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いろんな角度から「こども」を見つめる。 こどもの日に観たい映画10選

ステイホーム週間と呼ばれる2020年のゴールデンウィーク、いかがお過ごしですか。あっという間に5月5日、こどもの日です。

自分のことを未だこどもだと思ってしまいますが、背はもう伸びないし、四捨五入したら30なので、少しは大人になったと認めざるを得ません。大人とこども、それぞれの気持ちを理解するのは簡単ではないけれど、それぞれの立場に心を寄せることができる人間になりたいと思いながら、日々修業は続いていきます。

7歳くらいの頃、日々の疑問や不満を浮かべては長々とノートに綴っていて、自分の気持ちをわかってくれる人はそういないかもしれないけれど、自分にはロアルド・ダールと C.S. ルイスがいるからいいんだ、などと考えておりました。

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(C.S. ルイスは「ナルニア国ものがたり」、ロアルド・ダールは「チャーリーとチョコレート工場」の原作の著者)

今日はこどもの日にちなんで、いろんな角度から「こども」を見つめる映画を並べてみました。こどもたちへ、というよりも大人に向けて。こどもへのまなざしを振り返るきっかけになれば幸いです。

大人になっても忘れない? 小さい頃の記憶たち

あれは夢だったのか、それとも現実だったのか、大人になっても、どこか頭の片隅に残されている出来事ってありませんか。映画の登場人物たちが大人になってもきっと忘れないんじゃないかな、勝手にそう思ってしまうような、きらめく時間の詰まった映画3本を。

1. ミツバチのささやき(1973・スペイン)
監督:ヴィクトル・エリセ

あらすじ
スペインのある小さな村に『フランケンシュタイン』の巡回上映がやってくる。6歳の少女アナはスクリーン上の怪物を精霊と思い、姉から怪物は村外れの一軒家に隠れていると聞いたアナは、ある日、その家を訪れる。そこでひとりの謎めいた負傷兵と出会い……。

主人公のまなざしにとにかく惹きつけられる映画。台詞は少なく、ゆったりとした時の流れの中にも緊張感が続きます。1つ1つのシーンがまるで西洋画のように美しく、記憶に残る画がとにかく多い。自分自身で物事を受け止め、思考し、行動することの尊さを感じさせます。わたしのオールタイムベストに入っている大好きな映画。

2. マイ・フレンド・フォーエバー(1995・アメリカ)
監督:ピーター・ホートン

あらすじ
ある日、エリックの家の隣に新しい住人が引っ越してきた。その家の子供デクスターはHIV感染者だという。始めは戸惑い、敬遠していたエリックだったが、やがてデクスターと心が通い合い、友情が芽生えてきた。そしてエリックは“彼の治療法を見つける”とデクスターを連れてあてどのない旅に出掛けるが……。

既に知ってる方もかなりいると思うけれど、少年たちの友情が素晴らしいのはもちろんのこと、それを見守る大人であるお母さんにも心打たれる作品。こどもらしさをとことん綺麗に、美しく描いた作品。切ないシーンも多いけれど、それと同じくらい心もあったまる。

3. ムーンライズ・キングダム(2013・アメリカ)
監督:ウェス・アンダーソン

あらすじ
1965年、アメリカ・ニューイングランド沖に浮かぶ小さな島。ボーイスカウトのサマー・キャンプ中、12歳の少年サムが置き手紙を残して姿を消してしまう。一方、厳格な父と口うるさい母に辟易していた同い年の少女スージーも両親の目をかいくぐり、家を飛び出す。1年前に出会い、瞬く間に恋に落ちたサムとスージー。以来、文通を続けて入念な駆け落ちの計画を練り上げていた2人だったが……。

ウェス・アンダーソン監督らしい構図と、物事が1つ1つ丁寧に転がっていく様子が心踊ります。サムとスージーのやりとりは見ていてずっと飽きない。そして劇中のスージーの読書シーンがとてもいい。外国の映画でよく見かけるクッション張りの出窓で読書している様子、伝わるかな? 憧れます。いつかマイホームを建てることになったら作ってもらいたい。そしてラストの2人の会話が大好き。

「対こども」の関係から、人と人のつながりを考える

小さい頃、子供扱いされるのって、とっても嫌だった記憶があります。こども、大人、という区切りではなくて、1人の人間として向き合うこと。日々年齢を重ねるからこそ、年上にも、年下にも、尊敬を持って接していきたい。そんなことを考えるきっかけになるかもしれない4本です。

