Jリーグ

今年もJリーグが開幕した。
今でこそ当たり前過ぎてなんとも思わないが、
Jリーグ以前のサッカーと言えばキャプテン翼だった。
学生時代に友人が「翼じゃなくてマラドーナ見とけばよかった」とボヤいていた。それくらいサッカーの認知度は低かったし放送も特に無かった。

Jリーグができてから、「おらが街のチーム」という意識や、
どこそこのチームは南米ぽくてどこそこはヨーロッパ風というような事に、皆夢中になって話していた。

開幕当初は「ヴェルディ川崎」が読売グループのバックアップが強く、
カズやラモスというスポーツニュースで聞いた事のある名前が沢山所属していて、強くて人気だった。

しかしご存知の通りJリーグの理念と読売グループの考え方が真っ向から衝突し、読売が手を引くことでJリーグは筋を通してやっていくという姿勢をきっちり示して見せた。ヴェルディというチームは弱くなったが、Jリーグのあり方として「例外は認めない」という意志も示す事ができた大きな出来事だったと思う。
読売側の名誉のために付け加えると、実業団でサッカーをやってた時にヴェルディの前身の読売クラブが強豪としてJリーグ人気の土台になった事は否定できない。

Jリーグができて20年ちょっとですかね。
間違いなく日本のサッカーの発展に大きく貢献したと思う。
Jリーグができるまではワールドカップと言っても一部のマニア受けする程度だったんじゃないかなと思う。
それが紆余曲折を経ながらも常連として出場できるようになって、
サポーターも熱心に応援するので素晴らしい事だ。

とはいえヨーロッパや南米に比べると、まだ20数年でもある。

一つは参加しているチームの運営がうまくいかないチームの方が多い事。
私は横浜フリューゲルスというチームを応援していた。
理由は長崎県を準フランチャイズとして公式戦をやってた事や、
フリューゲルスの前身の全日空が実業団でそこそこ強かった事。
個人的にJALではなくANAが好きなこと。
このあたりの理由で応援していた。

実際、才能のある若手もいたし外国人選手もかなり強力だった。
前園楢崎はフリューゲルス戦士のイメージが今もあるし、
ガンバの顔である遠藤もフリューゲルスの若手の一人だった。
左足フリーキックをズバズバ決めるエドゥーや、モネールダンスのモネールジーニョ・エバイール・サンパイオのブラジルトリオなど、当時はプラチナチケットであったJリーグに華を添えた面々もいた。

しかし親会社の業績悪化のためチームは解散。
最後に出場した天皇杯で優勝して解散という選手の意地を見せた上での解散だった。当時の監督が「カップ戦で優勝したチームが解散なんて普通はありえない」とコメントしていたのを覚えている。

とはいえお金がないなら手放すしか無い。
選手に罪は全く無い。

ただその後の処置がよりによってというマズさだったと思う。
フリューゲルスは解散し、同じ横浜市をホームとする横浜マリノスに吸収合併という形になった。
これはサポーターとしては一番合併したくないところに合併されたと感じる。
今も同じ地域にフランチャイズを置くチームや、隣の自治体にあるチームとの試合を「○○ダービー」と呼んで盛り上げている。例えばさいたま市の大宮と浦和の試合は「さいたまダービー」という風に。

マリノスとフリューゲルスの関係もそれに近く、
マリノスの方が安定して強かったが、「マリノスにだけは負けるな!」と応援していた。きっとマリノスサポーターも同じように応援していたと思う。
いわば不倶戴天の敵に吸収合併されるというのは、チームが無くなる虚しさに、マリノスに完全敗北してしまったような虚無感が上塗りされた。
マリノス側も複雑だっただろうが決まってしまったものは仕方ない。

それをきっかけにJリーグを観るのをやめてしまった。

抗議の意味ではない。
応援していたチームが無くなって次のシーズンにマリノスやフロンターレを応援できるかと言えばそんな簡単にできるものではない。
それに世の中の景気もかなり怪しい状態だったので、Jリーグは発足した頃の輝きを失いつつある時期でもあった。

当時、飲食店でアルバイトをしていた時、
大晦日の天皇杯でセレッソ大阪が奮闘していた。
この年のセレッソ大阪はJ2への降格が決定していたので、
男性2人組のお客さんが酒を飲みながらずっと嘆いていた。
大晦日は店がいつもより少し早く閉まる。
閉店時間なので退店をお願いした時にセレッソの話がこっちにきた。
「お兄さん、セレッソこれだけ頑張って下に落ちるとかやってらんないよ」とおっしゃる。「お兄さんはこの無念さわかるかなあ」とお嘆きだったので
「わかりますよ。私、フリューゲルスファンでしたから。」と返事すると、
「ええ!フリューゲルスの!そうかあ、チームがあるだけでも幸せなんだねえ」と驚かれた後に、固い握手をしていただいて退店されていった。

一昨年になるが、Vファーレン長崎がフロントのずさんな経営のため、同じように解散の一歩手前という状況になった。せっかく応援しようと思ったらこれだ。数億円の使途不明金があるとの事だったが、ジャパネットたかたの全面バックアップで息を吹き返し、J1で1シーズン戦う事ができた。今年はJ2に降格したが、やはりチームが存在するというだけで違いがある。チーム消滅は二度と無いようにしてほしい。

そして、Jリーグがあるからこそ発展したが、Jリーグのせいで、という事もある

昔はサッカーについては遊びの一部であり、それこそボール一つでどこででも遊んでいた。スター選手についてもなんとなく知ってる情報で話していたし、身近なものだった。

今は、Jリーグや代表を目指すためにサッカースクールでサッカーを行う事が多く、Jリーグや欧米のリーグも地上波で情報が流されるため、うっかり見当違いの事を言うとサッカーファンにボロクソに言われるのが残念だ。
日本を強くするためには必要だが、サッカーに関わるには勉強が必要というハードルがついてしまったように思う。

また、これは報道のせいだと思うが、初めてワールドカップに出た時にワイドショーで騒がれていたのはフーリガンはやばいという情報だった。
しかし実際に大会が始まるとフーリガンが暴れる事はなかった
むしろ阪神ファンの方がえげつないなんて冗談も出たほどだ。
だがこれを信じてか、暴れていいものだと信じ込んでいる一部のJリーグサポーターが現在進行系で暴れている。

ヤジならまだしも、小便の入った水風船を投げつけたり、ロアッソ熊本のキャラクターを捕まえて着ぐるみの頭を取ったりやりたい放題。
このあたりを厳しく取り締まる事や、サポーターが自重する事が求められる。

横柄なサポーターの中には、「一般人ごときは何も知らない」というおごりがあるのではないかと推測している。そういう意味ではやはりまだ20数年では未熟なのだ。

Jリーグは100年構想と掲げて発足した。
まだ5分の1程度の道程である。
サッカー協会や審判といった運営サイドも、チームも、サポーターもこれからもっとサッカーを特別ではない当たり前にあるものにするために成熟が必要なんだろう。

成熟して、いわば一周回って野良サッカーが当たり前の光景となる頃に、日本はもっとサッカーが発展しているに違いない。


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