マガジンのカバー画像

新説・魚食レポート

11
魚の新しい食べ方、食べてみて新しく気づいたことなどを、なるたけ親切にレポートします。
運営しているクリエイター

記事一覧

【新説・魚食レポvol.11】糠イワシのピチッとシート干し

脂が乗った岩手産マイワシを手にした時、僕の頭は糠でいっぱいになった。 好きな本に宮本輝さんの「にぎやかな天地」というものがある。 日本に眠る発酵食品を通し、人間を含む生物の生死、ゆっくりとした営みと醸成を描いた作品だ。 途中、本の装丁家である主人公が発酵食品の魅力に惚れ込み、糠を自宅で飼い始めるのだが、昔そこを読み猛烈に糠を飼いたくなったことを覚えている。 しかし当時の僕は出張の多い仕事で、場合により2ヶ月近く家を留守にするため糠飼いには踏ん切れなかったのだ。 時は

【新説・魚食レポvol.10】マグロのボジョレー・ヌーボー漬け

こんにちは! 魚屋のかにへーです。 今年は11月19日にボジョレー・ヌーボーが解禁されましたね。 日本ではなぜ例年盛り上がるのでしょうか。 ボジョレー・ヌーボーは、その年に収穫されたブドウで造った若い赤ワインで飲み口が比較的軽い。すなわち飲みやすいワインなのがその理由なのかもしれません。 「クセが無い」「食べやすい」 そういったものは、魚介類でも売り文句として使われることが多いです。 牡蠣でいうと「1年牡蠣」が本当にそうで、サッパリとした食べ口が魅力で、酢洗いや、片栗粉など

【新説・魚食レポvol.9】ビワマス入り赤ちゃん寿司

皆さん、お久しぶりです。 かにへーです。 光陰矢の如し。 あっちゅうまに8月目前。 私事で恐縮ながら、僕の子供もあっちゅうまに1歳となりまして。 今回は、そのときのお話です。 妻は家内イベント好きなので誕生日の2週間以上前から色々考えてまして。 お~~お~~頑張ってるな~~! と横目に思ってたんですが、ふと来週に迫ったある日、 「あなたは、何やるの?」 ほう…… そう来たか…。 魚と触れ合い、美味しい魚情報を嗅ぎまわってばかりの僕。 1歳児を何で祝うか妻任せ

【新説・魚食レポvol.8】酢締めコハダの冷やし中華

蒸し暑い日は魚を食べたい。かつ同時に麺をズズッとすすりたい。 そして目の前には売れ残りのコハダ。 決まりましたね。 料理していきましょう。 【素材データ】 魚種:コノシロ(コハダ) サイズ:約70g(体長10cm位) 産地:千葉県船橋港 漁法:巻き網 (某有名漁師Oさんがとったものです!) 東京湾でとれた、いわゆる「江戸前」のコノシロ。(もっと大きくなると関東ではナカズミ、コノシロと呼ばれます。) おやおや... 目が少し充血して頬がほんのりピンクになってます。 実はこ

【新説・魚食レポvol.7】養殖アユの炊き込みご飯/天然稚アユの天ぷら

みなさん!6月1日はアユの日でした!この日をアユ釣りの解禁としている地域が多いためです。 すでに市場には稚アユ(6-10cm位の小さいアユ)や、養殖のアユは来てましたが、この日を境にいよいよ夏だ!アユだ!と本格的なシーズンインとなります。 ということで、これからどんどんアユを食べていきましょうね。 食レポ開始です。 まずはいまや定番の養殖アユ。 【素材データ】 魚種  :アユ(養殖) 養殖産地:和歌山 サイズ :100g位(1kg10-11尾の規格) 今回は樋口さんの以下

