが、その前の空間が普通に怖い。
遠くまで続く薄暗い廊下に、工事中の標識のある壁、そして波打つリノリウム。
これ、開けたらなんか出てくる奴だ、絶対。ゲームで見たから間違いない。

そんな覚悟して扉を開ける。

その先は……やや古いけど白く綺麗な空間が広がっていた。
ちょっと拍子抜けしつつ、ナースセンターへと向かうと、ベテランと思われる明るい雰囲気をまとった看護師さんが、手続きをしてくれた。
そのまま設備の案内とか注意事項を受けるために、移動することに。
ふと見ると私の荷物が無い。
おや? とみると、何故か看護師さんが全部手に持って歩いている。ホワイ?

独り身とはいえ、着替えがかさばる関係で大きいバッグ一つと手提げバッグを二つ持ってきていたのだが、それを一人で全部抱えているのを見て、慌てて声をかけた。
しかし、何故か「良いの良いの、私が持つから」と言ってきかない。
私は昭和のおっさんなので、流石に自分の荷物を女性に持たせて何とも思わないほど大物にはなりきれない。
結局、押し問答の末、手提げカバン2個は取り戻せたが、大きいバッグは取り戻せなかった。解せぬ。
看護師さんから「紳士だねぇ」笑われたが、小心者なだけです。

説明も終わり、いよいよ病室へ。

ここで一つ確認だが、私は自他ともに認める底辺層の人間だ。
社会的地位も、収入も底辺である。これは卑屈とかでも何でもなく、厳然たる事実である。

そんな人間が入院するのだから、諸経費は勿論、最小限に抑えるのは当然だろう。
そして入院するに際して、病室のグレードと言うものがある。
勿論、これは金額をかければかけるほど、快適になっていくように設定されているのだ。

ここまで来ればお分かりだろう。
つまり何が言いたいのかと言えば、今から入院する部屋のグレードは最下層だということだ。
部屋代に一日30万と出せる筈もない。ってか、一日入院して月給の〇倍とか普通に破産するし。

なので廊下は綺麗に清掃されているとはいえ、古い建屋であることは間違いない。
私はそれはもう、覚悟をもって入室に臨んだ。

初めて病室に入った印象は、「明るくて広い」である。
そう、思っていた以上に、奇麗なのだ。

廊下こそリノリウムが波うち、車椅子すらグワングワンと揺れるほどだが、病室内は木のフローリングで綺麗に磨かれていた。
しかも、一人が占有できる空間がとても広い。3m四方くらいのスペースがある。一人なら荷物も含めて十分すぎる。
見れば、一部屋は元々6人部屋だったところを4人で使っているようである。
それがカーテンで仕切られ、完璧とはいいがたいまでもパーソナルスペースがきちんと確保されているのだ。

ベッドもしっかりとフカフカであるし、清潔に保たれている。
病院ではおなじみの、専用カードを使って見るテレビや、同じくお金はかかるが冷蔵庫がある。
勿論、貴重品置き場、簡易クローゼットも完備されている。
コンセントは5つは使えそうでこれまた、十分である。正直驚いた。

また下げて上げる作戦か。ここの参謀はやりおるわい。

想像していなかったほど、快適そうな環境に驚きつつ、そうして入院準備を始めた。
ノートPCをセットして、電源周りも整える。
パジャマに着替えて、荷物をある程度すぐ使うものとそうでないものに分けたら、もう終わりである。
早かった。入院の作業が5分で完了した。

ちなみに、周りの方々に挨拶をしようと思ったのだが、すべてのベッドのカーテンが締まっている状況だった。
ヘタレな私には、それがベルリンの壁より高く厚く、難攻不落に思えたので、次の機会を待つことにした。

しかし、実はこの後も、挨拶する機会は殆ど訪れ無かったりするのだが、それは先の話。

ベッドに落ち着き日記を書いていると、最初の病院食が運ばれてきた。
綺麗なお姉さんが、ご飯を持ってきてくれるとか、何のご褒美でしょうか。

最初の食事は、ホッケの煮つけだった。
日々、外食かインスタントかコンビニ弁当か、時々、自分の美味しくもない自炊料理しか食べてなかった私にとって魚料理は一周回ってごちそうだ。いやマジで。

