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小さな島のチキンスープ

もう10年前以上のことになる。私史上最強に病んでいた時期がある。
「病んでいる」と一言で表すと軽々しく感じるが、心療内科に通院していて病名もいただいていたので本当に病んでいたのだ。
新社会人になり2年もたったころだろうか。遠距離恋愛の彼氏とはうまくいかず、仕事は忙しく暗くて重い案件が多かった。同僚もいない小さな会社だったので、仕事の愚痴を話せる相手もおらず。おまけに社長とのそりも合わなかったのだ。
近所に住む祖母も認知症を発症し症状も進行していき、一人暮らしは続けられないだろうという不安もあった。
20代ってもっと明るく楽しい日々が続くかと思っていた。
このくらいの話は悲しいかなよくある話だ。

そこから3年後。

私はインドネシアの小さな島で風邪をひいていた。
会社は辞め、遠距離恋愛の彼氏はそばにかわいい彼女ができたためふられ、認知症の祖母は短期間同居生活をへて施設へ。
風邪をひいて寝込む私のそばには夫なる人物がいた。

からだがだるくて熱っぽい。
慣れない長距離移動や異国での緊張感も続き疲れがでたみたいだ。
重い体を引きずり食堂に行き、なんとか食べれそうなチキンスープを頼んだ。

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想像していたチキンスープとは違い、色も濃くゆで卵も入っているし麺もちらほら入っていた。

期待せずに口に運んだが、強烈においしかった。
鳥の味がしっかりしているチキンスープなのだけれど、ほのかにカレーの風味がしてショウガががつんと聞いている。
しょっぱくもなく、辛くもなく、風邪ひきの体を包み込む優しさがありつつ、元気出せよと背中を押されるような元気がでる味。

夢中で食べて薬飲んで寝て、またこのスープを食べ薬飲んで寝て。

南の島で風邪をゆっくり治した。
それからなにかあると「あぁ。あの島で食べたチキンスープが食べたい」とつぶやくようになってした。
体調が悪いときに限らず少し落ち込んだときでさえ、求めるのはあの南の小さな島で食べたチキンスープ。

また食べたいんだけどあの島に行けるのはいつになるのかな。
そして、島をあとにしたときに人生最大の船酔いになり船恐怖症になったのはまた別の話。

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