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大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇9

「しかし…。倭人は何をしておるんじゃ。」
 コッソリと第二砦の様子を伺っている日美嘉が言った。三佳貞と日美嘉は倭人の動向を探るべく毎日の様に第二砦に赴いていた。其の中で泓穎を殺す算段をたてる為である。
「分かりよらん。迂駕耶に行きよらんのじゃかのぅ…。」
「今日で十五日じゃ。」
「じゃよ…。既に迂駕耶に立った後じゃぁ思うておったじゃかよ。」
「まったくじゃ…。しかし、こうも警備が厳重じゃと忍び込めよらんぞ。困りよった…。」
「矢張り船に忍び込むしかありよらんじゃか…。」
「じゃかぁぁ…。じゃぁ言いよっても何で倭人はこうも厳重な警備をしておるんじゃ ? 我等は全滅しよったと思うておらんじゃかか…。」
 と、日美嘉は首を傾げて見せる。
「ほんまじゃかよ…。そろそろ警備が緩むと思いよったんじゃが…。」
「緩みよらんのぅ…。」
 と、日美嘉が言うと後ろから”当たり前であろぅ…。”と誰かが言ったので三佳貞と日美嘉は慌てて振り返った。
「だ、誰じゃ ?」
 日美嘉が問う。
「李禹…。」
 三佳貞が言った。
「李…禹… ? 誰じゃか其れは ? 三佳貞の知り合いじゃか ?」
「じゃから、ずっと話よったではないか。」
 困った顔で三佳貞が言う。
「話しよったか ?」
 と、日美嘉は首を傾げる。
「毎日話しておる。」
「毎日 ? 其れは兎の話じゃか。」
「じゃよ…。」
「兎はピョンピョンじゃか。人では無いであろう。」
「…。我は人の話をしておったじゃかよ。」
「じゃかぁぁ…。」
 と、日美嘉はナンジャラホイである。
「そろそろ良いか ?」
 李禹が言った。
「そうじゃった…。」
「そうじゃ…。秦の娘が何用だ。」
「用も何も其方らが此処に来ておる事は既にバレておる。」
「バ…。な、何を言うておる。バレておるなら既に我等は殺されておる。」
 日美嘉が言った。
「さて…。帥升が何を考えているかは分からぬ。だが、其方らが身を隠しておる場所も知っておるぞ。」
「な、なんと…。」
「あの山の向こうから毎日煙が上がっておる。」
 と、李禹は指を指す。
「煙 ? 火事じゃか ?」
「毎日火を焚いておるであろう。」
「火を…。ま、まぁ、ご飯を作りよるからのぅ。」
「その煙が此処からでもハッキリと見えておる。」 
「煙が…。其れは盲点だ。」
「で、あろうな。既に何人かの倭兵が調査に行っておる事にも気づいておらぬか…。」
「調査に来て何もせずに帰りよったか…。」
 三佳貞が言った。
「…。三佳貞は不細工じゃからのぅ。気持ちは分かりよる。」
 クスリと笑い日美嘉が言った。
「コレコレ…。我は人気じゃかよ。」
「初めて聞きよったぞ。」
「其れは嘘じゃ。」
「嘘ではない。」
「嘘じゃかよ。男は皆エロな目で我を見ておる。」
「フ…。思い込みの激しい娘じゃか。」
「思い込みでは無いぞ。大体日美嘉も何もされておらんでは無いか。」
「カワユ過ぎて近づけんかったんじゃ。」
「は ? どの口が言うておる。」
「此の口じゃ。」
 と、日美嘉は口を尖らせ舌を出した。
「あ…。あー。其方らは何か…。蹂躙されたかったのか ?」
 困った顔で李禹が言った。
「んー。蹂躙は好みでは無い。」
 日美嘉が言った。
「我もじゃ…。」
 三佳貞が言う。
