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連載小説『エミリーキャット』

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(2018年・8月~現在も連載中)画商の彩は誰もが認めるキャリアウーマン、優しい年下の彼と婚約中。 然し本当は人知れず幸せよりも生きづらさに喘ぐ日々を送っている。彩はある日、森奥… もっと読む
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記事一覧

小説『エミリーキャット』第79章・It's not a coincidence

『またあんた達なんだぁって思ったわよ』 という口ぶりを聞いて病院のベッドの上の慎哉は心の…

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小説『エミリーキャット』第78章・真昼の決闘

陸橋の階段を登りながら、彩は憂鬱な思いでそっと後ろを振り返った。 怒気を含み、尖った眼差…

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小説『エミリーキャット』第77章・suddenly

『彩さん?ついたわよ』 順子の声に彩はまるで階段の最上階を一段、踏み外すような衝撃の中、…

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小説『エミリーキャット』第76章・メリーさんの羊

若い癖に寝つきの悪い貞夫は何度も寝返りを打ち、枕の上で荒々しいため息をついた。 そして思…

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小説『エミリーキャット』第75章・origin

しかしその下に現れた彼は恐らくは実年齢より、はるかに若く見える人懐っこい笑顔の英国紳士だ…

小説『エミリーキャット』第74章・abyss

『彩さん大丈夫?』 順子は車で自分の家へ共に帰った彩が、家に着くなり少し横にならせて欲し…

小説『エミリーキャット』第73章・シレーヌ達

『奇妙なもの?』 刑事はまるで何かに取り憑かれたかのような顔つきになって頷いた。 『彼女はそれをこう呼んだんだ、 ”これはあと何年も何年も遠い先の未来、ここに立ち、私と同じように孤独で深く傷ついた人がここで流した泪の”結晶”なのよ。”って、 ”時を超えて、今その人と同じ場所に立つ私にその人が未来の自分の存在をここに居る私に知らせる為にたった今、これを私達に見せてくれているんだわ”って』 『それどういうことですか?一体』 『解らない、だが彼女は言ったんだ、 ”私の目の前

小説『エミリーキャット』第72章・メンデルスゾーン・コップ

いくらかけても2日前から全く電話に出ない彩にしびれを切らした慎哉は、彩のマンションに向か…

小説『エミリーキャット』第71章 ・コヨーテの鳴く夜に

彩は無自覚というものがさながら自分という人間が誰か別の人格に操られていつの間にか動いてし…

小説『エミリーキャット』第70章・サエリとキヨリ

店へ入ると同時に赤銅のカウベルが三段落ちの立体細工を施した、いかにも年代ものの扉の上でガ…

小説『エミリーキャット』第69章・Labyrinth

順子の家から帰宅した彩はマンションの鍵がかかっていることを確かめても尚、怯々と踊り狂う胸…

小説『エミリーキャット』第68章 ・ エミリーの友達

『夜でも紅茶を飲む悪い癖がついちゃって』 と順子は笑いながら無印良品らしき無色透明のティ…

小説『エミリーキャット』第67章・燠の記憶

マンションの敷地内は延々と続き呆れるほど広かった。 彩は歩きながら果たして本当にこの地を…

小説『エミリーキャット』第66章・Missing

まるで折れ釘のように首と頭を倒して高層マンションを見上げているうちに、その窓々が春の日射しに鏡のような鋭利な反射光を放つのを目(ま)の当たりにして彩は眩暈を感じ、思わず固く瞳を閉じた。 そして熱に浮かされ口走るような口調で彼女は気がつくとこう言っていた。 『ここが…あの森のあった場所?』 『そうだ、彩ちゃん よく見るんだ、 森は無いし、あの館ビューティフル・ワールドももう無い』 『……』 『そして…エミリーももう居ない』 そう言う山下の口調は渇いた中にも不思議とさり