コンビニ弁当での魚と言えば、よくて海鮮丼、たいていは鮭である。異論は認める。
ホッケの煮つけとか普通に食べようとしても都会じゃ運が良くないとありつけないのです。

運んでくれたお姉さんにお礼を言って、早速いただくことに。

少し冷めているものの、味付けも程よく、何といっても柔らかい。
そう、この先もそうなのだが、病院食は柔らかいのだ。
ほろっと崩れるほど柔らかく味の乗った魚の煮つけがどれだけ贅沢か、独り身の皆さんはきっと分かっていただけると思う。

冷えた半額の鮭弁当(198円)など、ただ餌だと言ってしまえるほど食の次元が違うと、この時実感した。
病院食のイメージが完全に覆った瞬間である。

勿論、量としては物足りないのだが、その分味わって食べたので、満足度は高かった。
そうしていると、カーテンの向こうから、「お済でしたらお持ちしますよー」と声がかかる。
何と回収まで綺麗なお姉さんがしてくれるではないですか。何この天国。

その後、可愛い看護師さんが明日の予定を伝えに来てくれたり、愛嬌のあるおばちゃんが申し訳なさそうにしながら、ベッドの周りや台を掃除してくれたりした。

え、本当に何なの、この至れり尽くせりなニート生活。
控えめに言って最高なのでは??

そうして、入院生活がスタートしたのだ。

二日目からは、治療が始まった。
うん、忘れてた。私は治療をしに来たのだった。

ベットにいるだけで、定期的に食事は出てくるし、掃除もしてくれるし、可愛い看護師さんたちが優しいし、もう満足してしまっていたが何も始まってなかった(既に堕落

今日の担当の看護師さんは、少し初々しいながらも可愛らしい方だった。
治療は最初、点滴での薬剤投与からスタートするのだが、どうやら私の皮下脂肪が厚すぎたのか上手く刺さらず、苦労していたようだ。
とても申し訳なさそうに作業されていたが、ご褒美です。本当にありがとうございます。

ちなみに、この治療は、ステロイドパルス療法と呼ばれるもののようだ。

詳しい説明は省くとして、この治療によって引き起こされる副作用が幾つかある。
その副作用は以下の通りらしい。

・免疫力低下
・骨粗しょう症
・高脂血症
・肥満と糖代謝異常
・精神・神経症状

見てもらったら分かる通り、今、この時期において一番致命的なものがあったりする。
そう「免疫力低下」だ。

外では相も変わらず祭りの状況な中で、もし仮に私が治療中に外に出ていったらどうなるか。
ただでさえ、高血圧・麻痺と不健康のデパートみたいになっているのに、ここに免疫力低下とおまけで高血糖が加われば、あっさり逝ける自信はある。

と言う訳で、入院するのは必然と言うことらしい。
なるべく安全な環境でリスクを低く治療する必要があるのだから。

そんな感じで、治療はスタートした。
ここからは少し気を付けて行動する必要がありそうだと改めて思った次第だ。

連日、色々な看護師さんに良くして貰っている。
皆さん、朝とお昼と夕方、交代で見回りに来て、血圧や体温のチェック。
薬や注意事項の伝達など、多岐にわたる業務をこなしてくれる。
控えめに言って、天使としか思えない。

そういえば、男性の看護師さんもいらっしゃるようで、何回か挨拶はしているが、まだ担当になったことはない。
今のところは、圧倒的な天使率である。
きっと彼も大変なことが多いのだろうと思う。いや、他意はなく。

病院に対して私の勝手なイメージだと、お局な婦長さんが仕切っていて、いつも大忙しと言うものがある。
大忙しなのは昔と変わらないと思うのだが、そのスタイルと言うか雰囲気が、思っていたのと全然違う。

まず、みんな、PCを備え付けた作業台で移動している。
採血から問診まで、全ての管理をPCで行うのだ。これはまぁ、当たり前と言えば当たり前だ。
これは、効率化が進んだ結果なのだろう。

そしてこの部屋は本来、6人部屋であるところを、あえて4人で使っている。
少し考えればわかると思うのだが、もし仮に利益を優先するなら詰め込むはずだ。
しかしそうしないのは、何故か?