【新説・魚食レポvol.6】大好きなイサキのアクアパッツァ

良い時代になった。 多くの料理人が美味しいレシピを惜しげもなく動画で公開してくれる時代。 今回は「アクアパッツァ」とイサキの話…。 【素材データ】 魚種:イサキ 産地:長崎産 規格:400g位 漁法:巻網 備考:市場に来てから1日冷蔵保管していたもの。 触ると1日だけの保管にしては、身が柔らかくなっている。 網で巻かれたあと圧力がかかったのだろうか。 それとも長崎はもう結構暑いだろうから、冷やされずにいた時間があったのだろか。 品質レベルとしては並下。 刺身はギリ出来るけ

【新説・魚食レポvol.5】骨切りクロシビカマスの蒲焼き風握り

とある日、出社したら知る人ぞ知る旨い魚がいた。 クロシビカマスだ。 「カマス」と名前についているものの、 クロタチカマス科の魚。 カマス科では無く分類上は名前ほどに近しい魚ではない。 石油を被ってしまったかのような、ヌメっと黒く虹色に光る皮を持つカッコ良い魚だ。 この見た目から「スミヤキ」(炭で焼いたような魚という意)とも呼ばれる。 口を開くと歯がかなり鋭い。 これで漁師の縄を噛みちぎることもあるようで、「ナワキリ」と呼ぶ地域もあるのだとか。 「煮付けにしたらうまい

【新説・魚食レポvol.4】二度死んだキハダマグロのピザトースト

先日、キハダマグロを買った。 魚体13kg位のものを先輩がロインに加工していたのを見たら、赤身がキハダにしてはよく発色しており、たまらなく美味しそうだったからだ。 外房近海でカツオ巻網船が漁獲したもので鮮度が見るからに良かった。 同僚と興奮しながら分け合ったことを今でも覚えている。 「かにへーさん、背上*1 のとこ良いですよ~。」 *1 【背上(せかみ)】 マグロを背骨を中心に縦4等分(ロイン)にしたときの、「背ビレ側の頭寄りの部分」を指す。20kg以上の大きいマグロはロ

【新説・魚食レポvol.3】アジ酢の握り〜薬味と情報をのせて〜

アジを知りたい知りたい知りた〜〜い!!4月からアジをチラホラ食べている。 そう、青魚リレーのバトンパスが始まったからだ!! 出遅れるな!! ついて来い!! 具体的にはニシンのシーズンが終わりを迎え(まだ噴火湾で良いのはとれてるみたい)、イワシやアジが旬の走りを見せ始めている。 (マサバは脂が落ちて、ゴマサバにバトンパス済み) アジは調べるほど深く難しい。 一言ではとっても語れないお魚ちゃんだ。 年ごとにうねりを変える黒潮に翻弄されてるかと思えば、ちゃっかり沿岸や内湾に居着

【新説・魚食レポvol.2】春キャベツのシラペペfeat.椎茸ソース

しらす。食材での「しらす」は主にカタクチイワシの仔魚を指す。 鱗、骨格が未発達がゆえに丸のまま食べれて、老若男女に愛されている。 3月中旬を過ぎると愛知や静岡でしらす漁が解禁され、東京の市場へ 「しらす加工品」の上場が増えてくる。 【しらす分類表】 生しらす     :そのまま。水分80-100%位。 釜揚げしらす   :釜茹でのみ。水分70-80%位。 しらす干し    :釜茹で+乾燥。水分60-70%位。 ちりめん(カチリ):釜茹で+乾燥。水分35-50%位。 畳いわ

【新説・魚食レポvol.1】メヒカリの炙り姿鮨はマシュマロだった

福島の相馬からいつもと雰囲気が違うメヒカリ(マルアオメエソ)がやってきた。 なんと「刺身」で食べれるメヒカリだ。 メヒカリ自体は他に、茨城、千葉、愛知、宮崎などでもとれるが、 基本「底引き網」でゴソっととられるため、ここまでの状態で東京に来るのは珍しい。 仕入れたHさんに聞いてみると、漁法は同じ。 ただ産地の人が、良いものだけを寄って出荷してくれてるのだとか。 福島は依然試験操業中*1のため、航海時間がもしかしたら他産地より短い可能性がある。 そこにも鮮度の秘密があるのかも