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カフェのシーンがあったとして

今書いている小説の主人公は多分、酒が弱い。

色んなシーンを断片的に書いているが、酒を飲むシーンが今のところ殆どなく、コーヒーさえ飲まない。主人公の好むのはケーキや刺身定食などで、飲み物へのこだわりはなく、おそらく家にビールもウイスキーの一本もない。僕自身と対極にある気がする。

僕はケーキが苦手というか、「グラム単価が高い」とすぐ計算してしまうというか、それならスーパーのマカダミアナッツなどの方が自分の求めているものと価格が合っている気がする。

刺身定食も同じで、僕はあまり食べたいと思わない。
どうせ外食するなら刺身よりも寿司とか揚げ物とか作ること自体に技術や手間のかかりそうなものを選んで元を取りたいと考えてしまう。
これは僕がまだ若い?からか、本当に食べたいものよりも自分のロジックに適合するものを選びたい年頃からか、単にそういう性格なのだとも思う。

小説の主人公はそういう性格ではなく、単純に自分が食べたいものを選び実行する素直な性格かもしれない。その素直さが危うさでもあり、素直でない人間から見れば隙だらけの行動ともとれる。

素直でない人間はこの世に存在し、そういう類の人間におそらく僕も含まれているが、素直な人間が素直に行動している時から、他者に気を遣ったりし始める、そのジョイントの瞬間がいつなのかをいつも見ている。



仮にカフェのシーンがあったとして、そこで主人公が何を頼み、後から来た女性が何を頼むかで大体の関係性、今後の流れ、カフェで会った目的も説明できると思う。
仮に、主人公が先に到着していて、勝手に自分の分のサンドイッチとコーヒーとケーキを頼んでいたとする。これは、女性との歩調を合わせない性格か、女性とは既に打ち解けていて親密な関係。大きく分けて二つの想像が可能になる。
逆に、来るまでは何も頼まない。となると、早めに来る真面目さと歩調を合わせる紳士タイプ、立場が下、受動的な性格、暇で主体性がない、のように解釈できる。

来るまでの間に、スマホで連絡を取り、先にどうぞというやりとりがあってコーヒーだけ先に頼んでいたら模範的過ぎてつまらないと感じるので、そういう展開は好ましくない。
何も頼まずじっと待たれていても遅く来た側が気を遣うのを見越してコーヒーだけ頼んでおく、それが紳士的なのかはよく分からないが、もし自分が女性だったらそういう「いかにもな気遣いはいらないし、遅れたのはこちらが悪いからむしろ好きなもの頼んでいて欲しいと思うような気がする」

ただ、「この場面ではいかにも模範的な男」=「これから模範的でなくなる可能性あり」ともとれる。しかもその後の本文で「彼女は僕が先に頼んでいたコーヒーのカップを見て、バナナジュースを注文した」と書けば、女性が男性の模範的な行動にうんざりしている可能性、単にコーヒーが苦手、甘いもの好きだがさっさと終わらせて帰りたい気持ち、といった複数の可能性を表現できる。

カフェは仕事でもプライベートでもない、適度な緊張感が漂っている。
パブリックとプライベートの中間の人格が登場するので、その人の素に近い部分が現れて面白いと、日々カフェで働きながら思う。

小説を書きまくってます。応援してくれると嬉しいです。