3年間付き合ったけど彼氏がフリーターになったので別れた話。 (5) 付き合った話その2。

スキ、たくさんいただけて嬉しいです。ありがとうございます。文中で元彼のことを、彼、や先輩、と色々に呼んでいますが全て同一人物です。その時の気持ちによって変えてます、わかりづらくてすみません。



さて、なんやかんやでわたしの家に初めて彼が来ることになりました。ソワソワしながら部屋に干してある下着を片付けた私は、トイレを入念に磨き、掃除機も隅々までかけました。きっとこの先、これほど胸がつっかえる思いをすることはないんじゃないかと思いながら、彼のインターホンの音を待ちました。

「ピンポーン」

彼はこの時、事前にお菓子などを買ってきてくれていたと思います。わたしはお茶とパソコンを用意して。インターホンが鳴ったらすぐさまドアを開けて、彼を迎えました。

「ようこそ、こんにちは〜」

「こんちは、お邪魔します、色々買ってきたよ」

「あ、ありがとうございます!」


彼がわたしの家にいることが信じられなくて、家の中に入ってゆく彼の後ろ姿をみながらわたしはずっとドキドキしていました。男の人を家に上げるのは彼が初めてではなかったけど、やはり彼だけは、他の男の人にはなかった特別感がありました。

わたしはこの時、不思議と彼に対して襲われるかもしれないとかの恐怖は微塵も感じていませんでした。その理由は彼の言動が大きかったと思います。まず夏合宿の時に夜道を2人で歩いても何もされなかったですし(笑)、それに彼は、いい意味で「男性性」を感じさせない中性的な雰囲気を纏っていました。それ故に、彼は本当にDVDが見たくてここに来たんだな、とわたしは信じて疑いませんでした。



彼が買ってきたDVDとブルーレイプレイヤーをわたしのパソコンに接続して、2人でアニメを見ます。パソコンの前で2人で並んで座りました。距離感は多分、人1人分くらいあった気がします。わたしはどういう座り方をしたらいいのかわからなくて、体育座りしてました。彼はあぐらをかいていたかな。

そこから1時間くらい、お菓子を食べながらぶっ通しで見続けました。2人でDVDを見るのはいいですね。彼がどんなところを面白いと感じるのか、その人の性格や好きなこと、ツボやノリが瞬時にわかってすごく便利です。シュールなギャグアニメだったので、ふふっとおもわず笑ってしまう彼の顔が印象的でした。彼が笑うたびに、ああ、ここで笑うのかとわたしはちらちら彼の顔を見ていたと思います。わたしと同じタイミングだったかな、と確認して。そして時々、暗くなった液晶画面に隣同士の私達が映って、それが本当に、急に現実に引き戻されて、恥ずかしかったです。



なんとDVDは3時間ほどありました。長すぎますね(笑)さすがに飽きて眠くなってきた私は、緊張の糸も解け、その場に倒れこむようにして仰向けになりました。気づくと窓の外は真っ暗。先輩が帰らなければいけない時間が迫っているかもしれません。嫌だな〜と思いながらうとうとしていました。

「眠い?」

「はい、さすがに…」

「結構長いもんねこれ、俺も横になろうかな」

気づけば私たちの距離は、人1人分から拳3個分まで縮まっていました。少しびっくりしましたが、眠気と、なんとも言えない居心地の良さで、わたしもそのままに、彼の方に顔を向けました。

横になる、と言って眼鏡を外した彼の顔はなんとわたしのどタイプのイケメンでした。(彼はいつも眼鏡をかけていました)  なんとなく、眼鏡を外したらきっとらイケメンだろうな〜と思ってたんですが、想像以上にタイプで。わたし自身びっくりしていました(笑)彼はきっと、見たこともないくらい優しい目をしてわたしを見つめていたと思います。きっと彼も眠かったんでしょう。そのウトウトと彼のタレ目が相まって、彼はものすごく、わたしを慈しんでいるようでした。きっと彼も、わたしのことを、わたしが彼を思うのと同じように思ってくれている、そう思いました。彼の瞳は澄んでいて、彼の眼に映る私は、ドキドキしながらも彼の目から離れられないようでした。

ここまで他人から柔らかく見つめられたことがあったでしょうか。家族以外の人にこんな目を向けられたのは初めてで、わたしはずっと体が動きませんでした。うとうとしながら、ゆっくりまばたきしながら、彼の視線に応えていました。本当に時間が止まっているようで、世界で彼と2人きりのようで、ラブソングでよくあるこの表現って本当だったのかって、ぼーっと思っていました。

彼の手が伸びて、わたしの頭で止まりました。そのままゆっくりと左右に動き、わたしはさらに眠くなりました。

「かわいいね」

頭の片隅で、彼がそう言ったような気がしました。え…?と思ったその時、


彼の唇が私の唇にあたりました。 






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