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北東北顔はめパネルファイル【随時更新】

 道の駅に、博物館に、思いもしなかった場所に、顔はめパネルは唐突に現れる。それなのに探してみると中々ない。
 自分が訪れた先で見つけることができたご当地ならではの顔はめパネルを、この記事では随時紹介していく。

 深淵なる北東北の顔はめパネルの世界に、皆さんをお連れしよう。

No.1:羅刹退治顔はめパネル

発見場所:岩手県盛岡市 三ツ石神社

 最初に紹介しておいてなんだが、寺社仏閣の顔はめパネルはかなり貴重だ。なにせ顔はめパネルはゴキゲンな観光地にあるものだ。基本的に厳かな寺社仏閣にはそぐわない。
 そんな希少な顔はめパネルがあるのは岩手県盛岡市の三ツ石神社。祀られている「鬼の手形岩」前にあり、この岩こそ岩手県の名の由来になったものだ。
 伝承によると盛岡のあたりには羅刹と呼ばれる鬼が棲み悪事を働いていたという。困り果てていた人々がこの「三ツ石様」と呼ばれていたこのに祈りを捧げたところ、「三ツ石様」は鬼を神通力で縛り上げ二度とこの地に来ないと約束させたという。その際に鬼が約束の証拠として刻んだ手形が今でもこの岩には刻まれていており、羅刹を退治した三ツ石様に人々が捧げた喜びの舞がさんさ踊りの起源だとされている。
 面白いのは、三ツ石様の化身と思わしき存在も鬼の姿をしている点にある。鬼神信仰とも関係があるのだろうか。

 手作り感溢れるパネルから漂う愛情と神秘を内に秘めた、実に素晴らしい顔はめパネルだ。

No.2:胴面チキン顔はめパネル

発見場所:青森県八戸市 大安食堂

 名物「しおてば」を始めとした様々なメニューで八戸市で愛されている大安食堂。
 毎週日曜日に開かれる館鼻岸壁朝市や近隣のスーパーマーケットなどでの移動販売が有名な大安食堂であるが、店舗の方には顔はめパネルが設置されている。
 顔はめパネルとしての実用性を優先した結果、マスコットキャラクターである鶏のキャラクターがよく見ると奇妙な形状になっている上に、顔を出す位置もなんとも独特な世界観を醸し出している。
 足元を見るに、高さを後から調整した痕跡もあるのもなんともいじらしい。

 地元八戸に密着し、お客さんの期待に応えるべく地道な改良と並々ならぬ努力を続けてきた大安食堂の姿勢が垣間見える顔はめパネルだ。

No.3:さかなクンと一緒顔はめパネル

発見場所:岩手県久慈市 もぐらんぴあ
発見場所:岩手県久慈市 もぐらんぴあ

 1994年に設立するも、2011年の東日本大震災の津波で被災し全壊。その後5年の歳月を経て2016年に見事復活を遂げた地下水族館兼石油文化ホールもぐらんぴあ。
 久慈市をモデルにした架空の街を舞台としたNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」でも言及されていたが、東京海洋大学客員准教授のさかなクンは自らトラックを運転して飼育していた魚を寄贈するなど復興に尽力した。
 現在も多数のさかなクンの直筆イラストや彼が寄贈してくれた魚たちの水槽がもぐらんぴあ内には存在する。
 そして彼をモチーフにした顔はめパネルもあり、屋外と屋内に2つ設置されている。
 なお設置位置が悪いせいで、元々存在していたマスコットキャラクターであるモグラのキャラクター「もぐちゃん」と「らんちゃん」の顔はめパネルの方は、折角あるはずの日付の表示がやたらと見にくいのはご愛嬌だ。

No.4:鬼剣舞顔はめパネル

発見場所:岩手県北上市 鬼の館

 岩手県北上市に伝わる伝統舞踊である鬼剣舞をモチーフにした勇ましい顔はめパネルだ。
 鬼剣舞は被る仮面にも意味があるのだが、残念ながら仮面と顔はめパネルとの相性は壊滅的に悪い。しかし衣装は勿論、鬼剣舞が鬼の名を冠する理由の1つである勇猛な動きを見事に表現したデザインは、仮面がなくともそれが鬼剣舞であることを雄弁に物語っている。

No.5:秋田人面犬顔はめパネル

発見場所:秋田県大館市 秋田犬の里

 大館駅とは目と鼻の先、秋田犬と出会えお土産も買える秋田犬の里は肩肘張らないゴキゲンな観光地の筆頭とも言える。今では確実に少なくなってきているであろう顔はめパネルも、勿論ここでは現役だ。
 はめる場所は秋田犬の顔、つまり気軽に秋田人面犬になることができるのだ。秋田犬を散歩させたり遊んだりするような誰でも思いつくような生温い構図と秋田犬に対する態度は許さない。そんな気概すら感じる顔はめパネルだ。