「なら、話を戻しても良いか ?」
「話 ? 何の話じゃった ?」
 首を傾げ日美嘉が問う。
「マジか…。」
「日美嘉は気にせんで良い。」
「分かった…。で、其方らは毎日此処で何をしておる ?」
「泓穎を殺す算段を立てておる。」
「其れは無理だ。否、仮に成功しても新たな帥升が八重国を攻めに来るぞ。」
「来たら又殺す。」
「虐殺されて終いだ。其れよりも我等を…。帥升達は暫く此の島から動かない。好機は今しかないんだ。」
「動かない ? 何故 ?」
「二十日前に帥升は本国に増援の命を出した。」
「増援 !」
「航路に問題が無ければ後十日程で本国に使者が着くはずだ。」
「なんと…。」
「良いか…。帥升には四人の妹がいる。内三人の妹が大部隊を率いて八重国に来る筈だ。其の中には倭族最強部隊も含まれている。此の島にいる倭兵とは格が違う部隊だ。」
「ほぉ…。つまり格下の兵士だけで我等に勝つつもりじゃったと…。フン。我等も舐められたもんじゃ。」
 気に食わぬ顔で日美嘉が言った。
「格下にボロ負けではないか…。」
「コレコレ…。我等は暗殺専門じゃ。戦用では無い。」
「そうなのか ?」
「そうだ…。我等は暗殺を得意としておる。戦向きでは無い。」
 三佳貞が答える。
「其れであの様な戦い方だったのか…。」
「じゃよ…。」
 誇らしげに日美嘉が言う。
「だとしても今の八重国では勝てぬ。分かっておるであろう。そもそも武器も鎧も違い過ぎる。あれでは勝てぬ。倭族の本隊が来てからでは遅いんだ。」
「そう思うなら李禹が迂駕耶に行けば良いであろぅ。我等は此処でやる事がありよる。」
 三佳貞が言った。
「だから…。今帥升を殺せば状況は更に悪化すると言うておる。」
「悪化も何も其方ら都合で倭族を連れて来ておいて勝手を申すな !」
 声を荒げ三佳貞が言った。
「勘違いするな。確かに此れは我等が為だ。だが、其方らが為でもある事…。我等と共に…。始皇帝は共存を望んでおられるのだ。」
「李禹…。共存するか否かは我が決める事では無い。本来なら迂駕耶に報告するが正であろう…。じゃがの、家族を殺され、兵や民が虐殺され…。」
 と、三佳貞の手がブルっと震えた。
 ブルブル、ブルブルと手が震えだし、やがて三佳貞の体がガタガタと震え出した。
 三佳貞は必死に震えを抑えようとするが、其れは更に強く震え出す。
 脳裏に浮かぶ美佐江の首。
 山の様に積まれた首。
 捨てられた臓器が頭の中でグルグルと回る。
「此れは戦じゃ…。兵や民が…。家族が死ぬは当然じゃ。じゃが…じゃが…。倭人は…。倭人は我等を食いよったんじゃ !」
 三佳貞は力一杯声を荒げ叫んだ。
 此の時の三佳貞の顔は正に鬼の表情だったと後に李禹は語っている。
「く…。食った… ?」
「わ、我は許さぬ。我等を獣の様に扱う倭人を我は決して許さぬ。」
「三佳貞…。」
「泓穎は我が殺す…。じゃから…。じゃから迂駕耶には李禹が行けば良い。」
 そう言って三佳貞は山に向かって歩いて行った。
「食ったのか ?」
「骨も残さずにじゃ。」
「骨も…。」
 と、驚く李禹を見やり日美嘉はニヤリと笑みを浮かべ山に戻って行った。李禹は来た道をテクテクと歩き第二砦に戻る。だが、李禹は西門をくぐった所で倭兵に捕えられた。
「アチャァァァ…。あの娘捕まりよったじゃかよ。」
 岐頭術奥義帰った振りを見事に決めた日美嘉が言った。
「ほんまじゃ…。」
 同じく帰った振りを見事に決めた三佳貞が言った。
