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たゆたえども沈まず

実家に戻って、毎日のように話し相手がいるからなのか、4月5月ほど書きたいことがてんこ盛りじゃ無くなって、書いていませんでした。ふつふつと1人で色々考えるのもいいし、でもやっぱり誰かとも話したい、、要するにバランスですね。このままいくと放置しちゃいそうですし、偶然にもゴッホ没後130周年だし、一度書いてみたかった読書レビューを備忘録程度に手短に書いておきます。

たゆたえども沈まず 原田マハ(2017)

ずっと読みたかったのですが、あれもこれもと浮気して、ようやく読めました。簡単にいうとフィンセント・ファン・ゴッホと彼を支えた弟テオドルス、そしてパリで出会う日本人画商の林忠正、加納重吉をめぐる話です。このうち林忠正との関係や、重吉自身はフィクションです。

原田さんのファンって多いと思いますが、私もその1人です。

実話ベースにフィクションが入り込んでいることで、さらに想像力を掻き立てられるというか、リアルでファンタジーだからこそ、絵画の裏にあるミステリアスなモノにより一層引き込まれてしまう・・・というのが体感です。

子供の頃母の知人から「ピカソは生前で売れていたし、長生きもしたけど、ゴッホは若くして亡くなり、亡くなってからようやく認められて、その人生も孤独で悲しいものだった」という話を聞いたことがあって、ずっとよく覚えていました。

実際に本を読んでみて知ったのですが、ゴッホの人生って、孤独で、壮絶で、暗いシーンが多かったです。でも彼の絵にまつわる描写、特にアルルやサンレミ(晩年)での描写は、南仏の暖かい光の光景を、絵を目の前にしていなくても感じさせられます。癇癪持ちで、晩年は狂人のようにも扱われていたゴッホですが、美しいものを見出す力とそれを愛し、そして絵にし、絵を愛する事、それが彼の描く絵に現れているような気がします。この小説を読む前、つまりゴッホについて知る前はこんな風に感じていませんでしたが。

実際に私はアムステルダム、NY、ロンドン、パリで彼の絵を見ているのですが、そのころはそんな背景も知らず、どこで何をみたかほとんど覚えてません。「ゴッホの絵があった」ってくらい。今彼の作品を見れば、私は何を思い、感じるのだろう、と思うと同時に、画家を知る面白さに気づいたという感じです。(MoMaやバーゼルのバイエラー財団も楽園のカンバスを読んでから見行けば良かったと後悔しています笑)

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だから写真も、ロンドンのナショナルギャラリーで人混みの中必死に撮った下手くそすぎる「ひまわり」の1枚があるくらいなんですよね。(今更無念)

読書レビューという名のゴッホレビューのようになっていますが、

彼が自分の美しいと感じる景色、そして自身の弟を愛し続けたことは、彼の遺した言葉に如実に現れていると思います。

美しい景色を探すな。
景色の中に美しいものを見つけるんだ。
考えれば考えるほど、人を愛すること以上に芸術的なものはないということに気づく。

ゴッホって幸せだったのでしょうか。友達もほとんどおらず、結婚もせず、絵もほとんど売れることがなく若くして亡くなった彼ですが、最後まで支えてくれる弟テオの存在がありました。孤独でも、絵と弟への愛、そして弟からの愛で生き続けた・・・決して上手に世渡りできなかったけど、数少ない愛するものに関しては揺るぎなかったゴッホの姿を見て、何が本当に幸せなんだろう、と考えたりします。

たゆたえども沈まず、私もそんな風に強く生きてゆきたいな、、、

と、なんだか全く本のレビューになっていませんが、日本人画商2人とゴッホ兄弟をめぐる展開にはあっという間に引きずり込まれます。絵画やアート好き、そうじゃ無くても読んでみてください。

世界中の人が、ゴッホの絵を目掛け世界中の美術館を訪れている光景を、ゴッホとテオが喜んでいますように、と願って。

(余談ですが実際にゴッホ、テオ、忠正、重吉をめぐる4人のラストシーンは涙が止まらないので、小説で泣きたい人にはぜひオススメです。さらに余談ですが、15日の世界一受けたい授業で原田さんがゴッホの解説をしてくれるようです。)

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