見出し画像

パソコンの画面上だけで全てが進行する映画『search』感想

以前noteで紹介した、「RUN」がめっちゃ面白かったので、同じ制作チームの前作:「search」も見た。かなり前に話題になってたよね。

めっちゃよかった!!!みんなにおすすめしたい。


【あらすじ】

16歳の女子高校生:マーゴットが、ある日失踪してしまう。手がかりを掴むため、マーゴットの父:デビットは、娘のSNSアカウントにログインする。

そこには、父親の知らない娘の姿があった。

娘のアカウントから得られる情報を元に、デビットは調査を進めていく。果たしてマーゴット失踪の真実に辿り着くことはできるのか。


【こんな人におすすめ】

•今までにない画面構成の映画が見たい
•親子の愛情を感じられる映画が好き
•SNSアカウントとリアルの自分が結構違う


【ネタバレなし感想】

この映画の面白い点は、デビットのパソコンの画面だけで物語が進行していくというところ。

スクリーンに映るのは、すべてデビットのパソコンを通じた映像だ。事前にその情報だけは知ってて、「いったいそれでどうやって進行するんだ?」と思っていたが、心配する必要はなかった。

娘のSNSアカウントをはじめ、例えば、テレビ通話であったり、監視カメラの映像だったり、ニュース映像だったり……全てパソコンの画面内でストーリーが進行・完結していく。

鮮やかというほかない!!!

こういう方法で映画作ろうって最初に思った人、すごすぎ。

視聴してる側も、デビットと同様に、パソコン画面からの情報しか得られないため、デビットと一緒に調査をしているかのような没入感もある。
今までにない新感覚の映画だった。


【ネタバレあり感想】

わりとずっと、「もうこれ娘死んでるだろうな…」という絶望感がまとわりついてて、エンディングに希望を持てなかった。

しかし、そんな絶望的な状態から、うまく理由つけして娘生存エンドにもってきててよかったな〜。


SNSでの別の顔

SNSに、親が知らない娘の姿がある、っていうのもすごく現代的。

現代人はSNSのアカウント持ってる人がほとんどだと思うけど、大抵の人がリアルの姿とSNSでの自分の姿は違うんじゃないかな。

匿名アカウントで、ずっとクソリプ送ってる人とか、病みアカウント持ってる人とか。
リア垢でも、自分の日常のキラキラした部分を切り取って、「素敵な自分」をブランディングしていたり。

そういう「SNSでのもうひとりの自分」は、リアルでの自分しか知らない人(特に親)からしたらかなりびっくりするであろうことは必然……。

マーゴットも、リアルではおとなしくて真面目な、めだたない子という印象でしたが、配信してみたりSNSで出会った人とオフで会ってみたりと、そこには軽率ともとらえられる積極性があった。

リアルのマーゴットとは真逆の印象。
どっちが本当のマーゴットなのかということではなく、どっちも本当のマーゴットなんだろうね。
よく「SNSでの裏の顔」とか言われるけど、裏とか表とかよりも、もっと人は多面的なんだと思う。どこでどの面を強く出すかの違いであって。

たぶん私のSNSアカウントも、リアルの友達に見られたら「え?下ネタばっか言ってる…」ってドン引かれるだろうな……。


対象的な親子の姿

犯人は誰かという問題について、「こいつが怪しいぞ!」→「違うかも」→「次はこいつが怪しいぞ!」の繰り返しで、もはや全員怪しく見えてくる。
それが疑心暗鬼に陥っている父:デビッドの感情とリンクしていく感覚がして、楽しい。一緒に調査してるみたいな。

怪しそうなやつ片っ端からあたってみて、1番怪しくなさそうなやつが真(?)犯人だったというのも、ある意味テッパンだが、今までの点が一気に繋がって心地よい。

ところで、真犯人の動機が「罪を犯した息子を守るため」と言うところ、デビットと非常に対象的だと感じた。

父と娘の親子と、母と息子の親子。
そういう単純に性別が対象的だという意味もあるが、作中での姿勢も対象的。

デビットは常に「娘に関わる真実を明らかにしよう」としている。

対して真犯人は、自らの立場を濫用し、息子の罪を隠蔽することを選んだ。「息子に関わる真実を隠そう」とした。

これってどちらも本人的には愛なのかもしれないけど、どちらの愛が社会通念上正しいかは明らか。後者は愛というより保身とか、盲従とかに近いような気がするし。

デビットはきっと、マーゴットが罪を犯した時には、それを白日の元に晒し、共に罪を償おうとしてくれる気がする。
あまりマーゴットと心を通わせてこれなかった自分に責任の一端を感じたりするのかもしれない。想像にすぎないけど。

どちらに正義があるかは明白だ。

こっからは余談。
やっぱ親って子供が悪さした時にも庇いがちになるけど、被害者側からすると大変迷惑な話だと思う。
特に最近の親は「子供を叱る」ということが出来なくなっている、という話もある。放任主義というか過保護というか。

よく裁判やニュースで目にするのは、「この子は本当に優しい子なんです」と、罪を犯した子供(特に息子)をかばう親(特に母親)の姿だ。
本当に優しかったら罪を犯さないし、どんな凶悪犯罪者も特定の人物には優しかったりするでしょうに……。

ネットでも、子供に服を汚されたり、お店の商品を壊されても謝らない親の話をよく見かける。実体験としても、子供に迷惑をかけられた時、親に謝られた経験は少ない。
奇声を上げることを正当化している親もたくさんいるしね。

そうやって親に庇い続けられた結果、大人になって大きな悪事をすることに繋がるんだろうなと思う。そんな風に育てられたら、「自分は何をやってもいいんだ」って思っちゃうよね。

子供が悪いことした時、「うちの馬鹿が本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げれる親は、現代では絶滅危惧種だったりするのかも。

今後も「叱れない親」の増加で、日本の治安がどんどん悪くなっていったりするのかもしれないね。親に地位があれば、子供の悪事はなんだって隠せるっていう世の中に近づいていくかも。そういうところにもリアルさを感じる作品だった。


【おわり】

「search」は、今までにない新感覚を得られる映画として大変おすすめだ。
ストーリーや構成も面白いので、ぜひ見てほしい。

続編があるらしいので、そっちも見てみようかな。

ここまで読んでくれてありがとう!

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,197件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?