顧客満足度の問題もあるだろうが、如何せんこの部屋は底辺部屋なのでその辺りのコストのかけ方はおかしいと思う。
ならどういうことかと言うと、それは看護師さんたちを見ていて何となく分かった。

慢性的な人員不足なのだろうと思う。

だから個人の負荷を上げないように工夫している節が見られる。
考えてみれば当然で、ただでさえどこも人手不足なのに、ここでブラックとかやらかしたら本気で経営が崩壊するんだろう。
事実、私を見て下さる看護師さんたちは、若くて可愛い方が本当に多い。マジで天国。生きてて良かったと心から思える。

いや、それが裏で何を意味するのかと問えば、本当に新人さんが圧倒的に多いと言う答えに繋がるのだ。
例えば、特定の看護師さんと話すことがあるのだが、どうやら彼女は2年目とのことだった。

彼女はまとってる雰囲気が明るいこともあって話しやすく、しかも気を配ってくれるタイプの天使なので、声もかけやすい。
なるべく、業務の邪魔にならないようにしているつもりではいるのだが、ついつい話が弾むこともある。
先日は、何故か漫画の話になって、好きな漫画を聞いたら「寄生獣」と言う斜め上の作品が出てきた。
渋いな。まぁ、確かにあの作品哲学的だし色々考えさせられるし。
そんな事を話しつつ同意ししたら、理解者ができたことに喜んでくれていたようである。もう、可愛い、爆ぜる。

ちなみに、作風的にグロは大丈夫かと思ったが、考えてみたら彼女らはリアルグロなど見慣れている方々だったと思いいたる。
なるほど。これがギャップ萌えと言うやつか。

そんな感じで他の方にも、ちょっと初々しく、それゆえになんだろう、擦れてない感じを様々な瞬間に目にする。
なので、ここはある意味で新人の研修場としての側面があるのだろうと私は勝手に解釈した。

そんな意図は本当は無いのかもしれないが、こればっかりは単なる憶測でしかないので、まぁちょっと心がワクワクする方向に妄想しておこう。
だって、もしそうなら、これからも若くて初々しい看護師さんにあんなことやこんn(自主規制

なんだかんだ言ってもありがたいことに、どうであれ今私は、若く初々しく可愛い看護師さんたちに囲まれ、天国のような入院生活を送れているのである。
まさに「Win-Win」の関係と言えよう(アホ

まぁ、ちょっと意地悪な解釈もしたが、ここはこの世の楽園であり天国である。それは間違いない。
しっかしマジでここの看護師さん、語彙力が無くなるほど可愛い。本当に何なの、もう!(逆切れ

最後に良い思いをさせるために送り込まれた刺客と言われても私は抗えない。もう満足です。

入院三日目に、母と妹がお見舞いに来てくれた。

母はとても心配そうにしていたが、病室の様子を見て少し安心したらしい。
親不孝な息子で本当に申し訳ないのだが、本人は密かにこの入院ライフを存分に満足しているんだ。
心底ダメな息子でマジでごめん。
親の心子知らずを地で行く私に天罰が下るのは時間の問題かもしれない。

そんな母は、みかんを大量に持ってきてくれた。
しかし、そんな母の(文字通り重い)愛は、副作用による高血糖状態の私には届かなかった。
確かに甘いのはダメと言ってなかった。泣く泣く持って帰ってもらうことに。すまぬ、すまぬ。

本日から血糖値測定と言うものが始まり、定期的に少量の血を採決するのだが、今は凄いね。
なんか小さなボタンみたいなものでバチンって押すと、ぷくーっと血が出るのだ。
画鋲みたいなものをブスっと指すのかと覚悟していたのに、全然痛くないし、科学の進歩は凄いと思った。

ちなみに、そんな事を看護師さんに話したら、担当の看護師さんは、「私はこれ痛いので嫌です」だそうな。
何それ、可愛すぎか。今日も幸せです。

結局、誰とも挨拶ができないヘタレな状態のまま、数日が過ぎ、気が付いたら斜め前の方が退院していったらしい。
そしてその日の午後に、新しいおっさんが来た。
おう、いつの間に。病室に看護師さんが案内しに来るまで普通に気が付かなかった。