 岐頭術奥義帰った振りとは帰った様に見せかけて同じ場所に戻って来ると言う難易度の高い技である。此の技は相手を出し抜き嘘を見破ったり、相手を翻弄したりする時に絶大な威力を発揮するのである。
「どうするんじゃ ?」
「ほっておくしか無いじゃかよ…。」
「じゃかぁ…。」
 と、二人はジッと其の様子を見やる。李禹は何か抗議している様子だったがそのまま連行されて行った。
 李禹が連れて行かれた場所…。 
 其れは泓穎の前である。
 泓穎は木陰の下に置かれた椅子に腰を下ろし涼んでいた。傍には大将軍である陽と王嘉がいた。暑いからであろうか泓穎は肌着姿で微妙な大きさの乳をポロンと出しているが、此れはごく普通の事である。今風に言えば三十才手前の女子がJKルックでダンスをしている様なものである。だから、此の泓穎の姿を見てエロを想像する者はいないのだ。もっと言えば男が上半身剥き出しでいるように、女子も上半身剥き出しでいる事はごく自然の事なのである。だから陽も王嘉も上半身は裸である。
 泓穎の前で李禹は跪き頭を下げる。
「ご苦労であった…。」
 李禹を見やり泓穎が言った。
「有難きお言葉…。ですが何故我は捕縛されているのでしょうか ?」
「なに…。三佳貞の事だ。まだ見ているやも知れぬであろぅ。」
「三佳貞は山に戻りました。」
「左様か…。」
 と、泓穎は李禹を睨め付け言った。
「応…。」
 李禹は視線を下げる。
「まぁ、其れは良い。其れより我が伝えた様に言いよったか ? 」
「お、応…。」
「其れで三佳貞は其方の話を信用したか ?」
「分かりません…。ですが何故我なのです ?」
「先にも言うたであろぅ。其方が三佳貞の友達だからだ。」
「友達などでは…。」
「フフフ…。其れは直ぐに分かる。」
「分かる ? 我の話を信用して行動すると…。」
 と、李禹は泓穎を見やった。
「李禹…。其方がどの様な話をしたかは知らぬし、その様な事はどうでも良い。」
「え ?」
「明日其方を処刑する。連れて行け。」
 表情を変える事無く泓穎は言った。
「え、え…。ちょ、ちょっとお待ち下さい ! 帥升…。何故我が !」
 突然の死刑宣告に李禹は戸惑い焦った。
「裏切りは死罪であろう。」
「わ、我は裏切って等…。帥升。何かの間違いです。どうかご慈悲を…。」
 と、嘆願する李禹を倭兵が無理矢理連れて行こうとするが李禹は必死に抵抗する。
「お願いです ! 帥升…。我は三佳貞の友達ではありません。」
 と、李禹は嘆願し乍チラチラと王嘉を見やり助けを求める。が、王嘉は素知らぬ顔である。
「そう騒ぐでない。心配せずとも三佳貞は友達思いな娘だ。」
「だ、だから…。三佳貞は…。」
「大丈夫、三佳貞が其方を助けに来る。」
「た、助けに ? 来るわけないでしょう。ちょ、ちょっと帥升。我にご慈悲を…。帥升。」
 と、騒ぐ李禹を倭兵は力ずくで連れて行った。
「まったく…。騒がしい娘だ。」
「だが、来なかったらどうするんだ ? 李禹は丸焦げになってしまうぞ。」
 陽が言った。泓穎は李禹を生きたまま焼くつもりなのだ。
「ふむ…。まぁ、其の時は皆で食べれば良いではないか。」
「だったら臓器は抜いておくか…。」
「其れが良い。後からでは何かと不便だからの。」
「なら、其の様に伝えておこう。」
 と、話が何ともな方向に進んで行くので流石に王嘉は焦って二人の前に出て跪いた。
「帥升、大将軍少しお待ちを…。」
「どうした ?」
「臓器を取り除けばあの娘は死んでしまいます。死んだ者を火にかけても娘達は助けには来ないでしょう。」