No.6:伝承館顔はめパネル

発見場所:青森県新郷村 キリストの里伝承館

 北東北随一の珍スポット、キリストの里伝承館にあるある顔はめ看板は、かつての新郷村の人々の装束をモチーフにしている。
 施設そのものに対して意外な程にツッコミどころの少ない、かなり真っ当な顔はめパネルだ。

No.7:寺山修司の母になれる顔はめパネル

発見場所:青森県三沢市 寺山修司記念館

 歌人、劇作家、小説家、写真家、映画監督……幅広い分野で活動し「言葉の錬金術師」や「アングラ四天王の一角」と称され「僕の職業は寺山修司です」と自称していたという寺山修司。彼が主宰した演劇グループ「天井桟敷」をモチーフにしているのがこの顔はめパネルだ。なお顔をはめる場所にいるのは寺山修司の母であり記念館の創設に協力した寺山はつとのことだ。
 寺山修司と母親の関係については割愛するが、寺山ファンならニヤリとできるディープな逸品である。

No.8:不条理朝市顔はめパネル

発見場所:青森県八戸市 館鼻岸壁朝市

 私が最も衝撃を受けた顔はめパネルがこれだ。
 一見したところ普通の顔はめパネルであるが1番下の段をよく見てほしい。高さが地上から10センチ程しかないのだ。なお「ペットの犬用では?」と思われた方もいるかもしれないが、館鼻岸壁朝市ではペットの連れ込みを禁止している。
 このパネルに使われている写真は、来場者投票で見事入賞を果たした館鼻岸壁朝市を象徴する写真たちなのだが、それらを紹介するにしては無理やり挟み込まれた顔はめ要素とイカドン (館鼻岸壁朝市の黙認ゆるキャラ)  の極端な主張の強さで写真を生かしているとも言い難い。
 顔はめ看板と朝市の紹介の皮を被ってこそいるが、実際はいずれの役割も果たしているとは言い難い実に不条理なパネルなのである。

 見るものに不安と困惑をもたらす、まさにシュールレアリズムの極地と言える芸術的パネルだ。

No.9:謎のホタテキャラ顔はめパネル

発見場所:青森県平内町 ほたて広場

 平内町にあるほたて広場は、ほたての販売が行われているほか、ほたて漁業の歴史や技術について学べる展示がある。
 問題は顔はめパネルになっている「ほたて広場のあおいくん」と「ほたて広場のうみちゃん」というキャラクターだ。
 左側にいる「青森ほたてのホタちゃん」については着ぐるみとしてほたてのPRなどで活躍しており、公式グッズも販売されている。
 しかし「あおいくん」と「うみちゃん」については、私が調べた限りではこのパネル以外に存在が確認できなかった。
 彼らは顔はめパネル専用のキャラなのだろうか、それならば顔をはめられることで初めて完成するキャラクターなのだろうか。興味が尽きない。

No.10 : 期間限定えんぶり顔はめパネル

発見場所 : 青森県八戸市 はっち

 えんぶり直前の時期に設置されていた、恐らくかなりレアな顔はめパネルだ。展示期間が終われば容易に撤去できる作りになっているか、使い捨てにしては随分と出来がいい。毎年行われるえんぶりの展示であることを考えると、時期が終わった後も廃棄せずに使いまわされているのかもしれない。
 えんぶりの一体感をよりしっかりと楽しめる顔はめパネルだ。

No.11 :米俵担ぎ顔はめパネル

発見場所 : 青森県青森市 北のまほろば歴史館

 北のまほろば歴史館の展示室入り口に飾られていた、比較的新しいものながら正統派の顔はめパネル。「映え」を目指すにはあまりにも野暮ったすぎるためか、新しい施設にはないことも多い顔は目パネルだが、青森県にはまだまだ顔はめパネル文化がしっかり息づいているらしい。
 そして、これを撮影した時点では完全に油断していた……

No.12 :不意打ち昆布かっちゃ顔はめパネル

発見場所 : 青森県青森市 北のまほろば歴史館

 上の顔はめパネルで完全に油断し切ったところに現れたまさかの2枚目の顔はめパネル。驚くべきことにこのパネル、なんと展示室の一番奥にあるのだ。
 複数の顔はめパネルがあること事態珍しいのだが、展示室の一番奥という場所に鎮座しているというパターンは初めて見た。
「顔はめパネルは入口か入ってすぐにあるもの」という自分の中の常識が崩れていく音が頭の中に響く、あまりにも衝撃的なパネルだった。

No.13:北限の海女顔出しパネル

発見場所:岩手県久慈市 二十八日町

 顔はめパネルは大抵観光地にあるものだが、久慈市では珍しく商店街に顔はめパネルが設置されている
 設置場所は久慈駅や道の駅くじからも程近い場所。久慈市はもぐらんぴあなどの観光地のアクセスが車以外ではあまり良くない上に、観光目的でくると通ることすらないかもしれない久慈市の中心部だが観光客に対するホスピタリティはこの通り万全だ。
 久慈を代表する名物である北限の海女と彼女らに狩られるウニになりきることができるという体験は、きっと久慈の思い出を鮮やかに彩ってくれるだろう。

