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パンの耳でできたビール「ブレッドヴァイツェン」を飲んでみた
先日スーパーのビールコーナーで面白いものを目にした。
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ビールコーナーからは浮いているように見えるが……
こちらのビールなのだが、瓶にデザインされているこの少年の顔に東北の方なら確実に見覚えがあるはずだ。シライシパンのマスコット、シライシ坊やだ。
(こう書いたが、実は名前は今回初めて知った。そういう名前だったのかこのキャラクター)
なぜパンのマスコットキャラがビールコーナーにと思ったところ、どうやらこのビール「ブレッドヴァイツェン」はシライシパンとベアレン醸造所が共同開発した、パンの耳から作ったビールなのだという。
シライシパンは岩手県盛岡市に本社を置く白石食品工業株式会社の商標だ。東北地方ではスーパーやコンビニなど、こういった袋入りパンが売っている場所ではよく見かけるメーカーだ。
東北地方でポケモンパンを製造してるのもこの会社である。
そしてベアレン醸造所は、こちらも盛岡市に本社を置く醸造会社だ。
いわゆるクラフトビールの醸造所であり、定番商品の他にもクラフトビールらしいフットワークでほぼ毎月のペースで期間限定の新商品を発売している。
規模こそ大手飲料メーカーと比べれば小規模なものの、岩手県内のスーパーではほぼ確実に販売されており、盛岡市内には複数の直営レストランがある。岩手県を代表するクラフトビールメーカーと言えよう。
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ベアレンのマーク
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名前の通り、紅茶を思わせる液色の赤いビールだ。
この色はレッドXという麦芽に由来しているらしい。
ホップがしっかりと効いており、苦味と飲んだ後の香り
そしてそれに負けないほどに強い麦芽の旨みが特徴の
じっくりと飲むのに適した味わいのビール。
自分のお気に入りのビールの1つだ。
さて、商品名にも冠している「ヴァイツェン」は小麦麦芽を50%以上使ったビールのことだ。一般的にビールの材料になるのは大麦だが、白ビールや小麦ビールとも言われる小麦を使ったビールも一定数存在している。
とはいえ「いくら小麦から作るビールがあると言っても、パンを経由してビールを作る」というのはいささか乱暴すぎないかと思うかもしれないが、そもそもかつてのビールとパンは密接に結びついていたとされている。
古代エジプトの時代では大麦や小麦で焼いたパンを発酵させてビールを作っており、このビールを種にしてパンを焼くことがあったという。
因みにこの辺りの詳細な手順については麒麟麦酒が早稲田大学と共同で研究をしており、コラムとして公開されている。
現代でも飲まれているものでは、東欧で飲まれているクヴァス(квас)というライ麦と麦芽、あるいはライ麦パンと酵母に水を加えて発酵させて作る微炭酸飲料がある。アルコール分も多少含まれるらしいが基本的にはソフトドリンクとして扱われ、特に夏場に好まれる。
大麦・小麦とライ麦の違いこそあれど、当時のビールに近いものだと思う。こちらもパンからクヴァスを作った後にさらにパン種にすることがあるという。
味については「甘い麦茶」と喩えられることが多いが、自分はライ麦の香ばしい香りと発酵香が混じり合った「パン (更にいうなら甘さと香ばしさの強い黒糖ロール)を液体にしたそのもの」という印象を持っている。
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本場のものではないが液色などが分かりやすいと思う
さて、前置きが長くなってしまったが、よく冷えたところでコップに注いで飲んでみることにしよう。
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液色は深いキャラメル色をしている。
小麦は大麦と比べてタンパク質が多いため
濁りが出ることもヴァイツェンの特徴らしい。
味は非常にスッキリとしている。苦味が少なく、アルコール感もほぼ無い。飲み終えた後は鼻にバナナのような甘い風味が抜け、舌の上に爽やかな旨みが残る。飲みごたえというよりも爽やかさを楽しむようなビールだ。
あの強い甘さこそないが、軽やかな味わいは見た目と同様にそれこそクヴァスを思わせる。飲み終えてから気づいたのだが、甘いものをつまみにこれを飲めばかなりクヴァスの味わいを再現できるのではないかと思った。
通じる人が少ないので例えとして不適切なのは分かっているのだが、発酵感と甘さを抑えたクヴァスのような味なのだ。
これでアクローシカ (甘くないクヴァスを使った冷製スープ。夏に食べられる)を作れるのではないかと思ったが、季節外れであることと食べたことはないが正直好みの味ではなさそうなのでやめた。
一般的にビールは慣れるまで好き嫌いが大きく分かれる飲み物で、酒の選択肢が増えた最近の若者では飲まない人も珍しくない。
しかしこのビールはキャッチーな見た目の通りに飲みやすく、初めての酒にも良いかもしれない。実を言うと白ビールは個性が強く自分の口には合わないものが多いイメージだったが、これはごくごく飲むことができた。シライシ坊やの笑顔に恥じない、非常に親しみやすいビールだ。
見かけた際は話の種に、一度飲んでみると面白いかもしれない。
ただし最近のビールではやや珍しく、瓶抜きが必要なタイプの蓋なのでそちらは注意しよう。
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