「確かに…。」
 陽が言った。
「其れに食べるのが目的では無いはず。」
「言われてみればそうだ。」
「なら、生きたまま焼くが良いかと…。」
「分かった。なら、其の様にすると良い。」
 と、泓穎は川に向かって歩いて行った。
 さて、その様子をある程度見ていた三佳貞と日美嘉は一旦山に戻って行った。此の先李禹がどうなるのかは三佳貞達には分からないが、この状況が利用出来るかもしれないと三佳貞は考えていた。何にしても泓穎達が暫くは高天原にいる事は確かである。
 なら…。無駄に焦る必要はない。
 と、二人は取り敢えず川に行き火照った体を冷やす事にした。
 真夏の日差しはギラギラと肌を突き刺してくる。中集落に放置された死骸からは悪臭が漂い変な虫がウジャウジャと湧いている。既に首の原型は無く。誰が誰だかは分からない。余りにも臭いので三佳貞と日美嘉は中集落を通り抜けせず遠回りして進む。だが、山の中に放置された死骸も獣や鳥に喰い散らかされ無残なものである。今は腐って変な虫がウジャウジャと湧いている。何処もかしこも悪臭が漂う地獄なのである。
 二人は出来るだけ悪臭が少ない場所を選び歩く。だが、真夏の日差しが腐臭を早め如何に戦が悲惨な物であるかを二人に語る。
 だが時は戻らない。
 無かった事にはならない。
 始まった戦は勝敗が着くまで続くのである。
 其れがいつ迄続くのか…。其れは誰にも分からない。
 ただ一つはっきりしている事…。
 其れは決して負ける事が許されないと言う事である。
 三佳貞と日美嘉は川に入り火照った体を冷やし、其のついでに魚を取った。米と味噌はまだ十分にあるので此れで昼ご飯を済ませる事が出来る。三佳貞達にとって此れは普段の食事と何ら変わる事の無い食事である。
 米、汁、おかずニ品内一品は野菜である…。此れが普通なのだ。此れは大神であろうと神であろうと同じである。他国からしてみれば惨めな食事かも知れない。貧しい国だと思われているかも知れない。だが、飢えに苦しんでいる者は誰もいない。大規模な飢饉が訪れても誰もへこたれない。何故なら国に蓄えがあるからである。だから、この食事を誰も惨めだとは思っていないのだ。
 二人は食事を済ませると木陰で暫しの睡眠を取った。食べたら寝る。此れは基本である。目が覚めたら二人は体を解した後舞を踊り技の鍛錬に取り組む。その後はノンビリとした時間を過ごして晩御飯を食べたら又寝るのである。そして日が昇ると同時に目を覚まし一日が始まる。
 日が沈むと一気に気温が下がるのだが、逆に日が昇ると気温が一気に上昇する。三佳貞は汗だくの中で目を覚ました。
「暑 ! 暑いじゃか。」
 と、三佳貞はテクテクと川に向かい紬を着たまま川に入る。紬に染み込んだ汗を洗い流す為である。川の中で黄昏ていると、物凄い勢いで日美嘉も川に入って来た。
「ぶぁぁぁ…。生き返るじゃかぁぁ。」
 と、日美嘉は眠い顔でボーっと空を見やる。
「朝じゃ…。又暑い朝じゃかよ。」
 と、日美嘉は顔をジャブジャブと洗い三佳貞を見やる。
「さぁ、今日も偵察じゃ。」
 日美嘉が言った。
「じゃよ…。偵察じゃ。」
「そう言えばあの娘…。どうなったんかのぅ ?」
「李禹じゃか…。監禁されておるのではないか。」
「じゃかぁ…。我等の事を話しておらねばええんじゃが…。」
 と、日美嘉は心配そうに言ったが、此の場所も、毎日偵察に来ている事も既にバレている。
「話しておっても何も変わらんじゃかよ。倭人は知っておるんじゃし。」
