【新説・魚食レポvol.3】アジ酢の握り〜薬味と情報をのせて〜
アジを知りたい知りたい知りた〜〜い!!
4月からアジをチラホラ食べている。
そう、青魚リレーのバトンパスが始まったからだ!!
出遅れるな!!
ついて来い!!
具体的にはニシンのシーズンが終わりを迎え(まだ噴火湾で良いのはとれてるみたい)、イワシやアジが旬の走りを見せ始めている。
(マサバは脂が落ちて、ゴマサバにバトンパス済み)
アジは調べるほど深く難しい。
一言ではとっても語れないお魚ちゃんだ。
年ごとにうねりを変える黒潮に翻弄されてるかと思えば、ちゃっかり沿岸や内湾に居着いたりもする。
市場じゃ加えて、漁場や漁法、時期、仕立てなどにより、品質は十魚十色。
「クロアジ」、「黄アジ」*1による食味の違いは最早あまりに有名だ。
*1 「クロアジ」「黄アジ」とは?
見た目の違いにより、水産関係者から区別されて呼ばれる。
クロアジ:主に沖で漁獲される日焼けしたような黒ずんだ色合いのマアジ。大型で脂が薄いことが多い。
黄アジ:沿岸や湾内でとれる「瀬付き」のマアジ。近い漁場でとれるが故に鮮度が良く脂乗りも良いことが多い。
餌の違いに起因した差と言われており、ヒレや側線の鱗の数は同じ。
まず1尾目!!
長崎松浦水揚げのデカアジ
4月20日に食べた。
魚体800g位
体長25cm越え
恐らく2歳以上の魚だ。
西沖か対馬沖にて大型旋網の集魚灯漁法*2で漁獲されたのだろう。
*2 1月からマアジを対象とした漁獲が増え始める。日本のアジはその8割が旋網(まきあみ)で漁獲されてるのだとか。
外観は黒っぽく、いわゆる「クロアジ」だ。
腹をさばくと立派な卵がボロンと出てきた。
おぉ...産卵期*3にごめんな…と少し申し訳ない気持ちになる。
*3 マアジの産卵期は1月に東シナ海で始まり、順次北東へとうつっていく。日本列島は北へ伸びているため全体としては11~8月と産卵期が長いが、九州西岸~対馬は4-5月といわれている。
それと中骨から腹側に出た骨(たぶん血管棘)が、かなり丈夫になっていてビックリ。
この骨があると、食べる身としては内臓のお掃除がしづらくなって地味に辛い。
一方アジ的にはグングン泳ぐために、内臓や卵をしっかり守る丈夫な骨が必要なんだろな〜。とシミジミとした気持ちになる。
身はエネルギーを卵に使い切ってたのか、あまり脂はのっていない。
期待せずに刺身で食べたが、思ったより旨味はあって美味しかった。
ありがとう、お母さんアジ...。
次に2尾目!!
静岡焼津水揚げの定置アジ
5月5日食べた。
魚体180g位の1歳魚。
こちらは「黄アジ」。
(魚の写真を撮り忘れてしまった)
焼津を含めた駿河湾のアジは甲殻類を積極的に食べてる群れがいたりして、非常に旨味があり美味しい印象がある。
(中にはなんとサクラエビを食べたものも!!)
↑ 熱く倉沢(静岡)のアジを語って下さっているBlog記事
由比のお寿司屋「銀太」さんで食べれるらしい…!
落ち着いたら是非行ってみたい
今回のは腹を捌いたら少し卵が入っており、内臓脂肪はちょっぴり。
ただ身にハリはあり鮮度感は良し!!
なので細切りにして薬味をぶっかけ!
仕上げに「カツオの糸削り」をパラパラと降りかけると、なんともカツオの漁業基地である焼津感が増し個人的には高まる一皿になった。
※先日「本当の初ガツオ」で書きましたが9ヶ月児にもフレークにしてあげたらバクバク食べてた。
そして最後3尾目!!
鳥取境港水揚げのアジ
さて今回の本題はこいつだ!!
