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のこるもの。





置いていくもの。残るもの。

かつて働いていた街を眺めながら電車は進む。

久しぶりに見る街並みは、心をぎゅっと掴む。

色々な想い出が巡る。
高架線の下を自転車で走り抜けたあのとき。

仕事で訪問したマンションが見える。
当時一年目だった私では、ケースとの関係をうまく作れなかった。ずっと後悔している。今の私が初めて出会っていたとしたら、うまく話せただろうか。そんな たられば 、わからないけれど。
この先もずっと忘れないケースだ。

街並みは通り過ぎて、踏切を超える。


遮断機の音。

大好きでたまらなかったあの人と、ほろ酔いで笑いながら踏切を駆け抜けた、もうきっと行くことのない街を思い出す。

顔、真っ赤だったと思う。お酒のせいだけじゃなかった。

もうね、大好きな人と笑えるってね、
すっごく楽しかった。

仲良かったけど、恋人にはなれなかった。


思えば、そういう恋ばかり。
その前も、その前の前も、
好きだった人が、誰かのものになるとき。
その前には私だって会えてたのに。

うまく素直になれなくて、手放してばかりだ。



うまくできたことや、
叶ったもの、手に入れたもの。
それよりも、
うまくいかなかったこと、
叶えられなかったもの、手に入れられなかったもの。
置いてきたものの方が心に残っている。


置いてきたものは、拾いようもないけれど。

きっと忘れなくてもいいことだから。

かつてそこに私がいたことは確かなことだから。
心のなかで少しずつ、少しずつだけど、きれいに昇華できたらいいなと思う。

そう思えるようになった。




そんなとき、タイミングを見計らうように、バンプさんの「友達の唄」が、シャッフルで流れてくる。

「覚えていられれば 大丈夫なのかな」


私の携帯のシャッフル機能は天才なのかな。

全部をうまくはいえない今の気持ちをばっちり受け止めてくれるうたがある。

そっと後押ししてくれるような。

それでいいよって。

偶然には違いないけれど、
神様はこうやって小さなご褒美をくれるから。

大事なものだけ抱きしめながら、
時々、どこかに忘れ物もしながら、
生きていけばいいかなって。


#秋 #日記 #エッセイ #追憶 #のようなもの

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