No.14:胴面恐竜バトル顔はめパネル

発見場所:岩手県久慈市 二十八日町

 久慈市を代表するもう1つの名物といえば琥珀。そして琥珀といえば勿論恐竜だ。
 というわけで上述の北限の海女顔はめパネルの横には恐竜をモチーフにした顔はめパネルも設置されている、まさかの2本立てである。
 驚くべきはその顔はめ位置、上述した八戸市の大安食堂の顔はめパネルと同様の胴面スタイルだ。
 当事者性を保ちつつもモデルのキャラクター性を大きく崩さない胴面スタイルは、一見奇妙に映るが実は非常に合理的なスタイルなのかもしれない、そんなことを思わせる顔は目パネルだ。

番外1:津軽金山焼きマグカップパネル

発見場所:青森県五所川原市 津軽金山焼

 顔はめパネルではないが、そのスピリットは受け継いでいるパネルだと思うのでここに掲載する。

 釉薬を用いず、1300℃もの高温で時間をかけて焼き固める「焼き締め」という技法で完成する津軽金山焼。その素朴ながらも品のある佇まいは、私を含めファンも数多い。
 その窯元に撮影スポットとして設置されているのが、この津軽金山焼のマグカップをモデルにしたパネルだ。
 この窯元は津軽金山焼の展示・販売や体験を行っていることは勿論のこと、ピザを中心に据えたレストランやこのような撮影スポットを数多く設置するなど、陶芸に興味がない人でも楽しめるように配慮されている。

 津軽金山焼にも通じる素朴なパネルは、1人でも多くの人を楽しませようとしているホスピタリティを感じさせる。

番外2:顔はめりんご飴

発見場所:青森県藤崎町 ふじさき食彩テラス

 上述のものとは逆に、「顔はめ」ではあるが「パネル」ではないという「顔はめパネル」のスピリットを受け継ぎつつも独自の方向性を選んだオブジェクトだ。
 モチーフにしているのはりんご飴。これが設置されているふじさき食彩テラスでも勿論販売されている。ハッシュタグが下に置かれていることからも明らかに「映え」を意識しているものであることがわかる。

 かつて素朴なものとして扱われていたりんご飴が洗練を経てブームとなり、やがて「おしゃれで美味しいお菓子」という新たな印象と共にある程度定着したように、顔はめパネルも新たな時代に突入しつつあるのかもしれない。

番外3:手持ちタイプ枠オンリーパネル

発見場所:青森県五戸町 ごのへ郷土館

 最近増えつつあるのが、パネルが自立しているのではなくこういった自分の手で枠を持ち撮影するタイプのパネルだ。特に観光客人気の高い小さな飲食店でよく見かける印象がある。
 パネルと異なり普段は壁にかけておける上に大きさも小さく、屋内の設置が容易なので省スペース化と製作費の削減が見込め、更にカスタマイズが容易なので個性が出しやすいという利点があるが、いささか寂しさを感じてしまう。

番外4: 顔はめパネルの究極系?なまはげ記念撮影パネル

発見場所 : 秋田県男鹿市 なまはげ館
発見場所 : 秋田県男鹿市 なまはげ館

 上述の手持ち枠型パネルとは逆に、現在確認したいる中では高級化路線の最終形態とも言えるのがこのなまはげとの記念撮影スポットだ。方向性としては先述の顔はめりんご飴に近い。
 柴灯まつりの1場面を背景に、なまはげのマネキンの横で自身もなまはげの衣装をまとい、なまはげとして記念撮影ができる。
 象徴的な場面に登場人物の1人として参加する、そこには顔はめパネルの魂が確かに息づいている。

番外5:岩泉町PR上半身はめパネル

発見場所 : 岩手県岩泉町 龍泉洞

 これは番外編にカウントするべきか通常版にカウントするべきかかなり迷ったが、サイズ的に「顔はめ」とは微妙に言い難く、また顔はめパネルに多かれ少なかれ介在する「なりきり」要素が薄いのでこちらにカウントした。龍泉洞の入り口に設置された額縁風のデザインのパネルだ。
 手作りのパネルのようだが、額縁をモチーフにしたデザインといい色使いといいデフォルメといい、シンプルながらセンスがいい。それでいて書き込まれた酪農などをモチーフにしたイラストは、岩泉最大の観光地である龍泉洞にきた観光客達にさりげなく岩泉の他の名物もアピールする郷土愛に溢れている。額縁に立体的にデザインされた龍も愛らしい。因みに隣にある黄色いものは、龍泉洞のアイドルであるコウモリをモチーフにした木彫りの像だ。

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