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オンラインを捨てよ、町に出よう / 周回遅れのすすめ♪

〈蟄虫坏戸 / むしかくれて とをふさぐ〉
七十二候より

暦の上では、自然界 ー虫や花や草木や空や海や川や山ー は冬ごもりの準備に入る頃。戸をふさいで土に隠れた虫たちは、来春、〈啓蟄 / けいちつ)〉の頃までおやすみなさいなんだって。

オンラインを捨てよ

人間はというと、食欲だ、スポーツだ、なんだかんだと活動的な初秋。町を歩いていると、なんとなく落ち葉のような食欲をそそるようなオレンジ色ののぼりやパッケージがやたらと目に入ってくる。秋ですえねぇ。

ぼくはというと、秋冬好きも相まって、どちらかというと人間界より自然界寄り。ひんやりした空気の中でなんとなくゆっくり過ごしたいし、時計なんかは見たくないし、電話番号持ってないし、お腹が空けば食べるし、ひとりで考えてひとりで決めて、やる時はやるけどやらない時はやんないし、何かはしているけど、それをいちいち報告しないし。

「書を捨てよ、町に出よう」よろしく、オンラインを捨て、町に出て迷子になって歩き回って人を訪ねている今日この頃。必要な時期に必要なだけ必要なことを表現するようになって(もっというと、社会から「いち抜けた!」と決めた時)から、(SNSとかの)報告義務からの解放や前言撤回するけど許してね、という歩き方をするようになって捨てたり抜けたりして手にしたものはというと……。

目の端で捉える

必要なことはだいたい目に見えない。自然の中に足を踏み入れると、聞こえてくるものやその場の匂いや頭の中、それから足の裏の感覚が敏感になる。

「会いたいなぁ」って思ったり、いろんな本を読みたいって思ったり、手紙を書こうって筆を執ったり、なんか作りたくなったり、これは秘密にしておこうって思ったり……。そういう目に見えないものばかり追っていたら、自分にとって必要なことをあんまり口にしなくなりました。その時はその時。大切なものは、そう簡単に整理することなんか出来ない。じっとして目を閉じて警戒する獣のように、なりをひそめて動かない。あんまり動かないものだから、そのうちに、だんだん周回遅れで表現するのが当たり前になる。

YouTubeでもLINEでもzoomでもなく、読書や手紙やわざわざ訪ねてまでも会いたい人を訪ねてみたりと、スピード軽視の毎日が当たり前になってくる。

今、久留米市図書館でいちばん熱いラインナップ(当社比)。イチオシは『ニホンオオカミの最後』♪

周回遅れくらいがちょうどいい

2週、3週と、周回遅れくらいがちょうどいい。
歩幅は狭くて歩く速度も遅くても、まっすぐ歩かずよりみちばかりで目的地に到着する気配がなくても、前を走る人たちや追い抜いていく人たちの背中をぼんやり眺めていると、物事を目の端で捉えるようになる。スローモーションの世界に生きられるようになる。一見するとダメな感じの周回遅れは、待つことや聴くことに長けているということが明らかになってきた(当社比)。

今関心のある本のなぞらえるわけではないけれど、ニホンオオカミや子どもの権利やコケの世界のことなんて、ぼくらの生活には大した意味を持たらさない。それどころか、ないもの(なかったこと)として忘れられている。

だから今は、今だからこそ、流れては消えていく水のように、吹いては爽快な風のようにぼくは生きたい。なんのこっちゃ!!

季節が変わりました。
ついでに気分も変えちゃえばいい。

✳︎写真:福岡県久留米市の森に迷い込むと辿り着くという野外円形劇場。こんなところに?!という驚きの場所は、旧陸軍施設だったそう。