ツッコミどころ満載の夫婦別姓ドキュメント

 ETV特集 選「夫婦別姓 “結婚”できないふたりの取材日記」を視聴。
 高橋敬明さん(以下、夫)と神野明里さん(以下、妻)の事実婚カップルの話。”選”だけあって夫婦別姓について初心者にも大変分かりやすく解説してある。しかも若い夫婦がカメラの前で長々と見詰め合ったりなんかしてとにかく仲睦まじく微笑ましく、一視聴者としては2人の末永い幸せを願うばかり。なのだが、登場人物の発言内容があまりにツッコミどころ満載だったので順番にツッコんでみた。
 因みに筆者は夫婦別姓にも同性婚にも賛成ですが、多夫多妻制にも賛成です。 結婚に関するよくある勘違い http://kanjo.g1.xrea.com/kekkon.htm#2 


夫の父「勝手に名字を変えるなら結婚式は出ないし親子の縁を切る」
 典型的な家父長主義。息子の幸福よりも己の幸福を優先している点で子離れできていない。子も子で父に祝って貰えないと結婚できないのは親離れできていない証拠。精神的に自立していない子供に結婚は時期尚早

夫の父「世の中嫌なことは沢山ある。それを乗り越えるから強くなる」
 と主張する本人が「息子が高橋以外の姓になること」を嫌がっており、まだそれを乗り越える強さがない、というブーメラン。この手のエセ正論に丸め込まれるのも批判的思考力・論理的思考力が乏しい証拠

夫「向こうがお嫁に来るって考え方も男尊女卑じゃないの」
 その表現自体は直ちに男尊女卑にはならない(文脈、使い方次第)。“婿に来る“がそれだけで女尊男卑になるなら筋は通るが、同じ穴の狢

 夫の父「彼女は高橋という姓にしたらそんなに嫌な気持ちになるのかなぁ」
  息子が神野という姓にしたらそんなに嫌な気持ちになるのかなぁ。これもブーメラン、人は鏡

 妻「旧姓の高橋に戻ると名前を呼ばれるたびに思い出したくない過去を思い出す」
  そのトラウマや執着を解消するのが先決。夫にすらそれを打ち明けないコミュニケーション不足が事の発端。高橋姓の男性と共に暮らす事に問題がなかったのであれば、その延長で克服は可能

妻「神野明里としてのアイデンティティを失いたくない」
  氏名は所詮、便宜上の単なる記号。その一部を変えた程度で人間のアイデンティティは失われない

夫婦別姓の女性「娘が、毎回友人に同じことを聞かれるのが疲れると言う」
  「法律婚ではなく事実婚だから夫婦別姓なの」と簡潔に答えれば済むこと。大した問題ではない

夫「別姓を選んだことで将来子供が嫌な思いをするのではと不安」
  その時に子供にどう指導するかを含めて何事も経験。夫婦別姓の男性が言うように、例え社会と軋轢があったとしてもそれ以上に大事なことを学べる

夫の母「先祖から続いてる名前なんだから高々ではない。先祖を大事にしなければ」
  番組冒頭でも紹介された通り、姓を名乗る制度が始まったのは高々100年ちょっと前。氏名を引き継ぐことだけが祖先への尊崇の証ではない。名字を高橋に変えたであろう貴方は旧姓の先祖を大事にしていないのか、という話になる。高橋姓は他にゴマンとあるので高々その中の一家系が絶えても他が継ぐ

夫の母「え~という(戸惑いの)気持ちが和らいできたのはやっぱり時間(のお陰)」
  つまり日頃から「息子が婿入りしたら」など様々な可能性を考えて来なかったということ。先見性や家族間のコミュニケーションが足りていない

妻「名字は?式は?子供は?と言われるのが面倒臭い」
  「変えない、そのうち、分からない」と簡潔に答えれば良い。大概一度説明すれば終わる。面倒臭いのは最初だけ

夫婦別姓希望者「姓を変えると積み上げて来たキャリアが途絶える」
  旧姓併記や通名使用など工夫次第で回避可能。過去の記録や記憶が抹消される訳ではない

同上「再婚によって子供の苗字が再び変わることを避けたい」
  と主張する本人が、再婚者に対する偏見を持っている可能性大。子供にどう指導するかを学ぶことから逃げているようでは親として未熟。子供を利用せず、まず自分自身が多様性を許容できる大人になるべき

同上「事実婚だと共同親権を持てない」
  事実婚でも持てるように民法を改正すれば良い。夫婦別姓の実現だけが手段ではない

同上「パートナーは相続人になれない」 
 遺言書を残すこと或いは相続法改正で対処可能。尚こうした問題を夫婦別姓の枠内だけで解決しようとするとLGBTカップルが置き去りにされる

同上「所得税の配偶者控除が受けられない」
  金が惜しいだけなら「配偶者控除は姓を変えることで発生する手間への対価」と割り切ることは可能。男女平等の観点から配偶者控除廃止の流れはあるのでそれに便乗しても良い

同上「病院で手術や延命手術の意思決定ができない。介護施設へ夫婦として入れない」
  各自治体のパートナーシップ制度等を活用したり、万一のための意思表示を書面で残したりなど、工夫次第で対応可能

自民党「家族の絆が失われる恐れがある」
  温室育ちで「真の家族崩壊の原因」に疎い自称保守層によくある平和ボケした論理飛躍。同姓であっても家族間の亀裂や破綻は発生する

夫の父「核家族化は大失敗。3世代とか4世代の方が正しい。社会が乱れた」
 根拠不明。客観的なデータよりも主観的な体感治安を優先している可能性大。「社会の乱れ」はそう感じる者自身の心の乱れの自己投影

妻「(稲田朋美が)心強い」
 彼女は、“ネトウヨのアイドル”と言われていたほど論理的思考力・メディアリテラシーが乏しく哲学も浅い人なので、あまり宛てにしない方が良い

亀井静香「一人の我儘に合わせていたら国家が困る。少数派のために国民がいる訳ではない」
  時代遅れな全体主義・国家主義。困るのはその国家が未成熟で機能不全を起こしている証拠。多数派だけのために国家がある訳ではない

同上「国家の保護を求めながら協力をしないというのは得手勝手」
  より快適で不便・不安の少ない生活を国民に提供するのは国家の義務。国民から税金を徴収しておきながらその義務を果たさないのは国家の得手勝手。ブーメラン

同上「(妻が同姓になろうとしない)貴方は心から愛されていない」
  「高橋姓よりも神野姓の自分を愛している」とは言えるが、その一基準だけでは夫への愛の深さは決まらない。寧ろ親が勝手に結婚相手を決め形式的に同姓にしていた時代の方が、夫婦間の愛は希薄でDVや夫婦間殺人も多発していた。愛の何たるかを理解していない者が愛を説いたところで説得力はない

夫「早く法律的に結婚したい」
  選択肢は、①制度を変えるか、②妻を説得して高橋姓に変えて貰うか、③親を説得or無視して自分が神野姓に変えるか、④そのまま事実婚で通すか、の4つ。最も困難と思われる①だけに固執する必然性はない。

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