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大壹神楽闇夜 1章倭 5決戦5

 翌朝、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は伊都瀬(いとせ)や神(みかみ)達を集め朝廷を開いた。其の席には別子(べつこ)の長である都馬狸(とばり)と三佳貞(みかさ)の姿もあった。
 夜麻芽(やまめ)は各地に散らばっている夜三子(よみこ)と卑国にいる都馬狸(とばり)に伝言を送っていたのだ。伝言を受け取った都馬狸(とばり)や夜三子(よみこ)達は出来る限りの娘達を集め迂駕耶(うがや)に向かった。其処で三佳貞(みかさ)から話を詳しく聞き今後の動きを話し合う為に三佳貞(みかさ)を連れて伊都瀬(いとせ)に会いに来ていたのだ。
 伊都瀬(いとせ)から此度の戦で千人の娘が死んだ事に都馬狸(とばり)は非常に胸を痛め、自分の考えを恥じた。もし、あの時卑国に戻って来たのが神楽で無かったら娘達は未だ卑国だったであろう。と、なれば伊都瀬(いとせ)達は全滅していた可能性も否定は出来ない。伊都瀬(いとせ)と二万九千の娘が生き残り倭族を撤退させる事が出来たのは間違いなく神楽の功績であると都馬狸(とばり)は思った。
「皆よ…。此度の戦見事であった。」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は皆を見やり言った。皆は其の言葉を心から嬉しく思った。だが、倭族に勝利したわけでは無い。寧ろ本番は此れからである。倭族の援軍は刻一刻と八重国に向かって来ている。其の数は三万。そして更に三万の増援が押し寄せてくる。此れは一度に大量の兵を送り込めるだけの船が無いからである。 
 都馬狸(とばり)は此れは非常に深刻な問題であると言った。確かに此れは問題である。一万の兵を撃退するのに二万四千の兵を失ったのだ。此処に三万の兵が襲って来れば間違い無く全滅である。そして更に三万の兵が上陸して来れば完全に根絶やしにされるだろう。
「だが、戦はまだ始まったばかりである。我等は此の国を守り民を守らねばならぬ。」
「其の事だが大神…。今の軍勢では我等は勝てませぬ。」
「其の通りだ。此処は民を兵に…。」
「ならぬ…。民は国の宝。民無くして国は成り立たぬ。」
「だが…。」
 と、灘国の神、菜矢野釜那(なやのかまた)は伊都瀬(いとせ)を見やる。伊都瀬(いとせ)は何も言わず黙っている。何か良い案がないかと思案しているのだがイマイチ良い案が思い浮かばない。だから、チラリと都馬狸(とばり)を見やった。都馬狸(とばり)も良い案が思い浮かばないので三佳貞(みかさ)を見やった。三佳貞(みかさ)は、はぁ…っと溜息一つで皆を見やる。
「我等は李禹(りう)の言葉を信じておる。それつまり油芽果(ゆめか)の言葉じゃからじゃ。」
「つまり ?」
 氷室が問う。
「秦兵は我等を必要としておる。」
「秦の民を助けるが先と言う事か ?」
「否…。其れは我等が役目。」
「なら、其れ迄我等に持ち堪えろと。」
「其れは無理じゃ。我は倭族の強さも悍(おぞ)ましさも知っておる。我が言いたいのは其の間だけでも民を兵としてはどうか ? と言う事じゃ。其れに増援が此の砦に来るとは限らぬ。最南端の湾に来る可能性もありよる。」
「三日月湾か。其れは妙案だ…。」
「確かに良い案だ。だが、秦の民は何処にいる ?」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)が問う。
「船じゃ…。」
「船にいる民をどの様に解放する ? 此方が下手に動けば民は殺されてしまうのではないか。」
「其の通りじゃ。」
「つまり…。無理と言う事だ。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は花水を飲んだ。
「否、船を奪うと言う手もありよる。」
「船を ?」
「じゃよ…。」
「成る程…。だが、其れは非常に危険だ。秦の民が殺されるやも知れぬ。」
「では我等は此のまま倭軍と秦軍を相手に戦い続けると…。」
「そうだ。だからこそ皆に良き案を求めておる。良いか…。民を兵とするは最後の妥協である。先ずは考え策を講じるが先だ。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は一括した。其れから話は思う様に進まず昼を迎えた。皆が様々な策を無理矢理考える中で伊都瀬(いとせ)、都馬狸(とばり)、三佳貞(みかさ)の三人はイライラしていた。彼女達には民を守ると言う概念が無かったからである。三佳貞(みかさ)は若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)を殺してしまった方が良いのではないかと本気で考えていた。
 その頃神楽は吼玖利(くくり)の紬(つむぎ)と自分の紬を洗いに川に向かっていた。紬には吼玖利(くくり)の血と侍女の血がべったりと着いている。勿論神楽の紬は更に血だらけであった。神楽は川に着くと血の着いた紬を持ったまま川に入って行った。