GWを境に夏日がぐっと増え、海水温の高まりを気温にも感じ始めた頃合いにゲット。
魚体150g位の0-1歳魚。
巻網でとられたもの。
諸事情により、市場への入荷から1日氷塩水で保管していたものだ。
背は灰みがかかった青緑色をし、ヒレはほんのり黄色みを帯びている。
小型ながら体高があり、持つと少しぬめりを感じた。
「黄アジ」というべきか…ちょっぴり不思議な風合いのアジである。
ゼイゴをとろうと鱗に包丁をあてて引いていくと、
ずるずるっ……
あ〜〜〜〜〜っ!!!!
皮がはげて若干深く削れてしまった。
包丁をしっかり研いでおかなかった僕も悪いが、アジにも原因はある。
たっぷりある皮下脂肪少し溶け、皮を滑らせ剥がれやすくしていたのだ。
続いて腹をさばくとおっかなニッコリ!!
卵が無くて、内臓脂肪がバッチし!!
それもそのはず!!
鳥取、島根は「どんちっちアジ」を始めとして脂乗りに優れるアジが潜んでいることで有名なのだ。
その原因は餌としているプランクトン、すなわち「カラヌス」など油球を持ったコペポーダ(カイアシ類)ではないかと言われている*4
*4 どんちっちアジはこの「カラヌス」を食べているため、脂質が10-15%以上と、他のアジを圧倒する量の脂質があるといわれている。
こやつもきっとカラヌス食べたんだろな〜〜!!
食べる前からテンションがあがる。
恐らく0歳魚だから、春の水温上昇でめっちゃ増えたカラヌスを爆食いしてた可能性がマシマシだ。
ただ身はやや柔らかくなってしもてたので、そのままシンプルな刺身には微妙な身質。
(アジの刺身は適度な歯応えのある食感を楽しみたいですからね)
さて...
どう調理したらここから魚のポテンシャルを損ねずにイケるか...
よしっ!!お寿司だ!!
3枚卸後の半身両面に塩をパラっとふって15分。
その後、水洗いして水気をとったらお酢で5分。
いわゆる「アジ酢」にしたものを握った。
仕上げに小ネギと生姜を刻んで混ぜた薬味をトッピング!!
エンジョイ!!!!
いただきま〜〜〜す!!
パクリっ
うめぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
旬がお口にホールイン!!
ありがとう漁師さんとカラヌスぅっっ!!
思わず叫びたくなる味わいでした。
アジは資源に若干の心配がある*5ので、今後も大切に食べていきたいですね。
*5 日本でのマアジ漁獲量は1996年に約30万トンを記録したものの、その後はジワジワ減少。近年は10万トン前後。対馬暖流系群の資源はまだ大丈夫(中位)という評価があるが、肌感的には減少傾向(低位)な印象がある。
それと…
一緒に新潟佐渡産の荒海サーモン(養殖銀鮭)も食べた。
腹側をすこーしだけ砂糖と塩で水気を抜いてからの握り。
エンジョイ!!
パクリっ
うめぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
僕の好みにジャストな脂乗りでとっても美味!!
ありがとう養殖業者さん!!
養殖業者さんにもこの局面をなんとかふんばり乗り越えて欲しいので思わず叫んでしまいました。
流通のバトンパスは混乱が続いていますが、海は変わらず旬のバトンが渡されていく。
イワシの脂乗りが良くなったという報告も各所からあがってきているので、これからイワシも楽しんでいきたい。
皆さんもおうちでお時間ある今のうちに、少し手間を加えて大衆魚を愛でてみてはいかがでしょうか?
自宅でお寿司も案外簡単ですよ!!
(出来ない方は近所のお寿司屋さんへ注文ついでに相談だ!!)
エンジョイ!!!!(言いたいだけ)
<参考資料>
*1 若狭湾マアジの系群に関する研究(畔田,1962)
*2 西日本海域の大型旋網漁業における漁期・対象種別の漁場利用傾向(島根,2005)
*3 マアジとマイワシの繁殖生態(西田,2006)
*4 去年9月に僕がインスタへ投稿した「どんちっちアジの食レポ」
*5 令和元年度魚種別資源評価(67魚種), マアジの資源変動と加入過程の把握(三谷,2001)
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