新しい方か。今度こそ挨拶できるだろうか?
だが後の話になるが、このおっちゃんが、密かに曲者だった。
いや、悪い方では全然無いんだけど、何というか持っている雰囲気が私の苦手なタイプだったのだ。

恐らくは、私たち氷河期世代よりは10~20上だと思われる。
今まで接してきたそういう方々と雰囲気や行動が似ているからだ。

例えば、こんな事があった。
どうやら次の日は検査のようなのだが、それは大変な検査らしい。
それ自体には本当に同情する。
そんな検査に臨むおっちゃんは、作業してくれる看護師さんに対して、こんな感じの言葉を繰り返すわけだ。

「全く嫌になっちゃうよね」
「俺は前に〇〇だったけど、こんな事、したことないよ」
「あ、これ〇〇なんだけど、もうちょっと〇〇してよ」
「違う違う、こうだから。もう、ちゃんとしてよ」

その度に看護師さんが、こうですかー? こうですねー? そうですねーみたいに、笑顔(冷たい笑み)で答える訳だ。
色々な意味でいたたまれない。

また別の日。
あまり詳しく書いていなかったが、ここでは一日一回、担当の医師の方が、様子を見に来てくれる。
しかし、その時間は結構幅が広く、不規則になることも多い。
私個人としては、来てくれるだけでも、とてもありがたいし助かるのだが、おっちゃんはそうではないようだった。

「昨日はこの時間に来たけど、今日は遅いじゃないか」(たった5分です)
「おれぁは社会人だが、時間も守れない奴は屑だと思ってる」(そもそも時間は決まってません)
「あんなの社会に出たら、通用しないよ?」(あなたにそんな心配される必要ないくらい稼いでます)
「まったく最近の若いやつぁ」(貴方にいわれt……略)

と言う話を、「看護師さん」(めっちゃ可愛い子)にクドクドと言うのである。医者が去った後で。
いやいや、百歩譲ってお医者さんにそれを言うならまだしも、なんで看護師さん。
まぁ、知ってる。看護師さんに当たることで、何とか留飲下げようとしてるんだよね。
不満があったんだけど、お医者さんに言うと角が立つから言えなかったんだよね。
理由は察せられるけど、一言言っていい?

チキンにも程があるのでは。

ちなみに、そんな事を看護師さんは殊勝な面持ち、時々笑顔で、そうですか、そうですね、わかりましたとずっと聞いておられました。

「じゃあ、ちゃんとお医者さんにも言っておいてよ」

お前が言わんのかーい!!
そう心で絶叫した私は、多分間違ってない。

そんな感じのやり取りをカーテン越しに毎日(そう毎日である)に聞く私のストレスは、きっと可視化できたら指数関数的に伸びていたと思う。

看護師さんは、貴方の奴隷ではないんですが!? 私の看護師(違います)をいじめないで!!

そんな風に心の中で、何度、看護師さんを応援したかわからない。
と言うか、ヘタレな私が何かあったらもう出て行って場を収めようと決意するくらいだった。

しかし、看護師さん達はやはりプロなんだと実感した。
一回もトラブルになることはなかった。すまん、看護師さん。可愛いけど皆さん、本当に凄いわ。
語彙力無くて表現できない自分が本当に情けないくらい、その姿勢は崇高でした。

私は看護師と言う存在を尊敬し崇拝し愛でることを、心に決めた。

入院7日目

本日も昨日と変わらず何とか寝られて、6時に起床。
何という健康的な生活。

投薬も6日を迎え、順調に推移しているようだ。
しかし、体重が落ちたせいか、代謝が落ちたせいか、薬のせいなのか少し自律神経に異常が出ている節が見受けられてそれが心配。
具体的には、急な発汗や寒気。力の入りにくさと恒常的なダルさが顕著になってきた感じがある。
まぁ、免疫力も落ちているようなので、そりゃ色々と体に問題も出るだろう。安全に過ごしたい。