4. コーラス(2004・フランス)
監督:クリストフ・バラティエ

あらすじ
世界的指揮者のピエール・モランジュは母の葬儀のため帰郷した際、子ども時代の友人ペピノから一冊の日記を手渡される。それは彼の当時の音楽教師クレマン・マチューが遺した形見だった。1949年、フランスの片田舎。“池の底”という寄宿舎に新たに赴任してきたマチュー。そこでは、親をなくした子どもや、素行に問題ある子どもたちが集団生活をしていた。子どもたちは心に問題を抱え、校長はそんな彼らに容赦ない体罰を繰り返していた。マチューは子どもたちに本来の純粋さ、素直さを取り戻してもらおうと、“合唱団”の結成を決意する。

いわゆる不良少年たちを、合唱の力を借りながら公正させる……と書くとペラっとしている内容にも思えるのですが、ここに登場する音楽教師のマチューは、とても人間らしいところがいい。熱血教師でもなく、思ったことは口に出す。生徒たちの機嫌を伺ったり、媚を売らないところもいい。人並みに失敗もします。ラストシーンのやりすぎないところが好き。紙飛行機が作りたくなります。

4. ショート・ターム(2013・アメリカ)
 監督:デスティン・ダニエル・クレットン

あらすじ
様々な問題を抱え、親と暮らせなくなった10代の少年少女たちを一時的に預かるショート・ターム。ここで働く20代のケアマネージャー、グレイスは、同僚で恋人のメイソンと同棲中。明るくて仕事ぶりも有能な彼女は現場スタッフのリーダー的存在。スタッフからはもちろんのこと、心に傷を抱えた施設の子どもたちからも厚い信頼を寄せられていた。しかし、そんなグレイスも、誰にも言えない深い心の闇を抱えていた。

過去の積み重ねで1人の人間ができていくことを強く感じさせられる映画。そして人との関わりの中で自分がいろんな方向に変化していく可能性も感じる映画。希望に満ちた映画。愛って言葉だけじゃ表現できない。一つ一つの会話、そして支えが、新たな道へと人を送り出していく。大人に近いところに位置するキャラクター・施設にいるマーカスのとあるシーン、胸が熱くなります。

5. ルーム(2016・アメリカ)
監督:レニー・アブラハムソン

あらすじ
閉ざされた[部屋]で暮らす、ママとジャック。体操をして、TVを見て、ケーキを焼いて、楽しい時間が過ぎていく。しかし、この部屋が、ふたりの世界の全てだった。[部屋]で5歳の誕生日を迎えたジャックに、ママは話しはじめた。「この部屋の外にも世界があるの。」閉ざされた[部屋]で生れ育った息子に本当の<世界>を見せるために、母は脱出を図る。初めて<世界>を目にしたジャックは……。

このあらすじにある「部屋」と「世界」になぜカッコがついているのか、作品を見ればわかるのですが、その事実はあまりにも衝撃。実際に起こった事件を元にしたストーリーですが、二人のやりとりに、親と子それぞれの強さを感じます。わたしは初鑑賞のあと、終始お腹がキリキリ痛くて鑑賞後もしばらく頭痛が止みませんでしたが、見てよかったと力強く思える映画でした。

6. タリーと私の秘密の時間(2018・アメリカ)
監督:ジェイソン・ライトマン

あらすじ
仕事に家事に育児と、何事も完璧にこなしてきたマーロは、3⼈⽬の⼦供が⽣まれて、ついに⼼が折れてしまう。そんな彼⼥のもとに夜だけのベビーシッターとしてタリーがやってくる。彼⼥はタメグチのイマドキ⼥⼦なのに仕事は完璧。マーロの悩みも聞き、⾒事に解決して行く。⾃由奔放なタリーと不思議な絆を深めていくうちに、マーロも本来の輝きを取り戻していくのだが、タリーは何があっても夜明け前に姿を消し、⾃分の⾝の上は決して語らないのだった……。

これはこどもの映画というよりも、育児の話。今までに紹介した作品とはちょっと流れが異なりますが、男女問わずに見て欲しいです。むしろ男性に見て欲しい。タリーが登場するまでの前半は本当に地獄のようで、こちらも気が狂いそうになります。でも、後半は更に気が遠くなる展開に。こどもに向き合うことに精一杯で、自分の場所が見えなくなってしまっている主人公の姿は見ていて本当に辛いですが、世の頑張りすぎのお母さんたちに、ぼちぼち行きましょう、夫婦で話し合いましょう、と教えてくれる作品だと思います。このコロナの時代に、もし子育てで一人苦しんでいるお母さんがいたら、そっとすすめたい。