 ジャバジャバと紬を洗うが血は綺麗には落ちない。真っ白な紬はほんのり赤色がのこる。神楽はまだ綺麗になるだろうとジャバジャバしたが、取れる事は無かった。だから神楽は洗った紬を川辺に置き着ている紬を脱いで体を洗った。
 水にプカリと浮いて空を見やれば昨日の事が嘘の様である。空は青く白い雲はゆっくりと流れ…。其れだけを見ていれば平和其の物である。ずっと目を背け空を見ていたのなら平和な世界の中で生きていけるのかもしれない。
 否…。
 青い空もずっと青い訳ではない。黒い雲に覆われ時には雨を降らす。雨が降れば空を見やり平和だとは思わない。と、神楽は川から上がると洗った紬を広げて置くと川辺に寝転び紬が乾くのを待った。そして神楽は又スヤスヤと眠りについた。
 暫くして神楽は目を覚ました。九月であっても未だ暑い。流石に真夏の様な暑さは無いが其れでも十分汗は流れてくる。だが、真夏と違い夜は涼しく過ごしやすい。神楽は又川に入り汗を流した後紬を着て戻って行った。
 宿舎に戻ってみると吼玖利(くくり)は起きていたが、未だ体は腫れているのでグッタリである。神楽は吼玖利(くくり)の横に腰を下ろし膝枕をしてやった。
「神楽…。」
「なんじゃ ?」
「我は裸じゃかよ…。」
 恥ずかしそうに吼玖利(くくり)が言った。
「洗いに行っておったじゃかよ。」
「皆が我の体を見ておるぞ。」
「……。仕方ないじゃか。」
 と、神楽は紬を広げ吼玖利(くくり)に掛けてやった。其れから暫く吼玖利(くくり)は神楽の太腿にベッタリとくっついて甘えていたが暫くすると又寝てしまった。
 吼玖利(くくり)が寝てしまったので、神楽は宿舎から出て行き砦内をブラブラ歩きに行った。外は慌ただしく死体を集めたり壊れた箇所を兵士達が治していた。娘達も兵士のお手伝いをしていたりしているがどう見ても邪魔をしている様にしかみえなかった。娘達はこの様な作業が苦手な様だ。と、良い匂いがするので神楽は匂いに釣られてフラフラと歩いて行くと、娘達がお昼ご飯を作っていた。
「ほ〜。ええ匂いじゃか。」
 と、神楽は見やる。
「もうちょいで出来よる。待っておれ。」
 ご飯を作りながら娘が言った。
「我はペコペコじゃかよ。」
「神楽は頑張りよったからのぅ。一杯食べると良い。」
 娘はニコニコと笑みを浮かべ言った。だが、其の笑みはどことなく寂しそうであった。が、誰もその様な事は口にはしない。明日は我が身…。否、戦って死んでいった者を弔えるのは、敵に勝つ事であると知っているのだ。
「一杯食べよる。我はまだまだ殺さねばいけん。」
 と、言って神楽は又テクテクと歩いて行った。暫く中を歩いていると氷室山宇治(ひむろやまうじ)が声を掛けて来た。
「神楽殿。」
 と、氷室は神楽の元に駆けてきた。
「おー。氷室殿ではないか。」
「いや、久しぶりだ。ずっと会いに行こうと思うておったんだ。」
「無理せんで良い。其方は神(みかみ)じゃ。兵を纏めねばいけん。」
「まぁな…。所で何をしているんだ ?」
「パトロールじゃ。氷室殿は何をしておる。」
「儂か ? 儂は朝廷の議題について考えておったんだ。」
「じゃかぁ…。」
 と、神楽は袖をバタバタさせて氷室に屈めと催促する。
「な、なんだ ?」
 と、氷室が腰を落とすと神楽は肩に跨った。つまり肩車である。
「神楽殿…。此れは ?」
 氷室が問う。
「男は女子(おなご)を担ぐもんじゃ。」
 と、神楽は又袖をバタバタさせる。立てと言っているのだ。
「神楽殿…。此れはちと違う様な気がするのだが…。」
「違うておらん。此れがええんじゃ。先がよう見えよる。」
「そうか…。」
「ほれ、進むのじゃ。」
 と、神楽が言うので氷室はテクテクと歩き出した。
「其れで朝廷の議題とはなんなんじゃ ? 難しい話じゃか ?」
 と、神楽が問うたので氷室は朝廷での話し合いを神楽に話してやった。話をしている間神楽は無言だった。話が難しかったのか、興味が無かったのかは分からないが神楽は何も言わなかった。氷室が問うても”じゃなぁ…”と言うだけである。
「大神の気持ちは儂にも分かる…。だが、此のままでは保たぬ。」
「じゃなぁ…。」
「民を徴兵する以外に如何様な策があるのか。」
「じゃなぁ…。じゃが、民を徴兵しよっても我等は勝てぬぞ。」
「神楽殿…。」
「敵は強いじゃかよ。其れに我等の武器は通用せぬ。我等はもっと先に行かねばならぬ。」
「分かっている。だが今更武器を強化するにも…のぅ。秦の民を解放出来るのが一番なんだが…。」
「秦の民を解放しても勝てぬじゃかよ。」
「勝てぬか…。なら、戦わぬが良いか。」
「じゃなぁ…。」
 と、神楽は澄み切った空を見やった。
「大神の言う様に徴兵は…。」
「其れは違いよる。勝てぬからと戦わぬは愚かであろう。国は民を守らぬ。民が国を守るんじゃ。大神も民、貴族も民、豪族も民、我等も民、兵も民、兵で無い者も民…。此の地に生まれし者皆が民じゃ。皆で戦わねば滅亡してしまいよる。」
