小説『エミリーキャット』第32章・Mirage
まだ火曜日…と彩はドレッサーの前でため息をついた。
いえ、もう火曜日、もう火曜日になったのよ、憂鬱な月曜日は過ぎ去った、
明日になれば水曜日、すでに中日(なかび)だわ、
金曜日までもうあと少しよ、
と彩は鏡の前で自分を鼓舞した。
鏡台は本来、化粧や素膚の手入れをする為の場であるが、彩の鏡台は机の部分が比較的ゆったりと広い為、ついそこで手帳を開いたり手紙を書いたり、珈琲を飲んだり簡単な食事などもしてしまうことがあった。
洋式のドレッサーではあったが、
使っていない時には鏡に後か