先日から懸念事項になっていた、難病申請の申込期限について朝から問い合わせをした。
本当の期限が3月初めなのだが、この時点で退院がそれ以降になると確定しているのでヤキモキしていたのだ。
前回は話し中の為に繋がらなかったのだが、今回はすんなりいけて、無事、申請期限を3月末まで延期できた。
今の予定なら十分に間に合う範囲なので、退院したら既にできている申請書類を貰って送ることにしよう。
申請が通れば、金銭面的にも、精神的にもかなり助かる。うまく申請が通ればいいのだが。

記事が消えたので書けなかったが、先日、元同僚で友人のKさんと妹様がお見舞いに来てくれた。

Kさんは、彼女が大ファンであるZARDのカレンダーを差し入れにくれた。
丁度、薬や日にちの管理がしたかったので、ありがたく使わせてもらうことにする。
取り出すときに「絶対に喜ぶものもってきた」と何故か自信満々だった。

以前よりそこまでZARDファンではないと言っているのだが、その自信はどこからきたのか?
彼女なりの冗談かな?と一瞬思ったが、彼女は基本純粋で可愛らしい方なので裏は無いと思いなおす。

という事は、素か。素なのか。可愛いじゃないか。
結果的にカレンダーじゃなくても何でもプレゼントは嬉しいし、そういう純粋なところが最高だと思う。

その後、何故かお見舞いされているのに、彼女の悩みを聞くことに。
おかしい、色々おかしい。けど、まぁ、頼られているのは心から感じるので誠実にお答えした。
帰りにZARDカフェに寄っていくとのことだったが、その後、無事楽しめたようだ。

帰り際、手を振って降りていく彼女は超かわいかった。
あんなに可愛らしくて一生懸命な彼女が何故あそこまで人間関係で悩むのか理解に苦しむ。世は修羅ばかりなのか。
いや、本当はわかってる。彼女が素直じゃなくてツンデレだからだな。ツンデレは今の主流ではないということか。
ただ私は基本的に素直で可愛い子が大好きだが、彼女を見ているとツンデレも良いなと思う。うん。

妹様は、なんでもガンダムスタンプラリーがもうすぐ終わってしまうと気付いて、急遽回ってきたらしい。
どうも20駅近く残っていたようだが、1日で回ったとのこと。凄い。凄いけどそこまでやるか―という感じはある。

朝から散歩も兼ねて回ったらしく、病室に来たときはヘロヘロだったが、充実した一日だったようだ。
その足で来てくれたのだからありがたい。差し入れの水は大事に飲ませていただこう。
その後、結局、東京まで出向いて無事ゴールしたらしい。
プラモがまだ残っていたようで、ゲットしたらしいが、彼女はそれを作るのだろうか?
何だかその姿が全く想像つかなくて困惑する。

そして、丁度、何かの運命が交わったのか、妹様が気にしてくれた結果なのか、上記の二人が少しだけ病室で邂逅することになった。
メールアドレスも交換して本日からやり取りが始まったようである。

個人的には、かなり共通点のある二人だと思っていたので前々から引き合わせてみたかった。
今回、突拍子もない形になったが、よい機会であったと思う。
今後、どうなるかは不明だが、二人とも刺激し合ってよい方向に進むことを願わずにはいられない。

ということで、先日はとても充実した時間だったのだが、それの反動か今日は何も無い極めて平和な一日だった。
検診もなし、薬も変わらず。特別な治療もないので可愛い看護師さんとの語らいタイムもない平坦な一日だ。
あえて言うなら、前日まで書いた文章が電子の海に消えたことくらいだろうか。
正直それだけで3時間ほど不貞寝したが、割り切ることにする。おのれGoogle。

やはり単純に文章を残すならメモで良いと一周回って原点に立ち戻った今日この頃であった。

今回の記事はここまで。
お読みいただき、ありがとうございました。

※登場人物や舞台につきましては、作者の主観・および妄想成分が存分に含まれております。
 取り扱いにはくれぐれもご注意くださいませ。

こんにちは! 世界の底辺で、何とか這いつくばって生きているアラフォーのおっさんです。 お金も無いし、健康な体も無いけど、案外楽しく生きてます。 そんなおっさんの戯言を読んでくれてありがとうございます。