いつまでがこども? ティーンを描いた作品

ティーンムービーって大好きです。全力で、眩しくて、時にはカッコ悪かったりして。でも少しずつティーンから年齢が離れていくと、その眩しさに耐えきれないときや、反対に可愛く思えて笑っちゃうことも出てきました(過去の自分が知ったら怒るよきっと)。
限られた時期の中に、儚さや過ちもある。しかしその中に永遠の煌めきがある、そんな瞬間を切り取った3本をご紹介しますね。

8.ゴーストワールド(2001・アメリカ)
監督:テリー・ツワイゴフ

あらすじ
イーニドとレベッカは高校を卒業した今も進路も決めないまま好きなことだけしてフラフラする毎日。ある日、二人は新聞の出会い系の広告に載っていた中年男をダイナーに呼び出し、待ちぼうけを食っている惨めな姿を見て暇を潰すのだったが……。

みんな大好きゴーストワールド! おしゃれで尖っていて、そして切ない……定期的に見返したくなる作品ですが、その度に心をえぐられる。地方生まれのわたしから見ると、海を越えた遠くの国にもこんな郊外特有の息苦しさがあるのか、と救われる気持ちになったことを思い出します。そして自意識って難しいよね。ティーンの頃から今に至っても、自意識と取り扱い方法って永遠の課題。

9. シング・ストリート 未来へのうた(2016・アイルランド)
監督:ジョン・カーニー

あらすじ
1985年、大不況のダブリン。人生の14年、どん底を迎えるコナー。父親の失業のせいで公立の荒れた学校に転校させられ、家では両親のけんかで家庭崩壊寸前。音楽狂いの兄と一緒に、隣国ロンドンのMVをテレビで見ている時だけがハッピーだ。ある日、街で見かけたラフィナの大人びた美しさにひと目で心を打ちぬかれたコナーは、「僕のバンドのPVに出ない?」と口走る。慌ててバンドを組んだコナーは、無謀にもロンドンの音楽シーンを驚愕させるPVを撮ると決意、猛特訓&曲作りの日々が始まった……。

シング・ストリートもとっても人気ですよねー。紹介するまでもないかなと思ったけれど、最高のティーンを描いた作品なのでチョイス。登場人物たちが本当に魅力的で、何かを始めるぞ!っていう瞬間のワクワクとドキドキが詰まってる。ヒロインのルーシー・ボイントン様が本当に最高なので、ルーシー見たさに見返している気もする……。ものづくりしたくなるよ。すっごく元気になる映画。

10. 最初で最後のキス(2016・イタリア)
監督:イヴァン・コトロネーオ

あらすじ
イタリア北部・ウーディネ。個性的なロレンツォは、愛情深い里親に引き取られ、トリノからこの町にやって来るが、奇抜な服装で瞬く間に学校で浮いた存在に。ロレンツォは同じく学校で浮いている他の2人――ある噂から“尻軽女”とのそしりを受ける少女ブルーと、バスケは上手いが“トロい”とバカにされるアントニオと友情を育んでいく。自分たちを阻害する生徒らに復讐を試みるが、それを機に少しずつ歯車が狂い始める……。

この作品の魅力は何と言ってもエナジー!です。ロレンツォを見ているだけでいつの間にか笑顔になっちゃう。ティーンならではの心のざわめきが、丁寧に描かれています。この作品もイタリアで起こった実際の事件を元に作られており、「もしも、あの時」について、まっすぐ、悲しさにも正面から向き合った作品。素敵なスニーカーが欲しくなるかもしれません、わたしは映画館の帰り道、そのまま靴屋さんに行った記憶があります(笑)。

というわけで、10本をご紹介しました。ティーンたちを「こども」として分類してしまうのはちょっと違うかな? とも思ったのですが、大人もこどもも、「大人」の割合と「こども」の割合を大小こそあれど持っているよね。その揺らぎの季節だからこそ、今、大人になってしまったわたしも、大人になれなかったわたしも、受け入れてくれる映画がある気がしました。

大人に向けたこどもにまつわる映画の紹介になってしまいましたが、大人になるのは思ったより悪くない、ということも現在のこどもたちには是非お伝えしたいです(笑)。昔は面白く感じなかった本や映画が、ある日突然魅力的でたまらなくなったりするんですから。

誰かの人生に寄り添える映画ってとっても素敵。皆さんオススメの「こども」にまつわる映画も、ぜひ教えてくださいね。

※各映画のあらすじは、filmarks( https://filmarks.com)及びTSUTAYA(https://tsutaya.tsite.jp)を参考にさせていただきました。



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