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父はスタバのことをフタバといっていました 2024年5月5日(日)日記

姉が姪(姉の子ども)を連れて実家へ行くというので一緒についていくことにした。

玄関に入った瞬間、「おばあちゃん家の匂い」がした。
おばあちゃんの家なんて幼少期に数回しか行ったことがないから想像上の「おばあちゃん家の匂い」だ。

数年前までは帰省してもこういう香りはしなかった。
おばあちゃんの家は初めから「おばあちゃん家の匂い」なのではなく、
孫が生まれるまで人が住んだ結果そういう匂いが染み付くのだという、当たり前の事に気が付く。

リビングでお土産のお菓子を食べながら談笑する。
父が最近初めてスタバのコーヒーを飲んだそうだ。
どうやらギフト券をもらったとかで、話が一段落ついたと思ったらまた、
「あれは普通のカフェと全然違うよなぁ」
「おじさんとか学生とかがパソコン広げてさ、やってるんだよ、凄いよなぁ」
「ドーナツみたいなのもあったけどあれは美味しいのか?」
などと、数分おきに話し出すので笑ってしまった。


父がソファで昼寝を始めたのでひとりで二階へ上がり、誰もいないホコリだらけの子供部屋を眺める。
就学時に買ってもらった学習机の前に座ると、感傷的な気分になって写真を何枚も撮った。
あのとき部屋にいた兄弟はもう別の場所で暮らしているし、この部屋で飼っていた鳥ももういない。
甲高い声で階下からわたしの名前を呼ぶ母もいない。

しばらくしてからリビングへ戻ると、姉が古い電子ピアノで姪っ子の好きな曲を弾いていた。姪っ子は隣に座り小さな指ででたらめに鍵盤を押して真似をする。
上手だねぇと声をかけると、姪は弾きながら自分で「じょうず!」と言っていた。かわいすぎる。

実家に姪がいると家の雰囲気が明るくなる。一挙手一投足に皆が微笑む。
姉が母の遺影を「おばあちゃんだよ」と教えると、姪っ子は遺影を指さしながら舌っ足らずに「おばーちゃん」と言った。
母はたしかにこの家にいたのだ。あの騒がしい日々を過ごし、そしてそれが今につながっているのだと感じた。

帰り道、姉が「今度帰る時はスタバのドーナツをお土産にしよう」と言った。
わたしも賛同した。



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