「だが勝てぬと…。」
「負けるとは言うておらん。」
「だが勝てぬ…。」
「じゃが負けもせぬ。負けねば何は勝てよるじゃかよ。」
「そんなものか ? 儂は心底怖い。」
「我もじゃよ…。其れより都馬狸(とばり)と三佳貞(みかさ)は何て言うておる ?」
「さぁ…。良い策は無いみたいだ。」
「じゃかぁ…。」
 と、神楽は少し近づいた空を見やった。
 ブルっと体が震える。
 更に、ブルブルっと体を震わし神楽は何とも言えぬ清々しい表情を浮かべた。
「神楽殿…。」
「何じゃ ?」
「わ、儂の背中が何やら生暖かいのだが…。気のせいか ?」
「……。うむ、少しチビってしまいよった。」
「チビったか…。」
 勿論チビった程度の量ではない。
「気にしてはいけん。よう有る事じゃ。」
「チビったにしては量が多くないか。」
 と、氷室はゲラゲラと笑った。
「……。漏らしてしまいよったか…。」
「そうか…。まぁ、神楽殿の小便なら験担ぎに持ってこいだな。」
 と、氷室は更にゲラゲラと笑いながら暫く神楽との楽しい一時を過ごした。其れから神楽はお昼ご飯を吼玖利(くくり)と一緒に食べると日が沈む迄稽古に励んだ。
 日が沈み砦の外と中には松明が灯される。薄ぼんやりと世界を照らす灯りは寂しげである。其の中を若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は松明を片手にテクテク歩く。其の表情は硬く矢張り寂しげである。夜の闇を掻き分ける様に歩き城壁に辿り着くと若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は梯子を登り上に上がった。
「大神…。どうされたのです ?」
 大神の突然の訪問に衛兵が問うた。
「なに…。外の様子が気になってな。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は腰を下ろし海を見やる。濃い闇は松明の灯り程度では消す事が出来ず海を見やろうと闇でしか無い。ただ、波の音が其の先に海がある事を教えてくれるだけである。
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は波の音を静かに聞いている。と、梯子を登る音が聞こえた。
「大神も海を見に来たじゃか。」
 と、言ったのは神楽であった。神楽は大神の右横に腰を下ろし右足を立てる。
「おー。英雄のお出ましか。」
「何を言うておる。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)にコップを渡し酒をついだ。
「此れは有難い。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)はグイッと飲み干し、今度は若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)が神楽に酒をついでやった。
「所で神楽…。何故其方らは右に座る ?」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)が問う。
「我等は夫婦(めおと)にはならぬ。其の意思表示じゃ。」
「そうか…。其れで右に座るのか…。」
 と、男は右に座り右の膝を立てて座る。逆に女は左に座り左の膝を立てて座るのが習わしなのだが、卑国の娘は何故か右に座り右の膝を立てて座る。多くの者は此れに違和感を感じるのである。
「子作りの時は左に座りよる。」
 グイッと酒を飲み言う。
「子作り… ? うむ、確かに言われてみればそうだな。伊都瀬(いとせ)殿も其の時は左に座っていたか…。」
「なんと…。大神はあの様な娘が好みじゃか…。」
「昔は可愛かったんだぞ。」
「伊都瀬(いとせ)は昔も今も伊都瀬(いとせ)じゃかよ。」
 と、二人は暫し酒を飲みつまらぬ話で盛り上がった。若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は色々な話を実に楽しそうに話した。伊都瀬(いとせ)の事、国の事、民の事…。此の話を聞いているだけで若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)がどれだけ民を大切にしているのかが分かる。朝廷の席で頑なに徴兵を認めなかった理由も理解出来た。
「此処の浜辺は良い浜辺でな…。美味い亀が沢山捕まえられる。漁師は漁に出ず亀を捕まえるんだ。楽しそうに…。此の浜でな…。こうやって…。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は亀を捕まえる仕草をしてみせた。
「大神も亀を取るじゃか ?」
「何を言うておる。儂は誰よりも上手い。」
「じゃかぁ…。」
 と、神楽はスッと浜を見やる。其の表情は硬く寂しげであった。
「民を大切に思うておるんじゃな。」
「当たり前だ…。」