「じゃぁ言いよっても倭人は何故殺しに来んじゃかよ。」
「分かりよらん…。じゃが、コケにしておるんじゃ。」
「まぁ…。二人しかおらんしのぅ…。」
 と、日美嘉は川から上がると河原に寝そべった。濡れた紬を乾かす為である。
「じゃなぁ…。迂駕耶に戻りよるか…。」
 と、三佳貞も川から上がり河原に寝そべった。
「其れが正しい選択じゃかよ…。倭人も後二十日は高天原から動かんみたいじゃし。」
「十分引き留めたじゃか…。」
「じゃよ…。報告が我等が任務じゃ。戦は正子の娘に任せればええじゃかよ。」
「じゃな…。迂駕耶に戻りよるか。」
「賛成じゃ…。」
 と、意見が一致したので三佳貞と日美嘉は帰る準備をする事にした。
 其れから二刻後、帰り支度を済ませた二人はテクテクと山を歩き中集落に向かった。
 中集落から南端の港迄ノンビリ歩いても昼までには着く。其処から葦船に乗ってオノゴロ島で一休みして迂駕耶に向かう。其れでも日が沈む迄には十分である。だから、二人の荷物は昼と夜の米と味噌、其れと非常食と合口を二本袖に隠しただの軽い物である。牛がいれば牛に乗って移動するのだが、生憎生きた牛はいない。
 二人は暑さが徐々に増していく中をテクテク歩く。本来なら木々が日の熱を遮ってくれるのだが全て焼かれてしまっているので日の熱がモロに地面を焼く。
「三佳貞…。暑いじゃがよ…。」
 と、竹筒に入れた水をガブガブと飲む。
「じゃよ…。今日も暑いじゃか。」
 と、ブツブツ言い合い乍歩いているとバッタリ倭兵と出会した。倭兵の数は五人。だが、五人とも普段着姿で腰に剣をぶら下げているだけであった。
「あ…。」
 偵察に来た倭兵が思わず声を出した。
「あ…。」
 驚いた三佳貞と日美嘉も声を出した。
「な、なんじゃ…。とうとう来たか。」
 日美嘉が言った。
「なにがだ ?」
 倭兵が問う。
「殺しに来たのであろう ?」
 と、日美嘉は合口を抜き構える。
「真逆…。いつもの偵察だ。」
「偵察…。」
 三佳貞が言う。
「そうだ。お前達が良からぬ事をしていないか見に来ている。所で今日は荷物が多いみたいだが ? 今から遠足か ?」
「我等は帰りよる。」
「帰る ?」
「そうだ。我等は迂駕耶に帰る事にした。」
 日美嘉が言った。
「ほぉ…。なら、此の島は我等の物か。」
「炭となった島が欲しければ奪えば良い。」
 三佳貞が言った。
「そうか…。まぁ、気を付けて帰ると良い。」
「…。殺さぬのか ?」
 三佳貞が問う。
「殺すなとの命令だ。」
「蹂躙せぬのか ?」
 日美嘉が問う。
「其れは帥升が許さぬ。」
「三佳貞が不細工だからであろう ?」
「まぁ、ハッキリ言えば二人とも不細工だ。」
「すまぬ…。良く聞こえなんだ。」
 と言って、二人はテクテクと歩き出した。
「帰る前に一つ…。」
「なんだ ?」
 二人は後ろでに振り返る。
「今日の昼…。李禹が処刑される。」
「処刑 ?」
「そうだ。お前達と関わった。つまり裏切りだ。」
「そうか…。」
「残念だ。我等は既に役目は果たした。李禹にはバイバイキンと伝えて下され。」
 三佳貞が言う。
「其れで良いのか ?」
「良い…。不細工は死なずただ去るのみだ。」
 と、日美嘉は倭兵を睨め付け言った。
「分かった。伝えよう。」
「では、不細工後を濁さず…。潔く迂駕耶に帰りよる」
 と、二人はテクテクと歩いて行った。

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