 と、其れから暫く二人は黙ったまま浜を見やった。若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は神楽の表情と態度で神楽が何をしに来たのかを悟っていた。だが、彼は逃げる事も争おうともしなかった。ただ静かに酒を飲み闇に飲み込まれた海を…。否、ただ静かに波の音を聞いていた。
「儂を殺しに来たか…。」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)が小さな声で言った。
「応…。」
「伊都瀬(いとせ)の命令か。」
「違いよる。」
「そうか…。儂は間違えておるか ?」
「間違えてはおらぬ。じゃが…。其の考えは今ではない。」
「かも知れぬな…。」
 酒をグイッと飲み言った。
「民が大事なら先ずは国を守らねばならぬ。我はそう思いよる。民を守り国を捨てるは民を捨てると同じ。」
「同じか…。」
「じゃよ…。国無くなれば誰が民を守るじゃかよ。勘違いしてはいけん。国がありよるから民がおる。民は国の為に、国は其方の為に、其方は民の為にじゃ。皆で守らねば滅んでしまいよる。」
「其れは分かる…。分かるが…。儂が守ってやらねば誰が民を守る。」
「大神…。大切な事は今では無いぞ。今の民を守り後の子を奴婢の子にするが正しき事とは我は思わぬ。」
「……。」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は神楽の言葉に大きなショックを受けた。彼は今を必死に見やり、神楽は先を見つめ話している。今の勝ち負けでは無く先の勝利を見ているのだ…。此の戦で多くの兵が死に民を徴兵すれば多くの民を失う事になる。其れでも負けねば何は…。
 闇が消え去るか…。
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)はジッと闇を見やる。
「我等が負ければどの道民は殺されてしまいよる。同じ死ぬなら戦って死ねば良い。争えば良い。忘れてはいけん。兵は何の為に死んで行きよったかを…。民を守る為ではないぞ。此の国を守る為、後の子に繋ぐ為じゃ。」
「繋ぐ為…か。確かに神楽の言う通りだな。分かった。なら、其方らのやりたい様にすれば良い。だが、儂はまだ死ねぬ。此の戦場で多くの兵が死んだ以上、儂の死ぬべき場所は戦場でと決めておる。」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)がそう言うと神楽は前を向いたまま言った。
「三佳貞(みかさ)…。聞いての通りじゃ。」
「分かりよった。」
 そう言って三佳貞(みかさ)は合口をしまった。若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は驚いて後ろでに振り返り三佳貞(みかさ)を見やる。
「いつの間に…。」
「亀の話からじゃ…。」
 ニコリと笑みを浮かべ三佳貞(みかさ)が言った。
「そうか…。真三子の娘は恐ろしい。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)はケラケラと笑った。三佳貞(みかさ)は神楽の右横に腰を下ろし 其れから三人は酒を飲みながら朝まで語り合った。
「所で一つ聞きたいのだが…。民を徴兵すれば我等は勝てるのか ?」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)が問うた。
「勝てぬ…。」
「勝てぬか。」
「もっと強い武器がいりよる。」
「武器か…。」
「レールガンが有れば一発なんじゃがのぅ。」
 神楽が言った。
「我はガンダムをオススメしよる。」
 三佳貞(みかさ)が言う。
「うーん。其れは中々に難しい話だな。」
 と、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は首を捻った。
「其れはそうと我に良い案がありよる。」
 唐突に三佳貞(みかさ)が言った。
「良い案 ?」
「じゃよ…。此のまま行けばどの道、末国か不国は奪われてしまいよる。じゃから…。」
 と、酒を飲み乍ら三佳貞(みかさ)は自分が考えている策を話し聞かせた。若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は其の策を見事な策であると言い其れを実行する事にした。神楽は何がどうなのか良く理解出来なかったが”うむうむ…。矢張り三佳貞(みかさ)は天才じゃ。”と言った。此の策は次の日の朝には神(みかみ)に伝えられ速やかに実行された。この日より更に十日後…。本格的な戦が始まるのである。

        大壹神楽 闇夜 

         一章 倭 

          5 決戦 
          終わり。

        次回敗走に続く。

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